第114話 グリフォン
指定された場所に向かうと様々なテントが張ってあった。
それぞれ違う市場になるので、名前と番号を確認して入る。
「ベリーニ魔獣店、B-7。ここね」
テントの入り口の布をめくると中は思った以上に広い。このテントはマジックアイテムだ。
中の様子は闘技場のように中央は空いており柵で囲ってある。鑑定すると防御のシールドもかかっている。
「恐れ入りますが、お客様の冒険者カードをご提示ください」
母さんと私がカードを出すと、名簿に書き留めて中に入れてくれた。
ドラゴ君のことは気が付かなかったようだ。
「本日はベリーニ魔獣店にお越しくださりありがとうございます。
まずは今宵の私共の目玉商品をお目に掛けます。こちらは入札のみの販売でございます。入札をご希望のお客様は入札金額を明記の上、こちらの箱にお入れください。
では皆さま、ごゆるりとお楽しみください」
これは魔獣市場でよくやる手法だそうだ。
本当はすべての魔獣をせりに掛けて出来るだけ高く売りさばきたいが、ヒトによって必要な魔獣は違うし、時間拘束を嫌う客もいる。
だから絶対に売りたい強い魔獣だけ派手な演出で見せ物にして売りさばくのだ。
店主が挨拶を済ませると、召喚士が出て地面に魔法陣を転写し始めた。
もちろん私にはここで現れる強い魔獣を買えはしない。
私はこの召喚を見に来たのだ。まだ見ただけではスキルにならないが、見ているのと見ていないのとでは習熟度が違ってくる。
だから『常闇の炎』では秘密でない作業や技術はほとんどすべて見せてもらった。
だけど召喚は見れなかった。
召喚場がない訳ではない。
ただ召喚なんかしなくても、勝手に向こうからやってくるのだ。
仲間になりたいとか、ご飯が食べたいとか、一緒に遊びたいとか、とにかくマスターと親交のある魔獣ならいつでも好きな時に来ていいんだって。
マスターって本当にすごい!魔獣からの信頼が厚いなんて素敵すぎる!
しかもみんなとってもいい子たちなんだ。
いいなぁ~。
あっ、召喚進み始めた。
召喚士が呪文を唱える。
呪文の内容はいい。彼の作る場を見つめる。
周りのざわめきを遮断するように波のない平坦な場を作り上げると彼は魔獣を呼び始めた。
その場をビキッと震えが走る。場が揺れる。
ギャウォーーーーー。
魔獣は応答し、時空の裂け目は大きく広がりそこから魔獣が現れた。
かなり大型のロックリザードだ。
ロックリザードは岩のように固い土属性の魔獣だ。Aに近いBランク推奨ってとこかな。
リザードはトカゲ系の魔獣でかなり強い。成長して知能を持つとリザードマンになるという。
あの硬くて太いしっぽで叩きつけられたら、人間なんか簡単に死ぬ。
おお、火を吐いた。
竜種のブレスとまではいかないようだが、結構な威力だ。
大きいから餌代は食うけれど、使いようによっては確実な戦力になる。
次はヘルハウンド。闇属性の猟犬の魔獣だ。Aランクパーティー推奨だが群れをなしてないとそこまでではない。
基本的に群れで行動するが、闇夜に溶け込んで潜伏し、敵に罠を掛けて仕留める狡猾な魔獣と魔獣辞典には書かれている。
犬の本能なのか主と認められると絶対の服従をするんだ。
『常闇の炎』にも群れでいて、隠れた敵を追い詰めるときに役立っているそうだ。
1匹1匹は大きいけれど、みんな優しい子達で私は好きだ。
最後がグリフォン。獅子の体に鷹の頭と翼のある魔獣だ。
周りの人たちも驚きで騒めく。
すごい!本物のAランク以上できればSランク推奨の高位魔獣だ。
ここの召喚士さん、本当に能力があるんだな。
あれ?なんかあのグリフォン、ずっとこっち見てるな。
ドラゴ君のこと、気が付いたのかな?
膝の上のドラゴ君にそっと小声で聞く。
「ねぇ、あのグリフォン、ドラゴ君のこと気が付いたのかな?」
「うん」
「買えないからね」
「買わなくていいよ。ぼくと戦いたいみたい」
「でも召喚士に捕まるくらいなんでしょ」
「寝てるところを不意打ちだったみたいだよ。不本意なんだ。あれは買っても手こずるね」
「それいつ聞いたの?」
「ん?心話」
なるほどー。高位魔獣同士はそういうことができるのね。
結局私たちは入札には加わらなかった。
「それでは個別に魔獣をご覧いただきましょう。どうぞこちらにいらしてください」
次のテントに案内されるとそこには様々な魔獣が檻の中に閉じ込められていた。
人気の魔獣は騎獣にもなる大型のものだ。
私もそういう魔獣を探しているが人気があるので、お値段も張る。
子供だとなおさらだ。子供の方が慣れてくれやすいから。
子どもの方が奴隷にしやすいのと一緒だな。
なんだか魔獣を力で縛ることは嫌なことなんじゃないだろうか。
ピンとくる子はいなかったがその方がよかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。