幕間 生まれ変わるリタ
※若干のエログロ描写有り。一応レーティングにはチェック入れてます。
だけど何度も何度も敗北を重ねてしまった。あのルークという鉄壁の聖騎士を私は倒せなかった。いや、それどころか敗北し、魔道鎧の中身が私だと知った途端に逃がされた。
修理してトライ&エラーを繰り返したが、中央都市国家への総攻撃まで結局1度も勝つことは出来なかった。
タクマさん達が北西に向かってる間に総攻撃を開始した。その攻勢に私が参加することは許されなかった……。
「リタ、ここからは大人の仕事だ。お前はもう十分にやってくれた。後は見届けてくれたらいい」
「そんな! 私はテンとして参加したいのに!」
「エリンの仇、それを討つのは私でいいのだ。お前は若い、きっとやり直せるはずだ!」
お父さんは私を置いて総攻撃を始めてしまった。私がもっと功績を立てれば途中からでも参加させてくれるに違いない。
工作員から情報を聞き出してタクマさん達を待ち伏せして攻めた。お父さんが"希望"として恐れた彼らを倒せば功績としては十分過ぎるはず……エリンお姉ちゃんの仇、私だって討ちたいに決まってる!
──結果、機体を壊されて敗北。
「なんで上手くいかないの! なんで! ぐ、う──ぐぅぅぅぅぅッ!」
お父さんに内緒でルギスさんから頂いた
最初は保有魔力を大幅に引き上げる魔道具だったから使い続けた。だけど、段々と私を侵食し始めた。
『氷炎の魔術師か、レアな癖に印術師に敗北したのだったな。最早そのジョブでは勝てないのではないか?』
「うるさい! 魔道鎧があれば、また──」
『あれで勝つには個人では無理だ。だが数を揃えようにも総攻撃に全機出撃してそれもできない……』
「何が言いたいの!?」
『氷炎ならばいずれは勝てたかもしれん、だが時間がない。何をするにも時間がない……お前は詰んでいる』
「うるさい! そんなことわかってる!」
『だがお前は運が良い……終末の獣足るこのモルドの力を借りることができるのだから……』
「どうせ私を乗っ取って好き放題するんでしょ? でも残念、乗っ取ったところで器が私じゃあ肉体はすぐに滅びるわ」
『くくく、物語の読みすぎだ。モルドの残りカスに過ぎない我が、お前を乗っ取ったところで数時間で浄化されてしまう。人間の身体はそういう機能がある』
「じゃあなんでいつもみたいに邪魔しないの?」
『協力し合えばお前を生まれ変わらせることができる。ジョブは1度決まると変えられん、ならば生まれ変われば良いのだ』
私は悩んだ。どうせこのままじゃエリンお姉ちゃんの仇どころか戦いにも参加できない、最早モルドの手を借りるしかない……か?
中央は世界収縮に乗じてパルデンスに攻撃を仕掛けた。そのせいで村の救出は遅れ、飲み込まれたお父さん達は炎の壁の向こう側に放り出された。
エリンお姉ちゃんの結界で何とか災害壁を凌いだけど、調査隊以外は全滅──エリンお姉ちゃんは魔力欠乏症と全身大火傷で死亡。
私は村を離れてたから助かったけど、姉の死に目にも立ち合えないことがこんなに悔しいとは思わなかった。
──やっぱり、中央都市国家ルクスは許せない!
「いいわ、悪魔に魂を売るわ!」
『買うつもりはない、これはあくまでも協力なのだ──さぁ、始めようか!!』
モルドの化身が叫ぶと同時にペンダントに填まっていた
痛みはない、ただ異物感が凄いだけ。
『なるべく痛みは減らすつもりだ。だがそろそろ痛む、こればかりは我でも無理だ』
石が徐々に下へ向かい、ヘソの辺りで止まった。そしてドクンという鼓動が響き始めた。
「どうなる、の?」
『……生まれ変わるのだ』
徐々にお腹が盛り上がって、まるで妊婦のようになった。その段階で痛みが生じてきた。
「うぅ、痛い……こ、これ……妊娠? 何か生まれるってこと?」
『お前が生まれるのだ!』
激しい激痛が全身を襲った為、私は後ろに倒れてしまう。そして5分ほど経過した頃、何が破裂するような音がした。
『ふむ、羊水が破水したな、いよいよだ』
「ううううう! あああああああっ!」
股の間の異物感で脚が徐々に開いた。何かがお腹から出ようとしてくるのがわかる。痛みでどれくらい時間が経過したかはわからない、だがなんとかソレは生まれた。
「息はしてないけど?」
『当たり前だ、通常妊娠じゃないから肉の塊に過ぎない。さて、これから魂を移し変える。お前の魂は痛みから保護する為に1次元上の領域に隔離する、そこから"移魂の儀"を執り行う』
そこから私の意識は俯瞰視点となった。モルドの話では、私が承諾をしなければこれ程の事はできないと言っていた。神と言えども創造されて時間の経った魂や肉体に細工をするのは困難なのだという。
──私は魂の無い私を見下ろす状況が続いた。
魂の無い私の体が発光したあと、1つの大きな光となってへその緒を通過、そして赤ん坊の体内でそれは定着した。
赤ん坊が鼓動を始める、心臓ではなく成長の鼓動。
一回の鼓動で元の私が年老いていく。それと同時に赤ん坊は成長を始める。身長は伸びて、肉も増え、乳房は大きく膨らみ、お尻も同様に大きくなった。次第に私の身体は拳程の大きさになり、赤ん坊は今まで見たこと無いレベルの美女になっていた。
『ねぇ、元の年齢を越えてるように見えるんだけど……』
『年齢は18で固定だ。他と一線張れるレベルになるにはこの年齢がちょうど良いからな。我の因子も多く取り込んでる故に半神半人の完成だ。おっと、今度は赤子が本体を取り込み始めたな、最終フェーズだ』
鼓動は続いている。モルドの言うとおり、赤子だった身体のヘソに私が吸い込まれている。
『さぁ、魂を同期させるぞ!』
その言葉と共に私は新しい身体に定着した。
「──かはぁッ! ゲホッ! ゲホッ!」
『初めての呼吸だ。苦しかろう……だがすぐに慣れる』
いつもより視点が高い、髪は茶色から灰色に変わってる。羊水に反射した私の顔は元々の顔が成長した感じだ。
下が見えないほど胸が大きい、誰もが羨むプロポーションに仕上がってる。
『我の役目は終わりだ。お前のジョブは"灰の神子"……混沌魔術を使い、お前が好きなように生きろ。それが我の願いそのものだ────』
そうして私の中のモルドは消えた。神本体ではないにもかかわらず、移魂の儀を行った結果だ。最早完全に私の中の悪神の気配は無い。
──後は自由にやるだけだ。
「ふふふ、これで私は勝てる! ……いつまでも裸なのはいけないわね。──"滅亡の衣"」
無尽蔵に近い魔力が灰色のローブを作り出し、私を覆って身体にピッタリとフィットした。
この日、私は自分で自分を生んだ。そして至る者を超える存在になった。さながら、超越者とでも言うべきか。
リタ、そしてタクマさん、待っていて下さいね。今から行きますから!
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