第107話【壁ドン】


 今日の学校は本当に疲れた。


 昨日のことで朝から隣の山本が色々と問い詰めるように質問をしてきたり、渋谷さんがまた騒がしく教室に乗り込んできたり。あと確か、アリスはすごく褒めてくれたんだけど、褒めてくれたんだけど何か........。


 まぁとにかく疲れた。

 く.......全部あの社長のおっさんの

 

 「もっと......強く」

 「こ、こうか?」

 「うん。顔ももっと近づけて...... 」


 「......。」

 

 そ、そしてなんだこの状況......。


 俗にいう壁ドン.......。


 俺は一体何をしている。本当に何を。


 「ほら、もっと近づけて」

 「も、もっと?」

 「そう。そのまま目を離さないで。」

 

 「.........。」

 まじで何をしている俺。


 「おい!頼本くん。ちゃんと撮ってるか? 後で見るものだからしっかりね!」

 「お、おう。」


 本当にこれは一体何なんだ。


 「あと、間宮くん。君はさっきから何を躊躇している。君は壁ドンを舐めているのか? ああ?」


 「........。」


 何だこれ.........。


 そう。俺は今、クラスメイトの田中くんに壁ドンをしている。田中君に.......。

 放課後の誰もいない教室で........。


 「はい頼本くん、今のシーン間宮くんに見せてあげて!」


 何故か同じくクラスメイトの赤髪、頼本も巻き込んで......。


 「ほらここ、もっと顔を近づけなきゃ。あとドンが弱いよ。ドンが!もっと強くいかなきゃ。はぁ.......。」


 そして何で俺はそんな露骨なため息をつかれなければならない。何で.....。


 「おい、田中。さっきからこれは一体何をしているんだよ.......。」

 「ん? 頼本くん、君にはまだ関係ない。ただ、いずれ教えてあげるよ。その時の君は口から心臓が飛び出すぐらいに驚くだろうね。」


 「.........。」

 おい、勝手なことを言うな。あと本当に奴を巻き込んでやるな。


 困りに困り切っているじゃないか。頼本

 あとお前はお前で何で田中君の言うことをそう素直に聞くんだ。

 キャラじゃないだろ......。


 そして俺のこともいい加減開放してくれ......。


 「ほら、次いくよ。次!ぼっーとしてたら駄目だ。時間ないよ。時間!」

 

 今日の田中くんは何故かすごく張り切っている。

 見てのとおりすごく悪い意味で......。


 何か俺を鍛えるみたいだ。昨日SNSに出回っていた俺の画像を見て......。

 気持ちは嬉しいが、本当に気持ちだけでいい.......。


 それに山本達にも言ってはいることだが、俺はまだ出るとは一言も言っていない。

 普通は出ない。

 出ないけどミキの言う通り、確かにこの流れでは......。

 本当にやばいかもしれない。

 というか、もう......。

 

 でも本当に何だこの状況


 「そう。良くなったよ! そしてそこでセリフ!はい!」


 「お、お前、可愛い顔してんな」


 「はぁ.......。はいカット。間宮くん。ふざけてる? 全然キュンキュンしない。もっと感情込めてよ。感情を! やる気ないならもう帰るかい?」


 「..........。」

 いや感情も何も、田中君あいてにそれは無理がありすぎるだろう.....。

 あと、本当に帰りたいのだが。俺は君相手に何回壁ドンをすればいい.......。


 本当に俺は一体、今何をさせられている.......。


 「ほら!頼本くん!次は僕たちのことをそっちから撮って!」


 そして、すまないな.........頼本も。


 本当にすまない.......。

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