第72話【夏休み ADバイト⑪】


 何で彼女とパンケーキを食べにいったことがあいつ等に知られているんだ.....。


 あの後も何度もあいつ等から電話がかかってきたし.......

 ほんとに何なんだ。


 おかしいだろ.......。

 怖くて取らなかったけど......。


 「あ、おはようございます。」

 「うす、さっき田中が呼んでたぞ。」

 「あ、はい。」

 

 おかげで俺のリラックスタイムが.......。

 はぁ.......ってか田中君が呼んでた?

 何だろうか。


 まぁ、今日も頑張るか。


 って、え........。


 な、何だ?

 え?

 

 気がついたら、俺はある女の子からいきなり腕を引っ張られてスタジオの外に。


 え?


 そしてここはどこだ? 誰かの楽屋?

 とりあえず誰もいない。


 「ふふ、おはようございます。間宮くん。」

 「え、あぁ。おはようございます。」


 そして今、俺の目の前にいるのは.......柊沙織。


 え、何......。


 「ところで間宮くん、何で私がこんなことをしているかわかりますか?」


 え?

 何これ。

 全くわからない......。

 まじでいきなり何だ。


 彼女はわりと真剣な表情をしてそう聞いてくるが......普通にわからない。



 って、改めて何だこの状況。

 

 アイドルと密室に二人っきり........。

 なんだこれ......


 「わかりますか?」

 「え.......すみません。わかりません。」

 まじでわからない。何で?

 どういうことだ。


 「もう........。何でわからないんですか?私.......待ってたんですよ。」

 え? 何を。

目の前の彼女はそう言って何故か頬を膨らませながら俺のことを見つめてくる。


 待ってた.......?


 「もう........。何ですかその顔! lineですよ。line。何で連絡くれないんですか!約束したじゃないですか。」

  え.......。


「......。」


 いや......あれはドッキリのやつだろ。

 

 というか、そもそも連絡先がわからないからどうしようもない。

 捨てちゃったから.......。


 「いや、あの.......。」

 

 「以前に私の連絡先はお渡しましたよね。」

 まぁ、あれが本物ならそうだな.....。

 

 というか.......何で俺からの連絡をそんなに待つ。

 不自然すぎるだろ。

 こんなところまで連れてきて。

 やっぱり.......ドッキリ?


 「も、もしかして........失くしたとか?」

 不安げな顔で彼女はそう聞いてくるが、それはない。


 「い、いえ、それはないです。安心してください。」

 ドッキリだとしても個人情報の観点からそれはない。


 「な、ならなんで連絡くれないんですか? ほ、ほんとに待ってたんですよ。」

 今度はそう言って彼女は潤んだ瞳で俺のことを見つめてくる。

 

 演技派だな.....。

 まぁ......正直に言うか。

 ドッキリだろうし、彼女にダメージはないはずだ。


 「捨てちゃいました.......」

 「え?」

 え?


 「ど、どういうことですか?」

 引き攣った表情の彼女がそう聞いてくる。


 「いや......ちょっと。まぁ、ドッキリだとわかったので。」

 「は?ド、ドッキリ?」


 その彼女の質問を最後に、二人の間には一瞬の沈黙。

 

 すまないが、これでもうドッキリは成立しない。

 本当にすみません。柊さん。

 俺何かにこんなに頑張ってくれているのに.......。


 「........。」

 「ど、ドッキリの意味がわからないんですけど......。」

 しらじらしい.....。


 「ちょっと言ってることの意味がわからないのですが、やっぱりこの方が私の連絡先を捨てた理由ですかね。」


 ん?

 この方......?

 

 いつの間にかそう言って彼女は自分のスマホの画面を俺の方に傾けてくる。

 

 え?


 え?

 ちょ、え。何だコレ。

 え、まじでなにこれ。


 そこには顔にモザイクがかかった山本に俺がパンケーキを食べさせてもらう画像。


 「え.......は?」

 え?

 まじで何だコレ。


 「これってやっぱり彼女さんですかね?」

 「え......いや、違う違う違う違う違う。」


 「え? 違うんですか?」

 「いや、違うよ。ってか何これ。え、何これ。」


 「え?.......知らないんですか?」

知らない......。


 「.......。」

 「.......。」


 「じ、じゃあ誰ですか?」  

 「え、クラスメイトって......まじで何これ。」


 「え? ほんとに知らないんですか?」

 ま、まじで何も知らない......。

 何だこれ。


 「.......。」


 「ふふ.........へぇ。知らないんですねぇ。それと彼女じゃないんだ......。」

 すると目の前には何故かそう言って微笑んでいる彼女。

 な、何故笑っている。

 笑うところではないぞ。


 「で何ですか。これは。」

 まじで何だこの写真......。

 そして何で柊さんが持っている。


 「ふふ、知りたいですか?」 

 「はい。もちろん.....。」

 何でもったいぶる。

 早く教えてくれ。


 「ふふ、じゃあスマホを出してください。」

 え、なんで。

 意味のわからない状況に躊躇し固まってしまう俺。


 「もう......。知りたくないんですか?別にそれならそれでいいですけど......。」

 

 「い、いや、とりあえず教えてください。」

 聞こえてきた言葉に、急いで俺はポケットからスマホを取り出す。

 とにかくその写真が何なのか、何で彼女が持っているのかを知りたい。

 ほんとに何なんだ。

 何で持っている。


 「ふふ。じゃあまず、ここをこうして、こうして.....ふふ」

 ん......? 

 何故か俺のスマホの画面の上で指を動かす彼女。 


 「.......。」

 何してる.......。 


 「はい、これで登録完了です。」

 ん?

 完了?


 「あっ、もうお仕事に戻らなくちゃ。ふふ、とりあえずお話の続きはまた仕事後にお願いしますね。それじゃあ。」

 そう言って彼女は今いる部屋から颯爽と退出。


 は.......?

 

 いや......なんで。

 色々とよくわからないが、とりあえずあの画像はまじで何だ。

 いや.......まじで今、教えてくれよ。


 え?

 

 しかも俺のlineの友達リストにはいつの間にか柊さんの名前。


 何だこれ......。


 え?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る