第84話 武名井様の本質

 太一の前に立つ素っ裸の若い女性。

 太一の前についているものを勃たせるのも若い女性。


 太一は光龍様に似た神聖さと極度のエロさを感じた。


 振り返るのに、どうしても前屈みにならないとならなかった。




「貴女はもしや、武名井様?」

「武名井様だなんて、気安く呼ばないことね。お仕置きよ!」


 そう言って、武名井様は、太一の頭の上に右脚を乗せて踏ん付けた。


 そうすると太一は武名井様を下から眺めることになる。


 同時に前屈みになれ圧がさらに高まった。


 湯気のようなものでぼやけている。


 太一の目からははっきりとは見えない。


 だが、武名井様が全裸なのは間違いがない。


「まぁ、いけない子ね。そんなにおっきくしちゃって!」


 武名井様はニヤリと笑った。


 太一は、身の危険を感じずにはいられなかった。


 だが、武名井様は顔面偏差値90以上の美しさ。


 その身体つきは太一好みのトランジスタグラマー。


 だから、太一はこの女神になら何をされても良いとさえ思いかけた。




「姿を見せられない真名井様より、私と一緒の方が刺激的でしょう!」


 武名井様がまた笑う。今度は優しい笑顔だ。


 発光体質を除けば普通の男子高校生の太一。


 どんなに刺激的だったことか。


 いつ爆発してもおかしくはない状況だった。


 だが、太一はぐっと堪えて言った。




「俺は真名井様の、光龍大社の宮司、はねっこたちのマスターだっ! お前なんか!」


 すると、武名井様は頭を抱え込んでしまった。


「いやぁん! 何なの? 私なんか、私なんか何なの?」

「はぁ?」


 太一は唖然とした。


「もっと言って、もっと罵って!」


 急に風向きが変わった。


 武名井様は言葉攻めに弱いどMなのだ。


 太一は、ここは攻めどころと判断し、言葉を繰り出した。


「あぁ、言ってやるさ! お前なんか、お前なんか……。」


 だが、それ以上何も言えなかった。


 武名井様のことを、太一は何も知らないのだ。


 適当に言っていれば良いのに、妙に律儀な太一にはそれができなかった。


 だがそれが逆に、武名井様にとっては、充分だった。


 焦らされているような不快な快感を覚えた。


「キッ、キャー! お助けください!」


 そう言って叫んだあと、失神したのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る