第22話【美人ババア】


 今日も俺は机の上で寝たフリをして1日を終える...はずだった


((間宮くん、間宮くん))


 しかし、寝ているフリを続けるている俺に、女の子が優しく肩をゆさぶってくる。

 この声.......。

 

 ((間宮くん? ちょっとだけで良いのでお話を聞いてくれませんか?))


 何だろうか。

 さすがにこの状況で無視もよくないよな......。

 

 しぶしぶ顔をあげると、かなりの至近距離に......アリスの顔。

 近いな......。


 そんなアリスは周りをキョロキョロと確認しながら.......というよりは榊の視線に気を使いながら、俺の耳元にちょこんと手をあててくる。


 ((間宮くん、今日の放課後、少しお時間ありますか))


 まぁ時間はあるんだけれども、どう答えるのが正解だろうか?

 用事はなんだろうか。

 

 ((そうですよね......。無理ですよね))


って、俺が迷っていると、いつの間にか目の前の彼女はショボンと肩を落としているみたい.......。


((だ、大丈夫、時間はあるよ))


 そしてそんな彼女に、何故か咄嗟にそのような言葉が口からは漏れ出てしまう俺


 「あ、アリガトーござイまス!」

 

 で、俺の前には満面の笑みで俺の手を握ってくるアリス。

 

 で.......一体何をするんだ。

 っていうか、最近ほんとよく俺に話しかけてくるな.......。

 いや、まぁいいんだけども。



______________そして放課後.


 何故か俺はアリスの家にいた.....。


 トコトコと歩くアリスに連れられるままに歩いていたら、高そうな高層マンションに到着。

 そしてオートロックを通り抜けて、あれよ、あれよと気がつけば俺はアリスの家の扉の前にいたのだ。


 ((ママー、帰ってきたよ。))


 こ、これは入っていいのか?

 そんなことを考えていると目の前にはアリスとは違う女性が現れる。


 ((わぁ、君が例の間宮くんね。))


 俺を見て拍手をしている女性。

 モ、モデルみたいだな。


 ((この人は私のママなの、間宮くんの話をしたらぜひ家に連れてきなさいって。))


 そしてアリスからは目の前の女性の紹介が入る。


 それにしても綺麗だな.......。

 

 俺が不覚にもアリスの母親に見とれていると、気が付けばアリスママも俺の顔をジーっと見つめている......。


この人も........近いな。


 って、え?


俺の身体を何故か彼女はいきなりまさぐってくる......。

ほ、ほんといきなり何なんだこの人。


 ((あなた、格闘技の経験は?))

 ん?


 ((ほんの少しだけ))

 

 え.......?


 そう答えた次の瞬間.......俺の顔面があった位置にはアリスママの長い脚から蹴りが繰り出されていた。

 は.........?


 な、なんだこのババア、意味わからねぇ。おっかなすぎるだろ。


 ((な、何のつもりですか))


((この距離で私の蹴りを避けるなんて、やっぱりあなた、私の見立てどおりただ者じゃないわね))


いや、避けれてなきゃ今ごろ、俺の鼻が折れてるっていうレベルだぞこれ。

  ま、まじで何だこのババァ.......。


 すると、次の瞬間、こんどは俺の顔面のあった位置に彼女の拳があった。


 ((今、失礼なこと考えたでしょ))

 目が笑っていない笑みを俺に向けてくるアリスママ


 まじでもう帰りたい.......。


 ((ママ、いったい何してるのよ。ごめん間宮くん、ママ向こうでずっと総合格闘技やってて強そうな人をみると、すぐ力量を試そうとしちゃうの。本当にごめん。))


そういうことか.......ってならねぇよ。


 ((でも、間宮くんすごいね。パパはいっつもママの蹴りやパンチでボコボコにされるのに全部避けちゃうなんて。頭もいい上に強いとは.......やはり間宮くんはすごいです))


 アリスパパ......。可哀そう。


 ((しかもほんとはハンサムボーイ))

 そしてまた意味がわからないことを言っているアリスママ


 ((ねぇ、間宮くん。今日、ここに間宮くんを呼んだのはママに連れてきなさいと言われたからなだけじゃないの。私に勉強を教えて欲しくて呼ばせてもらったのです.......。))


 そしてアリスがようやく、今日俺を呼んだ訳を話しはじめる。


 そういうことか。


 ((まぁ、それは別にかまわないけど学校じゃダメなのか))


((学校では集中できないのです。皆が話しかけてきてくれますし。それにドイツ語もしゃべれる間宮くんに教えてもらいたいのです))


 まぁ確かにそうか.......。


 ((間宮くんには迷惑かけてるとわかっていますが、はやく日本語を覚えて、皆と本当の意味で仲良しになりたいんです。どうかお願いできませんか。こんなこと頼めるの間宮くんしかいなんです))


 気が付けば、今にも泣きそうなウルウルとした目でそう俺にうったえてくるアリス


 さすがにこの状況では断れない......。

 俺は了承の返事。


 ((やった、やった、間宮くんと勉強。))

 

 目の前にはおおげさにピョンピョンと太陽のような笑顔で跳び跳ねてるアリス


 何でそんなに嬉しそうなんだ......。


 ((よかったわねアリス。私も間宮くんを大変気に入ったわ。これから毎日、いや、もうずっとここにいてもらいなさい))

 その横ではまたもや、意味のわからないことを言っているアリスママ


 とりあえず、アリスママの言葉はもう無視だ.......。


 そして俺はこれから、このアリスの家に通うことになる様だ。


 「.......。」

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