第131話 神と呼ばれた男、救国の代償
(やっぱり説得は無理だったか)
自分は物語に綴られるような主人公じゃないから、たかが演説1つで国民全員が真人間になるなんて可能性は皆無だと思っていた。
それでも、もしかした、そういった万が一の可能性もあるのではと全力で説得してみたのだが、彼等彼女等の独善と傲慢は言葉程度で変わりはしなかった。
ネフラスカの人間性を諦めたゼノは屋根の上から足元に亜空間を開き落下するように入ると、ラケルやドーガン夫妻に入口付近に集めてもらっていた7色草と虹色草を吸収して黄金の輝きを纏い放っていた。
「ゼノ、今の状態から見て半日から1日でその姿で安定してしまうでしょう、ですから長くとも3時間以内にカタをつけなさい、それなら確実に元の状態に戻れるでしょう」
「ああ、わかった」
ゼノは全力の飛行で亜空間から自分を射出して、その姿を消した。
「無事に帰ってきなさい、この国の住民だけではありません、貴方達もまた等しく私の、世界樹の子なのですから」
入口が閉じられた後のその言葉は誰にも届く事なく生活魔法の中で消えていった。
△△▽▽◁▷◁▷
黄金の状態となり能力が極端に上昇したゼノは、街から離れると正面に亜空間の入口を開き突入し亜空間の中で反転して射出するのを繰り返す事で、疑似的に外の世界でも飛行する事を実現させていた。
(まだだ、まだ上げられる)
この方法は事前に伝えているので既にラケルも退避済みで、ゼノはスピードの上限がまだまだ上である事を、自身の耐久力にまだまだ余裕がある事を感じていた。
それでも音速を超えると、その衝撃波が仲間に届いたり作戦を狂わせる要因になると、音速よりかなり遅い速度で疑似飛行を繰り返し、ものの数分でサンカイオーに乗ったミラを飛び越えて魔物の大群の中央上空へと到達した。
「設定変更、進入許可魔物のみ、出口は地下空間。入口幅、水平方向半径100キロ、垂直方向直径5キロ……生活魔法、発動!!」
その瞬間、本来水面の波紋のように空間の揺らぎが見えるだけだった亜空間への入口が、光の柱に、そして一瞬でその範囲を広げ光の壁になり、ネフラスカや魔物の大群を超え、砂漠の果てまで覆い尽くした。
「奇跡だ、やはり彼は、いやあのお方は神に違いない」
「今からでは遅いかも知れないが、悔い改めなければ」
「また神様が来てくれるように、神様の望んだ国にしなくちゃ」
△△▽▽◁▷◁▷
「これは……僕達のリーダーはとんでもない人だったんですね」
「最初会った時はちょっと広い部屋を作れるモヤシだったんだけどな」
「最初に誘ったのは私なんですよ、流石私の相棒のゼノさんです」
「あらあらミラちゃん、生涯の相棒だなんて大胆ね」
「じ、ジュディスさん、私そんな事は言ってませんから!」
「身命まで救っていただいた上にこれほどの人に仕えられる、なんて私は幸せ者なのでしょうか」
△△▽▽◁▷◁▷
「ラケルは3時間と言っていたが、俺の体の限界か」
超常的な力でブーストしても元はひ弱な人間の体だ、いくら自身の能力とはいえ天変地異規模の力を行使すれば負担も重なっていく。
最早光の空間のと言える亜空間の入口を消して仲間の前にだけいつもの範囲で再度出現させると、ゼノは亜空間のいつもの入口からの亜空間の操作を終えると黄金の輝きを霧散させて意識を手放した。
呼吸や心拍と共に……
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