第77話 興隆会事務所
だが、それも束の間。朝8時の販売開始後1時間以内にはソールドアウトしてしまう。そこで、業務委託する神様をさらに増やすことになった。
「今度は、北へ行くのじゃ」
光龍様に言われて太一が向かったのは、扇大橋駅だった。このときは、まりえとしいかを連れていった。
「あれれ、光龍社なんて、どこにもないよ!」
「ふんっ。だから来たくなかったのよ」
「まぁまぁ。探せばそのうち見つかるよ」
そして、中川土手沿いを中心に探しまわった。しかし、全くそれらしい気配を感じなかった。さすがの太一が諦めかけたそのときだった。
「ねぇ、マスター。アレって、『こうりゅう』って読むわよね」
そう言ってしいかが指差したのは、『興隆会事務所』という、ごつい看板だった。その下には木刀を持ったごつい門番みたいな男が2人いた。太一は、決して関わってはいけない団体様のような気がして、その場から逃げ出そうとした。だが、そのうち門番の1人がしいかが指差しているのを見つけて、飛んできた。
「おいっ! 気安く指差すんじゃねぞ!」
明らかに怒っている。太一は謝って逃げようと思ったが、そうもいかなかった。まりえが、ちょっかいを出しはじめたのだ。
「わー! かっこ良い! 木刀、木刀。すごーい!」
「そ、そうかい? おじさん、そんなに格好良いかい?」
「違うよ。おっさんじゃないよ。かっこ良いのは木刀だよ!」
「くっ、馬鹿にしやがって!」
まりえは、門番さんを遂に本気で怒らせてしまったようだ。無論、まりえには馬鹿にするつもりはなかったのだが、正直過ぎた。しいかは、元は自分が指差したのが原因だとわかって、それからは責任を感じていた。
「ごめんなさい。全部私が悪いの。興隆って書いてあったから、つい……。」
しいかはそう言って、深々と頭を下げた。この門番、頭を下げられれば、それ以上は言わない。そればかりか、しいか以上に頭を下げた。
「いやいや。こっちこそ、つい大声を出してしまった。本当に面目ない!」
ということで、仲良くなった門番さんと太一たちだった。そこへ、興隆会事務所の代表が現れた。着物が似合う、格好良い妙齢の女性、陽菜だった。
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