第85話 合流を目指して

「……成る程。奴らはまだ、この世界を諦めていなかったか」


 私がこれまでのいきさつを話すと、ひいおじいちゃまは苦々しげにそう言った。立ちっ放しは体力を消耗するので、一旦二人ともこの場に腰を下ろしている。

 三つ目の秘密の冒険、異神との最初の戦いについてだけは、サークは詳しい話を語らなかった。私が知っているのはサークやひいおじいちゃま達が異神を元の世界に追い返した事、そして――その際に、エルナータという仲間が一人死んだ事。

 きっと、とても苦しい戦いだったんだろうと思う。詳しい事を、思い出したくないほどに……。


「話は解った。そういう事ならば、僕もお前が元の時代に帰る為の協力を惜しまない」

「……! ありがとう、ひいおじいちゃま!」

「そのひいおじいちゃまというのはよせ。まだ子供どころか妻すらいないのに、妙な気分になる」

「じゃあ……クラウスさん?」

「出来ればそれで頼む」


 ひいおじいちゃま、改めクラウスさんは、そう言って私の言葉に小さく頷き返す。確かにまだこんなに若いのに、ひいおじいちゃまって呼んだら不自然だよね……。


「それじゃあクラウスさん、私、まずは何をしたらいいかな?」

「そうだな、まずはサークとの合流を手伝ってくれ。罠にかかって離ればなれになってしまってな」

「あっ……」


 言われて気が付いた。そういえばサークとクラウスさんは、世界を救った後も一緒に旅をしてたんだった。

 という事は、昔のサークに会うかもしれないって事? うぅ、それ、何だか凄く緊張する……。


「ここの遺跡は魔物が多い。どうやら外部から侵入した魔物が、ここを巣にしたようなのだ。戦力が増えれば、こちらとしてもありがたい」

「でも、私、ぎょくが……」

「僕の小手を貸す。今まで使っていたのなら、使い慣れている筈だろう?」

「わ、解った……。少しの間、お借りします!」


 クラウスさんが外した小手を、空いた左手に付ける。私の小手と同じものだから当たり前なんだけど、それは、私の手に酷くしっくりと馴染んだ。


「前衛は任せる。僕の魔法に巻き込まれるなよ」

「うん!」


 そうして私達は立ち上がり、通路の先へと歩き出した。

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