第83話 認めちゃった!
「はぁ〜!?ベッドの下で待ってたぁ?」
目覚めてから、生産人形のラケルと認識の摺り合わせをしていたら。
「はい。以前兵士が言ってましたよ。ヤンデレストーカー女が、ベッドの下に潜り込んでたと。ヤンデレストーカーが何かは分かりませんでしたが。女がベッドの下に潜り込むのは何かの作法かと思い、私も真似て見たのですが……その反応を見るに、どうやら違う様ですね」
常識以前に生活の基本から覚えていく必要があるほど、知識の偏りが酷かった。
(こりゃ、お手上げだわ)
ラケルの現状を認識したゼノは、亜音速の判断で諦めた。
男性型なら自分が教えても良かったが、ラケルは世界樹と同じ姿の女性型。
ここは頼りにな……るであろう、自分の仲間達に任せる事にした。
城での夕食の時間も迫ってきていたので、ラケルを連れて城まで歩く。
失敗した。
生産人形になってもラケルの神性は失われておらず、兵士の1人に見つかってから応援を呼ばれた。
今では手の空いている騎士の大半がゼノとラケルを囲み、10メートル程度の距離を空けて城までの護衛をされている。
そしてどこで聞きつけたのか大量の一般人エルフが、飛行と望遠の魔法を使ってラケルの姿を見ようと集まってきていた。
人々が邪魔で結局、城まで80分弱の時間がかかった。
サンカイオーを使い過ぎて、体が鈍るのを嫌った結果だったのだが……
なんとかして城まで辿り着いたゼノ達。
だが更に城の入口の前にはフレデリック以下王族を含め、城に居た全ての者がラケルを出迎える一幕があった。
ゼノとラケルが世界樹ではないと何度説明しても、フレデリックはいやしかしと聞き入れず。
ついにはキャサリンの命令で近衛騎士が、フレデリックを連行するまで続けられた。
「ごめんなさいね、ゼノさん。うちの人、世界樹様への憧れがかなり強くて……」
「それよりもう、夕食は済ませたのか?母になるんだ、規則正しくしっかり食べないとな」
「ええ、美味しく頂きましたよ。フレデリックだけは落ち着かずに、後で食べるとソワソワしていましたけどね」
その後もキャサリンと少し会話してから分かれ、自室へと戻る。
部屋の前ではミラ、サリア、ジュディスの3人が待っていて、ゼノを迎え……ずにラケルへと駆け寄った。
ラケルは3人のうちの誰かの部屋に連れ込まれて、その日は帰ってくる事はなかった。
なぜだろう。
いつもと同じ自室での1人メシなのに。
どうして今夜はこんなにも、心に海水が溢れているのだろう。
城で出される料理なのでとても丁寧かつ繊細に作られていて、庶民舌のゼノでも毎食とても満足して完食している。
でも何故か今夜だけは、いつもより多くワインを飲んでしまった。
「そーだよなー。やっぱこんなおっさんよりも、新人美女を選ぶよなー……」
食後ベロベロになる寸前のゼノは。
1歩だけ亜空間に入り汚れを吸収させると出て、酔に任せてそのままベッドで就寝した。
翌朝の頭痛を、彼はまだ知らない。
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