チューズミー、カンパニー!!

作者 いっさん小牧

楽しい仲間たちとともに就職活動の旅に出る

  • ★★★ Excellent!!!

「就職活動」この言葉にどんなイメージを抱かれているでしょうか?
おそらく「楽しい! 大好き! いくらいでもやりたい!」なんて人はほぼいないことと思います。
私もそうです。「好きじゃない」では足りません。もはや「見たくない思い出したくない消えたい」くらいです……。

そんな就職活動を題材にして、楽しい娯楽小説に仕立てる。それはとても困難なことに感じられます。
しかし、この物語はそれにチャレンジして成功しています。就職活動に挑む大学生の可憐、明るくてちょっと天然な彼女を主人公として、前半はドタバタコメディの要素が強く、とっつきやすい楽しい雰囲気となっています。
後半は次第にシリアスなシーンが増え盛り上がってゆき、感動的なラストへとつながっています。

しかも、とても実用的で役に立つ情報が満載です。学生さんやこれから就職活動を行う方には、ぜひご一読をお薦めしたいです。
就職活動を行う側の苦悩に共感もできますし、企業側がどんな人材を求めているのかも、面接中の具体的な問答を見ながら学ぶことができます。
自分もこれを学生時代に読みたかった! と心から思いました。
このお話を本にして、書店の就職活動情報のコーナーにそっと置いておきたい気持ちになりました。そうすればきっと、これから不安な就職活動に挑む方々を励ましてくれることと思います。

登場人物が非常に個性豊かで好感の持てる人ばかりです。彼らの微笑ましいやり取りを見て楽しみつつ、実践的な就職活動のノウハウも学ぶことができるのです。

明朗で人好きのする大学三年生の可憐。
機械に強く気立てが良くて、可憐に思いを寄せる、謎の青年カルコ。
平安時代からやってきた勝気な才女の庭根。
おっとりと優しいがカリスマ性のあるお嬢様レイナ。
名前の通り力強く明るくたくましい年上の太陽。

この五名のバラバラな個性が絡み合う様子が絶妙に愛おしいです。
みんなどこか浮世離れした部分があり、最初の頃は、彼らの天然ぶりと面接での珍問答に楽しく笑わせていただきました。
そしてそれぞれが壁にぶち当たり、悩みながら成長を遂げていきます。
就職活動はもちろんひとりひとりの戦いでもありますが、ここでは支えあう仲間たち皆の戦いでもあります。
その様は、まるでラスダンのラスボスを目指す勇者一行のようでもありました。

彼らの旅をぜひ最後まで見届けてください。
感動的なエンディングが待っています。

ちなみに登場人物のひとりは何やら秘密を持っていて、途中で何度かほのめかされます。
最後にそれが明かされたとき、みんなとの旅は終わったのだという感慨と相まって、じんわりと熱く胸を打たれました。
この伏線回収が見事で快感でした。とっても素敵な読後感です。
このあたたかくて切ない感動をぜひ味わってほしいです。

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