第76話 旅立ちと道路舗装!!
次の日、借宿で起きた俺はベッドから体を起こし、毛布を畳もうとした。たった1日とは言え、礼儀を失しては人間として、いや日本人としてあるまじき行為だからだ。
バサッ!と払い除けて数秒の
「バカな──酔ってはなかったはずだ。なのになんで、ティアがいるんだよ!!」
そう、毛布の中にティアがいた。しかも、純白のネグリジェを着ている……サイズが合ってないのか少しブカブカなようだ。
そして、男なら誰でも注目してしまう部分に視線は吸い寄せられる。胸部の大きな果実は濡れているわけでもないのに艶やかで、光沢があるようにも見える。それが寝息に合わせて規則正しく上下している。
次に俺は自身の下着をチェックする。
うん、特に変な臭いもしない。もし、そう言う案件を引き起こしたのなら、ベッド全体が"ある臭い"で満ちているはずだ。(経験ないので推測)
「う……ううん──お兄ちゃん?」
ティアが目を擦りながら起きてしまった。ネグリジェの肩紐が片方ピロンと落ち、肩紐は腕の途中で止まった。先端は見えてないが、かなりの部分が露出してしまった。
「ふぁ~あ……どうかしたの?」
俺は目をそらし、ベッドの横に落ちているティアの服を指差す。すると、ティアは徐々にリンゴの様に頬を紅潮させて腕で胸を隠した。
「あぅ、昨日お兄ちゃんが寝たあと寝間着に着替えたんだっけ──あ、あんまり見ないでよ」
あ、今思い出した……添い寝をするって言ったんだっけか。最後の記憶はティアの胸に顔を埋めたあたりだ。
てか──ヤバい、視線がついつい向いてしまう。
ティアは寝起きで思考が鈍ってるのか、胸が腕に押し上げられ、より一層、
俺は唇を噛みしめ、錆びたロボットのようにティアの着替えを手にとって渡す。
「あ、ありがとう」
カーテンの隙間から朝日が射し、それが透き通るような白い肌とさらさらな銀髪を輝かせ、照れながらも微笑むティアを美しい存在へと昇華させていた。
とても侵し難い光景──それに対比で感じた悪しき視線を誤魔化すように、グシャグシャとティアの頭を撫でてリビングへ向かった。
☆☆☆
まずは地盤を固めることが先決だ。ダークエルフも、エルフも、そして魔族さえも協力して開拓に取り組んだ。
それぞれの得意技能を活かした素晴らしい協力関係、世界を救った先でも続いて欲しい光景だ。
本来なら協力したいところだが、俺達にはやるべきことがあるためエルフの里を発つことにした。
そして旅立ちの時、門の前にはオラフたちが見送りに来ていた。
「タクマ君、我々はビフレストの門を最悪の場合を想定して避難所として作り変える。万が一の時は──」
「ああ、わかってるよ。でも使わない未来を勝ち取る気持ちで動くからな?」
「はは、そうだったな!あ、そうだ!助力が欲しい時、渡した鈴に魔力を込めれば我々もそれに気付き、すぐに向かうから覚えといて欲しい」
「助かる……と言っても、あと何回か寄るかもしれない」
「ふむ、何か考えてるようだな?」
「まぁ、それは確証を得たら話すよ。期待しないで待っててくれ」
オラフと俺は最後に少しだけ笑い、握手を交わしてしばしの別れとなった。
☆☆☆
こんなところに人はいない、エルフは背後にいるので安全は確保できている。となれば帰る時にまた来やすいようにするだけだ。
「お兄ちゃん、ホントに本気で撃っちゃっていいの?」
「ああ、ここのところ新魔術も出力調整ばかりでウンザリしてるだろ?ストレス発散にパーッと撃ってくれよ。この山脈、俺も見飽きてたしな」
「うん!わかった!」
ティアは前へ両手を掲げ、魔力を収束させて魔方陣へと流し込む。すると、白銀の魔方陣は回転し、光輝き始めた。
ティアは攻撃魔術を今まで剣から放っていたから本格的な攻撃魔術に慣れていない。だから俺が背後から闘気で包み、無駄な魔力を魔方陣へ戻るように導いた。
臨界に達した時、それは放たれた。
「月光魔術”
目の前の景色が全て白で埋め尽くされ、目蓋を閉じてもオレンジ色に見える程にそれは凄まじかった。
時折何かの悲鳴のようなものが聞こえてきたが、発動されたそれが止まるまで、俺達は手を出すことができない。
ティアが残存魔力1割まで消費したところで魔術は止まった。
「え、えええええ!?」
自身の魔術に驚き、そしてペタリと座り込むティア。
切り立った山脈は物の見事に溶けていた。地面に残されているのは上半身だけでピクピク動くガーゴイルやベヒーモス。当然そいつらの命は風前の灯だ。
「タクマよぉ、最初からこれやれば楽に着いたんじゃねえのか?」
そんなことを言うオズマにいち早く雪奈が答える。
「脳筋ですね。エルフに当たったらどうするんですか?それに、ティアちゃんだってそう何度もこれが撃てるわけじゃないんですよ?」
「わーったから!俺をイジメないでくれ!」
「大体ですね────」
やれやれとジェスチャーするオズマに人差し指を立てて説教する雪奈、なんだかんだでパーティとして仲良くなってるなぁ、と微笑んでいるとライラがティアを立たせて言った。
「タクマさん、もしかしてスキルみたいに"クールタイム"があるんですか?」
ライラは鋭いところを突くな。中等部最強は伊達じゃないってことか。
「ティアの魔術は神性が混ざってるからな、スキルであり、魔術らしいんだ。ルナの話によると"神の御業"の一種だからって言ってたよ」
「スキルの源は女神の加護……なるほど~」
そしてティアはスカートを叩いて立ち上がり、ライラに「ありがと!」と礼を述べた。
「あ、お兄ちゃん、多分あと3日は撃てないかも……」
「わかった……にしても、よくやったな!偉いぞ!」
ティアの頭を撫でると、ふにゃあ~と顔が緩んでいる。ハイデの街にいた時からティアはこれが好きだったな……。拓真は雪奈が不機嫌になるまでそれを続けていた。
その後、ティアの回復も兼ねて休憩し、拓真達は中央都市国家を目指したのだった。
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