うっ羽毛
「わー!ゆうちゃんおにねー!」「えーえー、はいいーち、にー」
「いちたすいちはー……さん!」
「ちがう!」
「わかた!なな!」
「だから違うって!」
「サンタさんだー!」
「やっつけろー!」
「サンタはー外!」
「馬鹿め、トナカイは射程外だ!」
と幼稚園生活を堪能していることはや3年、気が付くと卒業式になっていた。
「わーん!やだよー!」
「しょーがくせーになってもわたしのこときらいにならないでください!」
「みなさんさようなら、さようなら」
と涙と感動吹き荒れる卒業式が終わりを告げた。園児たちの心は幼稚園から卒業する大きな悲しみと、それと同じくらいの大きさの小学校への期待感であふれていた。
(うげー!小学校かー……糞ダル!!!)
たった一人の愚かな園児モドキを除いて卒業式の会場はとても盛り上がっていた。
――――――
「なぁ
「ホー?」
いつのように裏山へきて、
「あー…、まぁなっちまうモンは仕方がない…、さっさと鍛練鍛錬……ん?おい白いの、何ぶるぶる震えてんの?」
さっさと鍛練しようとウサギとモグラに目をやるとウサギが何やらぶるぶる震えているではないか。
「え、何してんのお前?」「……!」ブルブルブルブルブルブル
その震えはどんどん早くなり、ブレて見えるほどであった。
「おっおい!しら
「……!」ボン!
「ぬっ!?」
あまりにおかしな震えだったのでマズイとおもい白玉に呼びかけようとした矢先に「ボン!」という変な音がした瞬間、一回りほど大きくなった白玉がそこにいた。
「……!」ドヤ―!
「」
「ホ!?」
ぽかーんと呆けた表情で白玉を見つめていた優人だが、ほどなく正気に戻り白玉を問い詰めた。
「おっおま!「強化」の巨大化じゃん!いつの間に…」
「……!」キリ!
と問い詰めているのに、褒められたと思ったのか誇らしげに鼻を鳴らすウサギが一羽…。
「ほめてねーから!まったくこのウサギは…、おいモグラ、こいつどー思うよ…」
そう言いながらモグドンへと顔を向ける。
「なぁおい、なんだあ「モグー!」ボン!
「お前もかよ!」
モグドンに白玉への愚痴を聞いてもらおうとしたら、今度はモグドンも巨大化したではないか。
「モグー!モグー!」
「……まぁなんだ、これは文句言うんじゃなくてむしろ喜ぶべ「モグー!」
そう納得しかけたところにモグドンの掲げていた両の手がドリルへと変形した!
「」
優人、再びのフリーズ!
「モグー!」
「ホ!?」
「モグドンの手がドリルになった……」
ギュリギュリ音を立てて回転するモグドンのドリルを、優人は茫然とした表情で暫く見つめていた。
そして我に返った
「お前―!報告をなー!」
「モグー!?」
「……!」(汗)
「ホー…」
と優人は体力が尽きるまでギャーギャー喚いていた。
閑話休題
「何はともあれ出来るようになったのは良いことだ」
「……!」(汗)
「モグー!」
あの狂乱から立ち直り、鍛練を終わらせて帰る準備をしながらそんなことを言った。
そのまま、これから先の方針についても話していく。
「このまま魔法と能力の鍛練を継続しながら戦闘スタイルの模索。後は使い魔の確保だ。使い魔は陸海空の全部を揃えたいなぁ……ん?空?空とな?」
とブツブツ言いながら、馴染みのフクロウへ目を向ける。
「……」
「ホー?」
優人はひとしきりオールの体を眺めると、ツカツカと近寄り、困惑する彼女に向けてやおら両腕を突きだす!
ウラー! ホッ!?
――――――
「ただいま帰りました~ん」
「お帰りなさ~い、今開けるね~」
優人が帰ってきたので、父がドアを開けて迎え入れようとした。
「まったくもう、午前中は卒業式だったのに終わったらすぐ裏山へ行っちゃうんだからなぁ…」
ドアを開け、その奥から姿を見せた信じられない程の間抜け面を視界に入れながら、父は小言を言ってやろうとして「うん?」と優人への違和感に気づく。
いつも頭に乗っている白いウサギが、なぜか右肩にしがみついている。
それなりにこの兎と長い期間暮らしてきたから、この兎が優人の体に、特に頭にしがみつくのが大好きで、よほどのことが無い限りそこから離れない事を知っていた。
いったい何故?父は考えを巡らせる。
よほどの事、例えば優人が抱えたくなったとか、あるいはモグドンに蹴落とされた?
いやそれは無いだろう。父は己の考えを否定した。
モグドンはどちらかといえば胴体にしがみつくのが好きなようだし、そんな事をするほど気性は荒くない。
じゃあ今頭の上にいるのは……、そう思い優人の頭の上に目を移す…。そこには一羽のフクロウが止まっていた。
「ホー?」
「」
一瞬思考が止まったが、すぐにあることに思い至る。
「あー、その子が優人が話していた鳥さんのことね!」
「そうだよ」(肯定)
そう、優人がオールと出会ったのは昨日今日のことではない。
優人とオールが出会ったのは優人が魔法が使えるようになって、自宅付近なら外出OKと許可されてすぐのこと。
裏山をさ迷っていると一羽の鳥の雛が巣に取り残されていた。
辺りを見回しても親らしき気配はどこにもなく、そもそも巣は放置されて久しいらしくかなり荒れていた。
放置するのもどうかと思い、今日まで育て上げ、今に至る。
つまり、初めての使い魔は白玉だが、一番付き合いが長いのはオールなのだ。
「これからも、よろしくな」
「ホー!」
オールへ改めてそう言いながら、優人は靴を脱いで家に入った。
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