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――――ピタリ、と。
動きが止まった。ギルバードが故意的に攻撃をやめたのではなく、
無理やり地上に降ろされた。もがいても、もがいても、「力」の前には筋肉をピクリと動かすのが精一杯。さっきまでと同じくらいの力を出しているはずなのに、自分を押さえつける「力」はそれよりもはるかに強かった。
「あの……」
炎炎とする魔力に包まれているギルバードの目の前に現れたのは、自分の歳の半分くらいの少年だった。見たことのない衣服だったが、寝間着であることが何となくわかった。風貌に合わない大きめのブーツに、大きめのフード付きマント。まるで有り合わせを着ているかのような、そんな感じ。
不思議なことに彼自身に「死の雪」は効かず……というよりこの辺一帯には降っていなかった。
「どうか、彼を殺さないでほしいんだ」
声変わり前の、細く高く透明な声。
「……あ?」
こいつは何者だ? という分析さえまともにできない状況にある。一つだけ分かっていたのは、こいつのせいであの吸血鬼を「殺せない」ということだけ。……だから、こいつも「殺してやろう」と考えてしまう。
普段の彼なら、こんな風に安直に答えを出さない。だが、膨大な魔力を使用し続けたせいで、既に身体に限界が来ていた。脳もうまく働かない。
それでも、動くことだけはやめなかったが。
「ふざけんな……ふざけんな!!!」
今すぐこの拘束を振りほどいて、こいつもろとも消し飛ばしてやる。
と、「復讐」から「破壊」の二文字へと、彼の行動が変化し始めていた。魔力に体が呑まれ始めていることを分かっていても、ギルバードは……太陽の勇者は、諦めることを知らない。
「ぁああああ!!」
ボキンッ……。
変な音がした。同時に右足に力が入らなくなるのを感じた。
「うぅあああ!!」
バキンッ……。
また変な音がした。今度は左手に力が入らなくなるのを感じた。
「……冗談だろ?」
骨が折れた、ということを何となくギルバードも分かっていた。
それでも……。
限界まで力を振り絞っている彼は、やがて白目を剥いて、そこからは血の涙が流れ始めた。だけど、悪足掻きを止めなかった。決して。嘆いて、叫んで、泣いて、苦しんで、勇んで……。
絶望的な「力の檻」の中から脱出しようと、必死だった。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
灰色の空に、その絶叫が響き渡った。
だが、とうとう、彼は糸が切れたように動かなくなった。
「おい、死ぬなよ……!?」
「放っておけば死ぬぞ。助けたいんだったら、すぐに運ばないと」
「そうだな」
絶大な力を誇る勇者を、指一本も触れずに拘束した少年。
彼は
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