第三章
第42話 合格しました
ビリーのおかげでエヴァンズ魔法学校の入試に間に合い、無事合格いたしました。
パチパチ拍手~
一応、3位だったので多少奨学金が出るそうです。
あー良かった。もうちょっとで薬師学校へ行かないといけないところだった。ローザリア嬢も学院に合格していたし、これで当分会わなくて済む。
なんでずっとじゃないのかって?
実はエヴァンズで錬金術科が廃止されることになったから。理由は生徒数の低下。猶予期間は1年。だから今年はギリギリ入学できた。
学校は5年間の就学期間のうちの2年が予科で一般教養と次の専科に移る準備期間、次の3年が専科で自分の専門の学科を受講するんだ。
一般の生徒はここで終わるが、高度な能力のある生徒と認められると賢人の塔に入り学術研究に勤しむこともある。私はクランに早く入りたいから行かないけど。
それで3年生になったら私は学院の方へ通学しないといけないのだ。といっても歩いて5分ぐらいだけど。
もっとも実技が多いため、授業で他の科の生徒と絡むことはほぼないらしい。
しいていうならダンジョン攻略だけどパーティーもエヴァンズのままでいいらしいので会わない可能性の方が多い。
ただ社交が多いんだよね。学院は。
まさに婚活(これハルマ用語です)のためのエリート学校。
錬金術科がどのくらいこれに参加しないといけないのかわからないけど。
まだ先の話だし、いいか。社交の事は。
ついでに言うと専科は4学部2科あり騎士学部・文官学部・魔法士学部・家政学部・社交科・領地運営科になる。
騎士学部は言わずと知れた騎士を育てる学部で、兵学科と音学科に分かれる。
兵学科は実戦で戦える能力と作戦を立てて兵を指揮する能力を兼ね備えた騎士を育成する科。音学科は戦闘能力を兼ね備えつつ、公式パレードや舞踏会で音楽を演奏する騎士を育成する科だ。
合同演習として実際の騎士と一緒に魔獣討伐も行う大変行動的な学部である。
ここで超優秀な成績を残したものだけが近衛騎士に推薦されるのだ。
文官学部は行政学科と経済学科に分かれる。
行政学部は法律を学んで司法や立法、外交などの分野で活躍する人材育成する科。経済学科は国の収入や支出について学び、実際に事業を起こして経済発展させる人物を育成する科で、こちらも合同で模擬訓練を行う。
成績優秀者は王宮で働くことになる。
魔法士学部は魔法戦闘部と魔法生産部に分かれる。基本的に魔力が強いものが多いのでダンジョン攻略が必修になる。
魔法戦闘部は攻撃魔法を使用した戦闘訓練を受けるところで騎士学部との合同訓練が多い。
魔法生産部は魔法を使って生産を行う人材育成の場でここに錬金術科も入るんだ。薬学、鍛冶、魔道具研究などいろいろあるけど、錬金術科はこれをすべて履修しなくてはならない。その上でさらに上級錬金術学というものがあり、この教科がエヴァンズでは廃止された。ここまで進学出来る生徒が少ないから先生が学院の方に行ってしまったのだ。
今までの学院の錬金術科専攻希望生徒が25名、エヴァンズ25名で計50名のうち、錬金術師になれるのが15名前後、少ない時は10名というありさまなのだ。
錬金術科を履修しても一部でも合格できなかったら上級錬金術学に進めない。
去年、エヴァンズで上級錬金術学に上がれたのが3名、卒業0名である。
うん、これはなくなる。
この話は王都では有名らしく、今年の錬金術科志望の生徒でエヴァンズに入った人は6人しかいない。知っていたとしても私はエヴァンズしか受けていないのでどうしようもないのだけど。
ちなみに今年の学院の錬金術科専攻希望生徒が45名で定員25名のところ今回は学科廃止のため特別に入学が認められたんだそうだ。来年から学院50人入学なのかな?その辺はわからない。
教え方が悪いのでは?という疑問もわくだろうが、教えている内容はほぼ一緒だ。
エヴァンズでは設備などは古いものの錬金術科は創立当初からあって大変力を入れている学科だったのだ。
ではなぜダメなのか?
それは現在エヴァンズが学院のすべり止め学校になっていて学力、魔力が落ちているのだ。
学院の方が学費全額免除の奨学金が出ることもあって人気があるし、就職先にも人脈作りにも有利だから、エヴァンズの人気がなくなってきているのだ。
昔は自由な校風が好まれていたのにとても残念だ。
ああ、忘れていた。他の学科ね。
家政学部は、家令執事科・侍女メイド科・コック科があり、上に立って指揮する方法と共に実践的な技術を学びそれを極めていく学科だ。そして試験に合格したものだけ、社交科で企画された催しのサービスを行うこと出来る。ここで認められると王宮や貴族の屋敷での就職が有利になる。
授業で就活(ハルマ用語です)出来るなんて楽でいいね。
社交科と領地運営科は別名貴族学部ともいわれていて、実はこれも学院だけでエヴァンズにはない。
社交科も令嬢科と言われていて、お茶会やパーティー、慈善事業、晩さん会など、貴族の令嬢が自分たちで企画し実行する方法を実践的に学ぶところで、この学科のせいでバカ高いドレスが大量に必要になるのだ。
つまり彼女たちが他の学科の生徒をお招きするのだ。しかもお招きされたら、招き返さないといけないらしい。なんでお嬢様方のお付き合いに付き合ってこっちもお金使わないといけないのか正直理解できない。
ただし授業や労働が入っていたら、お断りが可能である。私は全時間授業を入れるので、卒業単位分以外は全部断ってやる。フフフ。
領地運営科は領地運営に携わる人が入る、つまりあととりのご子息が学ぶところだ。こちらは社交科にお招きがあったら授業免除なんだって。
何しに学校来てるんだろう。ああ、婚活か。
13歳で社交界にもデビューして、15歳で婚約して20歳までに結婚し、跡継ぎを作る。お貴族様は本当に大変だ。
あと2週間で学校だから、いろいろ準備しないとね。
学校の寮はまだ1週間ほど入居出来ないので、今は常闇の炎のクランハウスに仮契約で滞在している。
ビリーは私にクランに来るかと誘ってくれてとてもとても入りたかった。
でも学校法で学生の間に就職してはいけないという決まりがあり、クランに所属するのも就職と認識されるのだ。残念……。
後援者という形で多少の囲い込みがあるにせよ、国から優秀な人材としてほしいと言われれば、優先的に国に就職することになる。
だからその前に仮契約は出来ても正式契約は無理なのである。
ちなみに国で働く期間は借金(学費などの立て替え)の金額にもよるが、まったくなければ3年で好きなところへ働きに行ける。ここで働いたのち、好きなところへ就職できるのだ。
私にはお金があるのでかなり有利だ。ありがとう、ダンマス。
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