第284話 モカの装備


 クライン様の別館にモカとルシィを迎えに行き、私たちはクランハウスに向かった。


 最近、クランの子どもたちが私に冷たい目を向ける。

 これが私には耐えられない。

 だからみんなに子どもたちと遊んでくれるようにお願いした。


「ルシィもみんなと遊んでみる?」

「きゅう……」

 ルシィは今までの従魔の中でもすごく甘えん坊で私の側から離れらがらない。

 エマ様とはとても気が合うみたいで離れてくれるけれど、それ以外は私に張り付いてイヤイヤしている。



「ルーにはまだ早いんじゃない? 

 意地悪な子はいないけど興奮したら、モカを振り回す子もいるし」

 そうなの? 


「ミラやモリーは振り回されてない?」

(だいじょうぶなの。ふりまわされるのはモカおねーちゃんだけなの)


 うん、モカなら大丈夫だけど、ルシィは赤ちゃんだもんね。

「いや、あたしも大丈夫じゃないし」

 モカが何か言っていたが気にしないことにした。


「ルシィは私と一緒にいようか」

「きゅ!」

「じゃあ、私はお部屋にいるから。みんなお願いね」



 夕食後、みんなを子どもたちのいる遊び部屋に入れて、私はハルマさんの描いてくれたモカ用の装備画を取り出した。

 これは異世界にいる大変人気のかわいさ最強生物を模したボディーウェアだ。

 ハルマさんは「これならば間違いない!」と太鼓判を推してくれた。


 それに何かと問題のあるらしいモカのリクエスト装備より動きやすいのは間違いない。

 パフスリーブやフリフリのスカートは本当は動きにくいと思うんだ。


 スピードアップはいるよね。

 モカは格闘技を使うから重いパンチやキックができるとさらにいい。

 それと鞭が握れる柔軟性。

 他は……さてどうするか。



 私はマジックバックの中から錬金窯を取り出した。

 今までは入れてなかったんだけど、グリムリーパー戦で何が突然必要になるかわからないので私のもらった宝物はいつも持ち歩くことにしたのだ。


 私が錬金窯に魔力を注入していると、ルシィが真似して私と同じように窯を触る。

「ルシィもやりたいの?」

「きゅ!」

「うふふ、いいけど中に入るのはダメだよ」

「きゅっ!」


 そうか、ルシィは闇属性。モカの念願のアレをつければいい。


 ベースにするのはボア系だな。皮に強靭さとしなやかさがある。防御力も強化できる。

 それと拳にきき足に一撃必殺の猪突猛進を入れる。

 それからモフモフが命とハルマさんが言ってたので、手触りのよい毛皮の魔獣もいれて、闇属性と風属性をつけたいから魔石を出来るだけ入れて、よし!


「錬成!」


 できた。

 色よし。手触りよし。強さよし。

 私ひとりじゃイマイチの効果だけど、ルシィが手伝ってくれたおかげで付与もしっかり効いている。


 モカ、気に入ってくれるといいなぁ。



 子どもたちが寝る時間になってみんなが部屋に帰ってきた。

「お疲れ様。楽しかった?」

「うん、今日もみんな元気だったよ」

 ドラゴ君が代表して返事して、カバンの中からちょっとお疲れのモカとミラとモリーを取り出した。


 ウトウトしてる3匹を起こすのもかわいそうなので、モカの装備は明日お披露目しよう。


 みんないつもありがとう。

 おやすみなさい。





 朝はいつもの通り、私、ドラゴ君、モリー、ミラ、そのあとルシィで一番最後がモカの順で起きるがモカはまだ起きない。


 装備を見せたいのになかなか起きてくれないので困っていたらドラゴ君が、

「もう着せといたらいいんじゃない?」

 なるほど、それはいい考え。


 それでモカに装備を着せたら確かにハルマさんの言う通り、かわいさ最強生物になった。

「うわぁ、すごいね。よく似合ってるというか別物……」

(ミラとおんなじいろなのー)

