第36話 オーク殲滅戦

「最初から全開でいくよ! 『我が内に眠る力よ、爆炎に変わりてこの身に宿れ』!」


 両手に炎を纏わせ、テオドラの元へ急ぐ。テオドラは既に、二匹のオークと一戦交えていた。


「はああああっ! 『炎の拳ブレイズ・ナックル』!」


 そこに割って入り、横合いからテオドラを貫こうとした一匹のオークの顔を思い切り殴り付ける。殴られたオークは全身を炎に包まれ、あっという間に絶命した。


「クーナちゃん!」

「遅れてごめんね、テオドラ!」

「ヒ、ヒイッ!」


 仲間の呆気ない死を目にしたもう一匹のオークが、こっちに背を向けて逃げようとする。その背にテオドラが、素早く戦斧の一撃を放った。


「逃がさないよ!」

「ギャアアッ!」


 着ていた革鎧ごと背中を切り裂かれ、オークが倒れた。その悲鳴を聞いて、他のオーク達が次々と建っている小屋の中から飛び出してくる。


「ま、まだこんなにいるの!?」

「多い時は五十匹ぐらいと戦う事になるからね。これならまだ何とかなる方!」

「ハア!? この世界ってどうなってるの!?」


 叫んでからハッと口に手をやったテオドラに、テオドラが別の世界の人間だという疑惑は確信に変わる。けど、それを問い詰めるのは後だ。

 今はこの場を切り抜けて――テオドラの妹さんを助ける事だけを考える!


「クーナ、目を閉じろ!」


 不意に響く、サークの声。私はすぐに手から炎を消してテオドラの視界を塞ぎ、自分も固く目を閉じた。

 直後、激しい光の奔流が瞼の裏で弾ける。この光には覚えがある。光の精霊の力を借りた、サークの目眩ましだ。


「な、何!? 何が起きたの!?」


 私の手に目を塞がれたテオドラには、何が起きたか解ってないみたい。光が治まるのを待って、私はテオドラの目隠しを外すと同時に目を開けた。


「グウウゥ……」


 視界に、目を押さえて悶え苦しんでいるオーク達の姿が映る。そして隣を見ると、目眩ましの間に移動してきていたらしいサークが曲刀を手に立っていた。


「全く……同じように無策で突っ込んでく奴があるか」

「ごめん、助かった!」

「え? え? 何でオークが苦しんでるの?」


 辺りの様子を見たテオドラが戸惑ってるけど、いちいち説明してる暇はない。オーク達が動けないでいるうちに、一匹でも多く倒さなくちゃ!


「一気にいくぞ。遅れるなよ!」

「うん! 『我が内に眠る力よ、爆炎に変わりてこの身に宿れ』!」

「よ、よく解らないけどボクも行くよ!」


 そして私達は、三方に散らばって殲滅戦を開始した。

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