射撃のすゝめ
狙って・・・狙って、大丈夫だ、大丈夫だと、よく見ろよ、的は動いちゃいない。逃げも隠れもしないと自分に言い聞かせる。
よく狙いをつけて・・・引き金を引く・・・外した。
そのまま続けて三発ほど撃つ・・・やはり外れる。
「はぁ~・・・あたんn「コラー!!!貴様!なんだその撃ち方は!!貴様は教えられたこともできんのか!!!」「フガ!?」
ここは「ギルド」が開いている射撃部門の訓練場である。
ギルドとは国から完全に独立している団体で、時空間異常によって引き伸ばされた空間、通称ダンジョンを管理している。ギルドの主な業務内容はダンジョン内の調査、ダンジョン内の魔力により狂暴化した魔物がダンジョンの範囲内からでないか監視すること、ダンジョン内の魔物の素材や植物の買い取りなどである。
ダンジョンは至る所にできており、町のど真ん中にあることなどザラであった。なのでギルドの支部もいたるところにある。
この訓練場は出入り自由であり、料金を払えばこのように教官に指導してもらうことができる。そのうえ成績が良いとギルドから贈り物がもらえ、優人はその贈り物中にある
(武器にお金をかけるのは良いけど・・・、訓練してくれる上にガンバってりゃ武器までくれるとかそりゃ必死にもなるわ)
「私は貴様の様な小さな子供でも子ども扱いせん!!子供だからと甘くしていては他の者に示しがつかん!!その上、貴様自身が戦場に出たときにあっさり死なれては困るからだ!!!」「ヒエッ」
優人が戦闘スタイルを模索し、魔法オンリー、剣術オンリー、その両刀スタイル、ハンマーランスなどあれやこれやと試してみたのだが、どれもうまくいかず、挙句の果てには攻撃魔法にほぼ適正なしとギルドからのお墨付きという始末であった。
結局彼は向こうの世界での力、つまり向こうの世界では最強の力、人類が生み出してしまった最悪の人殺し道具、すなわち銃器に頼ることになった。
この世界で銃をあまり使う人はいない。なぜなら魔法がほとんど銃器類の上位互換のようなものだからである。
銃弾で攻撃したければストーンバレットで攻撃すれば良いし、弾丸補充のための弾丸複製なんて覚える暇があればストーンバレットの精度や節約法について覚えたほうが良いし、グレネードを対象に向けて投げるよりもファイヤーボールを対象に向け発射したほうがよほど良い。
つまるところ、銃器の扱いは魔法が苦手な人がしかたなく頼っているというような風潮が出来上がっていた。
だからなのか、とぐるりと訓練場を見回し、だからこの訓練場にいる人はすごく必死な表情で金まで払って訓練してるのかと優人は思った。
そんな感傷を教官が許してくれるはずもなく・・・
「コラーーーー!!!!貴様ぁ!何サボっている!!!戦場で死にたいのかぁ!奴らはそんな隙黙ってないぞ!!!」
「ギャー!」
彼の目標への道はまだまだ遠いようである。
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狙って・・・狙って、大丈夫だ、大丈夫だと、よく見ろよ、的は動いちゃいない。逃げも隠れもしないと自分に言い聞かせる。
よく狙いをつけて・・・引き金を引く・・・命中・・・人型の的の肩部分に命中した。あの的が本物の人であったら、戦闘能力が大きく削れていることだろう。
そう削れているだけだ。この世界の人間のタフさを見誤ってはいけない。
そう考えながら、そのまま続けて三発ほど撃つ・・・すべてどこかしらに命中する。
「ほう・・・貴様小銃や突撃銃の時に比べて随分と正確に当てられるな」「あい」「なんだその返事はぁ!!!」「ヒエッ」
(コワイ!・・・・まぁそりゃぁ当てられるさ・・・、こっちにはスコープなんて無くたって、
フクロウの目は人間の8倍ほど良いとされている。それに加えて彼自身もかなり目がよく、このような長距離のほうが狙いやすいと感じていた。
(フクロウの視力+俺の視力だもんなぁ・・・、てか使い魔の能力を術者に足すんだよなぁ・・・そりゃぁよく見えるし聞こえるよなぁ・・・)
的と彼との距離は大体300メートルほどであり、彼からすればすぐ目の前に的があるのと大差ないのである。
(近いからって正確に当てられるわけじゃな~い)「でも、うまく狙った場所に当たりません」「そんなもの用練習だ、何度も何度もやって体に覚えさせろ!連続で同じ場所に当てられるまで今日は帰さん!」
「なッなんですと!」「そりゃぁないっすよセンセイ!」「うっそだろwwww」「」
それを聞き訓練者たちが口々に文句を言ったり、絶句したりする。
「ごちゃごちゃうるさい!!さっさと始めろ!!!そもそも貴様ら魔法がものをいう時代で銃を選んだのだから訓練が厳しくなるのは当たり前だろうがッッ!!!」「「「アッハイ」」」
あまりにもごもっともな正論を言われ訓練者たちは黙々と的に向かって引き金を引き始めた。
結局彼らが彼らが家へ帰れたのはそれから5時間ほどが経過した後だった。
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午後10時、とても小学3年生が帰宅するような時間ではない時間に彼は帰宅した。心なしか彼にしがみついている白玉たちも疲れているように見える。
「ただいまぁ・・・・・・・」「おかえりー、今日も遅かったねぇ」「かえりー」
「なんで愛美が起きてんの!」「ほら、明日海行くって言ったじゃん?それでテンション上がっちゃったらしくて寝られないみたいなんだ」
愛美がこんな時間に起きていることに驚愕していると、その疑問に答えるように父が説明する。母は美華のおもりで一緒にもう寝てしまっていた。
「ほらご飯食べてさっさと風呂入ってきな、こんな時間だし、何より明日は早いからね」「うみー!」
そのように急かされて優人は家へ入って行った。
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