 モリーはフルフルゆれて、ルシィはお気に入りのモカのお腹の上でポンポン飛び跳ねた。


 その振動のおかげか、モカが目を覚ました。

 全員でのぞき込んでいたから、ちょっとびっくりさせちゃったみたい。



「何なの? なんでみんなのぞき込んでるの?」

「モカ、鏡見ておいでよ」


 モカは鏡を見る、

「キャアァァアア~!」

 ああ、なかなかの衝撃があったみたい。


「何で? どうしてこうなった? これパンダじゃない!」

「ハルマさんが教えてくれたの。

 異世界で最も人気のあるかわいさ最強生物で嫌いな人はほとんどいないって。

 まさかモカ、そのほとんどいない少数派なの?」


「そりゃ好きか嫌いか言われたら、好きだけど」

「よかったぁ」

「じゃなくて、クマからあんまり変わってないんだけど」

「そうなの。モカは洋服のような装備よりそういう完全に体を覆う装備の方が動きやすいはずよ。動きにくいの?」


 モカは空に拳を何度も突き出して(シャドウボクシングというらしい)確認。

「動きにくくはない」

「よかった。もし顔が出したかったら、口の部分が大きく開くからそこから顔を出して。甲冑ボディーアーマーと一緒よ」



 モカは口の部分を開けて全体をずり上げるとパンダの口からいつものお顔が飛び出した。


「あのね、テディベアとこのパンダってカラーリングが違うくらいで、ほとんど形状が一緒じゃない」

「うん」


それから振り返ってお尻を突き出した。

「しかもね、尻尾が黒いのは間違いなの。パンダの尻尾は白いのよ」

「えっ、でもハルマさんの絵は黒いよ」

「それはね、昔のぬいぐるみは尻尾が黒い方が見栄えがするから黒かったけど、あたしのころはもう白だから。ハルマさん、中がおじさんだから間違ってるのよ!」


「そうなんだ。そこ直せばいいの?」

「うーん、あたしの欲しいのと違うの。かわいいけど、かわいさが違うの」

「どうしよう、気に入らない?」

「出来ればもっとこう、華やかな感じ欲しいなぁ」


「そうなんだ……。

 モカが欲しがってた隠蔽、ルシィと一生懸命つけて結構強めに付与が仕上がったんだけど残念だわ」

「隠蔽ついてるの⁉」

「うん」



 するとモカはブルブルっと小刻みに震えてから、私に飛びついてきた。

「きゃあぁー、エリー愛してるぅ。これでスチル獲得よぉ」

 モカは興奮のあまり、七転八倒しはじめた。

 どうやらさっきの震えは感動のあまりだったようだ。


 モカの動きに合わせて、部屋が振動する。

 それ着てるとパワーアップしてるので、建物を壊さないでください。



 モカが落ち着いたのを見計らって、

「さぁ、朝ごはん食べに行こうよ。私お腹ペコペコ」

 お料理は好きだけど、ルードさんのご飯はまた一味違うのだ。

「「(「「賛成」」」)」」(フルフル、きゅきゅ含む)



 あとで尻尾直すか尋ねたら、

「隠蔽の効果が薄まるのは嫌だから、このままで!」


 モカには悪いけど、ダイナー様はともかくクライン様は計り知れないからきっと見破られると思います。

 でもそれは、今は黙っておこう。


 モカが幸せそうだからね。



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「「(「「賛成」」」)」」の1つが()なのはミランダは心話で伝えたからです。


 ぬいぐるみ装備は超絶有名作品があったことをすっかり忘れていたんですが、クマじゃないから許してくださいね。クマが着てるけどね。

 

 今も黒い尻尾のぬいぐるみパンダさんがいるかもしれませんが、白だとあるかないかわからないから見栄えのためだってテレビのうんちく番組で見ました。

 所説あるやもしれません。


9/13 追記

 今思い出したんですが、VRゲームもので主人公の兄が自分の姿そのまんまでキャラメイキングしたから着ぐるみ装備しか着れないってのもありましたね。

しかもパンダの時あったような……(;゚Д゚)

これもアニメになってた。すみません、忘れてました。


 モカがパンダの装備は、ぬいぐるみみたいな子がぬいぐるみを着ているというのが書きたかっただけです。

 変更はしません。

 完全にオリジナル作品を書こうとはしていませんが(というか元々の内容から出来ないんだけれど)、マネをしようと思ったわけではないのでお許しください。


 でもみんなが真似したくなるような、だれも思いついていない発想で作品を書くことが出来たら、悪役令嬢や死に戻りや駄女神のように次のライトノベルを席捲することが出来るかもしれませんね。

 



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