第84話 一触即発!?
ど、どうしてこんな事になっちゃったの!? 何で私がひいおじいちゃまの時代にいるの!?
私ただ、普通に寝てただけの筈なのに……。ほっぺたつねって痛かったから夢ではないしーっ!
「……何だ、急に顔色を変えて。何を考えている?」
あまりの急展開に目を白黒させる私に、ひいおじいちゃまは眉間の皺を深め、再び杖をこっちに向ける。その姿を見て、私はハッと我に返った。
ま、不味い……。このままじゃ元の時代に帰るどころか、この場でひいおじいちゃまに始末されちゃう!
でも、どうやってひいおじいちゃまを説得したらいいの!? 一旦誤魔化そうにも、ひいおじいちゃまの現役時代の事なんてひいおじいちゃまの冒険譚しか知らないし!
サークやひいおばあちゃまの話ではひいおじいちゃまはとても頭の切れる人だったって言うから、下手な誤魔化し方なんてしたらすぐにバレて、余計に私の立場が悪くなるだけだ。まさかこんな形で、絶体絶命の危機に陥るなんて……!
(……!)
その時だった。私の脳裏に、一つのアイデアが閃いたのは。
下手な嘘は、きっとひいおじいちゃまには通じない。なら……いっその事、本当の事を洗いざらい喋るっていうのはどうだろう?
さっきだって気が付いたらここにいたって正直に言ったら解ってくれたもの。……もう、これに賭けるしかない!
「わ、私……未来から来たあなたの曾孫なの!」
「……は?」
私の突然の告白に、ひいおじいちゃまが「何言ってんだコイツ」って顔になる。それでも負けずに、私は畳み掛けた。
「何でか解らないけど、私、未来からこの時代に来ちゃったの! 今頼れる人はあなたしか、ひいおじいちゃましかいないの!」
「……いくら何でも荒唐無稽が過ぎるな。さてはここにいた理由も嘘か」
必死になって訴えるけど、ひいおじいちゃまはますます疑いを深めるばかり。うぅ、口で言うだけじゃ駄目だ……何か確かな証拠を……そうだ!
「これ! この小手を見て!」
私は右手に嵌めたままの、今ひいおじいちゃまも身に付けている小手を、ひいおじいちゃまに見せつけた。ひいおじいちゃまの眉が、初めて驚いたようにピクリと跳ねる。
「それは……」
「これはひいおじいちゃまから受け継いだ小手! 今ひいおじいちゃまが付けてるのと、全く同じものだよ!」
ひいおじいちゃまが、自分の小手と私の小手とを見比べる。その目はさっきまでと違って、僅かに迷いに揺れていた。
「何なら、この小手に弱い魔法を撃って確かめてみて! 例え模様は真似出来たって、ミスリル製ってとこまでは真似出来ない筈だよ!」
「これがミスリルで出来ている事を知っている……。本当に……お前は、僕の曾孫なのか……?」
「信じて、ひいおじいちゃま!」
私の視線とひいおじいちゃまの視線が、真正面からぶつかる。どのくらい二人で黙って見つめ合っていただろう、ひいおじいちゃまが不意に、険しかった表情を和らげた。
「そうか……という事は……僕はいつかまた、あいつと出会えるんだな……」
「ひいおじいちゃま……?」
呟かれた言葉の意味が解らずに、私は思わず目を瞬かせる。そうしていると、ひいおじいちゃまは杖の先端を下げ、真面目だけど険しくはない表情で言った。
「こうなるに至った経緯を教えろ。手短に、かつ正確にだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます