第128話 ヒーローの背中2

 ネフラスカの住人は人を見た目で判断する、そして見た目が判断の最重要基準だ。

 戦闘が予想される緊急時に仲間達はデブスーツを着ているわけもなく、どれだけ危険を伝えようとも聞く耳持たずに不細工共がくだらない事を大声で話しているから気に入らない。

 ジュディス達の元へ到着したゼノは、彼女と住人の1人から話しを聞いて予想通りだと辟易した。

 何より女住人の何人から熱い視線で見られていたのが気に食わない。


「ジュディス、ラケルを預かってる身でコイツ等を見殺しにするのも憚られる、一度引いて機を見て助けに入るぞ」

『はい』

「おう」


 サリアだけ同じ意味の違う返事をするのはいつもの事。

 5人は合図もなしに一斉に走り出し、ドアを開ける時間がもったいないとサンカイオーに飛び乗った。1人は引き上げられた。

 ミラの運転で空へと登ると亜空間の開かれた入口へと突入していった。1人は落ちないように全員から体を掴まれていた。


 ネフラスカの住人達は咄嗟の行動に対処できず空を飛んだ事に驚き、アレが欲しいと不細工が持つにはもったいないと身分が下の者を使い探させ始めた。

 そして、既にかなり近付いていた魔物の大群に集団パニックを引き起こすのだった。


 △△▽▽◁▷◁▷


「しかし本当によいのですよゼノ、既に私は世界樹ではなく貴方の能力の一部。本体の事など気にせずに自由に生を謳歌すればよいのです」


「世界樹のある近くでなら生活魔法の亜空間から出られるし、未だに本体といってる奴が何を言う。これはお前を口実にした俺の復讐の代替行為だ、フェリシアを苦しめ続けたネフラスカという国がそのフェリシアと仲間達によって滅びから救われる。そして奴等は思い知る、否定したくても仕切れない助かったという事実が、自分達の命として残るのだから。自分達の国は、生き方は、行いは、その何もかもが間違いで歪んでいたと、直視はしたくない、けれど救われてしまった。そうこれは、救国の形を取った復讐なんだ!」


「なんて偽悪的な事を言ってますけど、私はゼノさんの本心をわかってますからね」


「長い付き合いじゃねーけど、オメーは嘘が下手過ぎるってのは知ってるからな」


「ゼノさんを守り、ゼノさんのやりたい事を助ける、それが私の騎士道です」


「そういうのはいいですから、無事に戻って来なさい」


「急に何を言い出したのかと思ったら、仲間を奮い立たせる演説だったんですね、ゼノさんの過去は聞き及んでいますが、内容がキャラに合いませんよ? もっとドシおじさんしてください」


「私のために、ありがどぶごじゃいばずぅ」


「ワシ等夫婦は戦えんからな、ここで武運を祈っとる」


「なくならないようお薬作り続けて待ってるからね」


「……っはぁ、お前等、好き勝手言ってんじゃねえよ。まあいい、既に1度世界と国1つを救ってるんだ、今更国の2・3増えたところでかわらないか。ラケル、ドーガン夫婦はこの中で待機、残る俺以外には魔物を殲滅しつつ一箇所に集めてもらいたい。ミラにはサンカイオーで出てもらう、アレはなぜかほぼ無敵だし手足が生えたみたいな変形するからな」


 一区切りして全員の顔を見回す。

 誰もがそれぞれの決意を秘めた目をして次の言葉をまっていた。


「全員、俺に力を貸してくれ! 必ずこの国を救ってみせるぞ!!」

『オオーッ!!』


 ゼノの振り上げた拳に仲間達も答えた。

 彼等の救国の戦いが再び始まろうとしていた。

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