第38話 ラブアタック
「太一よ、あと2人を何とするのじゃ」
「そんなこと、分かりませんよ」
「いつになく弱気なのじゃ」
「人間なんて、そんなものですよ!」
太一には焦りがあった。今日にも5人の巫女を集めよと言われてから太一なりに頑張りはしたが、この時間になって声をかける相手がいないのだ。
「そんなときは、流れに任せるのが良いのじゃ」
「流れ、ですか? 今はその流れがないから困っているんですよ」
「そうでもないのじゃ。アイリスが流れを作るはずなのじゃ」
困ったときの何とやら。他にすがるもののない太一は、光龍様の言う通りにしてみようと決めた。このときのアイリスは、何とかして太一を光らせたいと必死だった。気持ちイイー! となりたいからだ。色仕掛けを含むあらゆる手段で太一を光らせようと奔走していた。どうすれば太一が光るのかの1点だけに問題を絞り込んでいるのだ。だから、太一にとっては不安で仕方がないのだ。太一が光ではない別の何かを発射しても、全く意に介さないアイリス。それがかえって辛いのだ。
アイリスが作る流れとは、どんなものだろう。太一がそう思っていると、早速ミアとキュアから声がかかる。
「アイリス様が社務所の地下室でお待ちです」
「直ぐに行って差し上げてください、鱒宮司!」
「分かったよ。その代わり……。」
「……それとこれとは別問題です……。」
「……何度も言うように、私たちは巫女にはなりません!」
「……で、ですよね」
アイリスのラブアタックがあからさまなこと、あと2人の巫女を集めなければならないこと。太一には問題が山積みだった。そのうちの1つで良いから手っ取り早く片付けたかった。だが、こうもはっきりミアとキュアに断られてしまうと、解決する気力というものが、太一からは失せていた。
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