4th phase-2
「さて、それじゃ報告するよ~」
仮眠をとって元気になった瀬見さんが、パソコンを操作しながら報告を始めた。
「まずは、サクちゃんと戦ったサイボーグ2人から。名前はジョーンとグロリア。二人組の殺し屋っぽいね。もともと中東出身の傭兵で、それが中国のとある企業が雇った後にサイボーグになったみたいだね」
「……とある企業?」
「そう。名前は『青海机械公司』。上海を中心に展開するロボット産業の会社みたい。結構きな臭い会社みたいだね。人民解放軍の退役将校が取締役についてて、政界とのつながりも強いみたいだね。たぶん、中国の軍需産業を活性化させたいがためのプロトタイプとして、彼らが使われてるみたいだね」
私の質問に瀬見さんが答える。
サイボーグの兵士。
世界各国で競争が盛んであるというのは知っている。
その一端が、あの連中なのか。
「……」
自分の手を見る。
当たり前だが、自分の手だ。
しかし、
「……っ!?」
一瞬、見えた。
機械骨格の、自分の手。
久しく見ていなかったこの手を、再び幻視した。
「……サクちゃん、大丈夫?」
瀬見さんが声をかけてくれる。
「……大丈夫です。続けてください」
「無理しちゃダメよ、サクちゃん? 後で連絡しても大丈夫だからね」
紫苑さんも優しく言ってくれる。
でも、知っておかなきゃいけない。
「んじゃ、続けるね。あとは、風間ちゃんが戦ってたあの中国人について」
きた。
ここからだ、集中しよう。
「名前は
「……」
やっぱり、すごい経歴の奴だった。
こいつが、父の手がかり。
必ず、こいつにまた会う。
「わかったのはここまでだね。こっから、あたしはロボット工場の場所探すわ」
「え、まだ調べるんですか?」
「もち。それが所長からの依頼だしね~」
そう言って、いまだ寝ぼけ眼の瀬見さんは事務所の奥の部屋に戻っていった。
「……」
今回、ずっと黙っていた所長を見る。
『珍しく怒ってたからねぇ、カルタちゃん』
紫苑さんの言葉が脳裏をよぎる。
仮面で隠れた素顔は、どれほど怒っているのだろうか。
そもそも、この男に怒りという感情があったことが驚くべきことだったのだが。
「……!」
私の視線に所長が気づいたらしい。
私を一瞥すると、一言言った。
「……見ちゃダメ♡」
瞬間、私の拳は所長の顔面に刺さっていた。
きりもみしながら飛んでいった所長は、そのまま動かなくなった。
思わずため息が出る。
ダメだ、さっきのことは忘れよう。
何だか、いろいろと損した気分だった。
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