第85話 亜空間の豪邸3
朝食後は、ゆったり30分以上の食休みを取った。
そもそも彼女達は勘違いをしているが、たまには自分がからかうのも良いかとゼノは何も言わない。
設計図が完成したからと言って、そこから完成した家を想像出来るかは別の資質が必要。
設計図とは別にわざわざイラストを起こしてくれたなら、素人にも理解可能だろうが。
家についての情報が全く入って来ていないゼノは、初めから過度な期待はせずに完成してから感動しようと考えていた。
我慢し切れなくなったサリアに促されて、一行は大工・運命へとサンカイオーに乗りゼノの安全運転で向う。
徒歩の予定だったが、大きな子供に押し切られた形になった。
サンカイオーが大工・運命の前に着陸すると、エンジンを着るより先にサリアが飛び出した。
「ヒャッホーイ!家だ、家だ!豪邸だー!!」
「ちょっとサリア、待ってよ!」
そしてサリアを追い、ミラも駆け出していった。
「二人共まだまだ子供ですねー」
そう言いつつジュディスもゼノがサンカイオーを施錠すると、ゼノの手を引いて早足で建物の中へと入っていった。
「ちょっ、やめ!とめ!手首っ!潰れる。潰れちゃうからー!!」
「大げさですよー。強化と回復の2つの魔法を流してますから、この数倍の力で握ってもヒビすら入りませんからー」
ゼノの訴えは既に先回りされて潰されており、痛む時間を短縮するためには急ぐしかなかった。
ゼノが応接室に入ると来客用の3人掛けのソファーには、中央にサリアが座りその隣にミラが着席していた。
ジュディスはゼノを1人用のソファーに座らせると、自分はサリアの隣のミラの反対側に座った。
そろそろゼノも1人扱いされる事に慣れてきて、なんかもう色々諦めて悟ったといった心境に至っている。
(完成までほぼ毎日、ここで缶詰かー……)
朝から黄昏れていると部屋のドアが開き、ハイパーマッチョエルフのベンソンが入室してきた。
その手に布に覆われた何かを持って。
ベンソンはサリア達の向いに座ると、テーブルに荷物らしき物を置いた。
「待たせたな。こいつが建築予定の豪邸のミニチュア模型だっ!!」
そう言ってソロソロと、覆い被さっていた布を捲っていく。
本人としてはバッと勢いよく投げ捨てたいのかもしれないが。
過去に何かしらやらかしているのか、その手付きは非常におっかなびっくりだ。
『おっ……おおー』
歓声を挙げるタイミングを外された3人娘達だったが、それでも現れた豪邸の模型の完成度の高さに素直に歓声を挙げた。
「掃除は気にしなくて良いって言うからよ、全員の意見を取り入れた小城にしてみたぜ」
ベンソンの言う通り布の下から現れたのは。城壁こそなく小型だが、正しく白亜城と呼ぶに相応しい外観をしていた。
中央には10階建ての城になっていて、旗や見張りは不要なので尖塔はない。
なので城と宮殿が合わさった様な姿と言うのが相応しいだろう。
「こっちは中央城でデカイが、注文にあった離城は家族用に3階建てになっている」
ベンソンが指し示した先には大家族用ですかといった、中央城の3割程度の大きさの小城があった。
それも5つも。
「この模型の凄い所はな、本体と違って左右の留め具を外すとだな」
パチンと2度音を立てて、中央城の留め具が外されていく。
そしてベンソンは、
すると最上階内部が現れたが、そこにも精密な模型として作られていた。
『おおーっ!!』
これにはゼノも感嘆の声を上げてみせた。
その後もベンソンは1階ずつ外して、テーブルに並べて見せた。
そして一つずつ説明しようとした所で。
「アンターッ!さっさとリーダーさん連れてきて、仕事にかかりなー!!」
資材保管庫方向の外から聞こえてきた、妻の言葉にヒッと悲鳴を上げると。
急いで立ち上がり、ゼノを担ぎ上げた。
「そこに置いてある紙に細かな解説があるから、気になるなら読んどいてくれ。今ならまだ、変更効くからよ」
それだけ言い残すと開け放たれたままだった、ドアを潜り抜け……ずに。
窓を空けて飛び降りた。
「アイ!キャン!……ジャーンプ!!」
「あああぁぁぁーーーーーーーーーっ!!ゲフッ……」
この後ベンソンは、地面に正座してパメラに説教され。
職人達はゼノを介抱してから亜空間に入り、銘々作業を開始した。
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