第135話【一方で榊は......】


 「おい、コラッ、今日こそ10万つくって来たんだろうな!榊!」

 「.......。」


 「お前、本当に俺らのこと舐めてやがんな!」

 「グハッ.......」


 無理に決まってんだろ。

 一週間で10万円なんて金.......。

 どこで間違えたんだ、俺は......。

 どこで......


 「親の金でも何でもいいから持ってこいや。俺らのチームに入れてやったんだからそんぐらい当たりまえだろうが。ああ?」

 「む、無理で....グハッ」

 「聞こえねぇ!もう一変言ってみろや。おい!」

 「.......。」


 頼本にやられて惨めな思いをして、そしてこいつ等にすがってからの俺の毎日はもう.....


 「おい!何とか言えや!榊ぃ!」

 

 今、俺の目の前にいるこいつ等はここらでは割と有名な知る人ぞ知る不良の集団

 学校で問題を起こして退学になった奴等の集まりみたいな集団だ。

 いや、もはや不良というよりは失うものがない分、手の付けられない何をするのかわからないヤバイ奴等の集団か。

 

 本来であれば関わりたくもない奴らだが、頼本に無様にやられた後の俺は気が完全におかしくなってしまっていた.......。


 当事者である頼本だけでなく、あろうことかあの田中にまで舐められて.....。

 今まで聞こえてきた黄色い声援もかなり減って

 あんなに楽しかった学校での生活が息苦しくなって

 本当におかしくなってしまっていた。


 「ほんと、お前みたいな雑魚とこっちは仲良くしてやってんだからよ。その頼本って奴やってやっから早く10万持ってこいって言ってんだよ。おい!」

 「い、いやもういいです.....。だから10万は」


 「あぁ?いいです? お前、マジで俺んこと舐めてんの?じゃあキャンセル料30万。月末までは待ってやるから絶対に用意しろ。じゃないとマジでお前終わっちゃううよ?」

 「.......。」


 こいつらに関わるべきでは本当になかったんだ。

 俺みたいな中途半端な奴が関わっては絶対にいけなかったんだ......。

 

 「喧嘩は弱いし、パシリすらまともにできねぇ、ちょっとは面がいいかと思って女を用意させようと思っても一人も用意できねぇ。ほんとマジで終わってんよな。こいつ、なぁお前らもそう思うよなぁ、ハッハッハ」


 そして俺にはさっきからずっと、こいつ等の汚い笑い声や暴力が矢継ぎ早にとんでくる.......。  

 

 「ちなみに昨日も言ってた脱退の件だけど、初めの約束どおりその場合は脱退料100万だからよ。現金一括ね。現金一括。ハッハッハ」


 本当に俺は惨めだな.....。

 頼本を潰すために悪い奴等にお願いするって、これもう漫画とかで出てくる本当の雑魚のする行動じゃねぇか......。

 だせぇ、ださすぎるな。俺。


 それに俺、本当に調子に乗ってたな。

 実力もないのに本当にクソほど調子に乗ってたな。


 悪口とかってこんなに心に負担がかかってくるんだな......。

 今のここでもそうだけど、学校でもあれ以降俺のことでヒソヒソと周りから話のネタにされることが多くなった.....。

 相手は聞こえてないと思っていても悪口や陰口って不思議と本人には聞こえてしまうんだよな.......。


 「.......。」


 俺って本当にださいよな。

 今は多分、全部今まで調子に乗っていたツケが全部自分に返ってきているんだろうな.....。


 本当に調子に乗っていたもんな。

 人の気持ちもわからずに.....。

 俺って昔から痛い目に実際に合わないとわからないバカなんだよな.....。

 俺って何でもそれなりにできるけど、全て何もかも中途半端なんだよな........

 何もかも。


 「おい、テメェ、友達でも何でもいいから連れてこいや。そいつらと一緒に払えば負担もすくねぇだろ。なぁ誰でもいいからよぉ」


 友達か......。 

 高砂や? 守谷?

 

 ふっ、あいつらまで巻き込んだら俺は人として本当に終わる。


 「無理です.....グッア」


 「おい、お前まじで死にたいの?俺らマジで容赦ないよ。知ってると思うけど」


 頼本に頭を下げて助けを求める?

 いや、おそらく頼本でもこいつ等には勝てない。

 こいつ等は次元が違う。本物のチンピラ。

 もはや犯罪者と言っても過言ではない。

 

 駄目だ。


 「確か今度、お前の学校って文化祭あるよな。もし月末までに払えなかったら俺ら、マジでもう待たないから。これどういう意味かわかるよな。」


 「が、学校は関係ありませ....グファ」

 「あぁ?じゃあ絶対に用意しろ。30万。絶対だぞ。」


 「.......。」


 くっ......どうする。俺。

 用意しないなら本当にこいつ等なら言葉のとおりに.......


 「.......。」


 でも、30万なんて金どう考えても今の俺には......。

 それにこいつ等に勝てる奴なんて俺の周りには誰一人としていない.....。


 クソッ、何で、何で俺はこんなにバカなんだ.....。

 

 本当にどうしたらいい.......


 くっ.......俺はもうずいぶんと昔から間違っていたんだな。


 昔から......。


 でも、本当にどうしたら......


 


 


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