第61話【夏休み ADバイト⑤】
嘘だろ。
俺が寝坊.........。
最悪だ。
結局昨日はあの後100均に行って、現在コンタクトの上から身につけている安くてフレームがかなり太い伊達メガネを買った。
これにマスクぐらいしかもう思いつかなかったのだ。
あまりにもこれはと思って夜遅くまで考え続けたが、その結果がこれだ。
でもこうなったらこれで行くしか仕方がない。
そしてそうこう考えているうちに俺はもうスタジオ
って、え.........?
な、何だこの状況。
「おいおい、息子がここまで言っているんだからちょっとぐらいその柊沙織とやらとの時間をとってくれてもいいんじゃないか?」
今、俺の目には見た目からして成金っぽいおっさんのその発言に、いつも以上に氷ついているスタジオの光景。
そしてそのおっさんの後ろにはあのいけ好かない七光りのあいつに何故か取り巻きであろうか、さらにチンピラっぽい筋肉質の男2人。
ほんとに何だこの光景は........。
そんなことを考えながら呆然としていると、いつの間にか隣にいた田中くんの顔が俺の耳元へと近づいてくる。
「遅いじゃないか。」
「ご、ごめん.........。というか何これ。」
「とうとう現れちゃったよ。あいつの親父。」
「え......?」
ということはあのおっさんがこの番組のスポンサー?
「間宮くんは休みだったけど。昨日も彼はここに来て暴れて帰ったんだよ.......。それで今日来てみたら親父まで出てきた。ほんとやりたい放題だよあいつ。」
まじか......。
「しかも今日に限ってさおりんのマネージャーがまだ来ていないみたい.......。最悪だよ。」
そんなことをひそひそ彼と話していると、また偉そうなおっさんの口が開く光景が俺の目には飛び込んでくる。
「な? ちょっとだけでいいんだ。柊くん。息子とお茶でもしてくれないかい? 私の顔を立てると思ってさ。」
その発言に尚もスタジオ内の大人たちは沈黙している。
俺にはよくわからないが、何故かおっさんの発言に誰も口を挟めるような空気ではない。
それだけスポンサーの権力が強いってことなのだろうか......。
するといつの間にか柊さんの方へと向かっていくドラ息子の武梨。
「な、沙織。別にどうこうするってわけじゃないんだ。ちょっとお茶するだけ。な!」
そう言って奴はいつの間にか柊さんのその華奢な手首を掴んでいる........。
「ハッハッハッその娘が柊くんか。可愛い娘じゃないか。成之よ。」
そして汚い笑みを浮かべてその光景を眺めているおっさん。
「え、ちょっと 待ち.......」
その光景にミキの声も聞こえてくるが........その言葉は途中で途切れてしまったようだ。
奴の取り巻きの睨みによって......。
そしていつの間にか武梨達に連れられてスタジオの外へと消えていく彼女。
マネージャーがいないからだろうか、それともあのスポンサーが来ているからだろうか、そこらへんはよくわからないけれど、以前に武梨をスタジオの外へと引きずっていったガードマンみたいな二人が出てくる気配も一向にない。
そして尚もスタジオ内に残るスポンサーのおっさんに、大人たちは硬直状態。
え......?
やばくないか。これ。
いや、やばいだろ。
って、え?
そんなことを考えていると俺の手首も何者かによって掴まれる。
「行こう!間宮くん。」
え......た、田中君?
そう言って勇ましい顔をした彼に、気がつけば俺もスタジオ外へと連れていかれる。
でも確かにこれは何かやばい。
どうにかしないといけないのはわかるけど、でも.....俺達だけで?
た、田中君?
でも......ほんとにあいつ碌でもないな。
ほんとにお茶だけならいいけど
あの顔......絶対ちがうだろ。
でも本当に......どうするつもりなんだ田中君。
で、一体これは何が起きているんだ田中君。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます