あとがき

あとがき

 初めまして。押田グレンと申します。

 まずはこちらのあとがきを読んでくださっている皆様に感謝の意を申し上げたいと思います。

 「マイナー・アド・ナインス」を最後までお読みいただき、ありがとうございます。


 本作品は私が初めて書いた小説となります。

 この作品について語ると共に、少しだけ私、押田の身の上話もさせていただけたらと思います。


 私は大学で国文学を学び、芥川龍之介の作品をテーマに卒業論文を書きました。小さい頃から読書が好きで、特に近代純文学の魅力に惹き込まれています。しかし、私自身には文才といったものがまるでなく、小説を書くことは一生ないだろうと思っていました。文学を学んだにも関わらず、就職したのは電気機器メーカーで、現在もこの会社で企画の業務を行っています。


 そんな私に小説を書こう、という気持ちを与えてくれたのは、自身の海外赴任でした。本作品の執筆は、すべて赴任先のロンドンで行いました。

 自ら希望していたにも関わらず、私は今、躓いています。毎日襲い掛かる不安と焦り、自分への失望と今後に対する絶望の中、何とか無理やり生きているといった状態にあります。施設を飛び出した時のニコと同じように、自分が分からない、死んでしまいたい、といった感覚に陥っています。これは自らの精神の脆さに気づいていながら、誰かを頼る勇気も労力も、一人で踏ん張る気力もない私への罰であると感じます。

 そこで、自分自身へのエール、或いは消えてしまう前の最期のメッセージとして、本作品の執筆に至りました。作中でもイギリス、ロンドンという地名がたくさん出て来ますが、私はこのロンドンという地で本作品を執筆出来たことを、誇りに思います。

 私がその手段に、音楽でも歌でもなく、写真でも絵でもなく、小説という方法を選んだのは、日本語という素晴らしく美しい言語を心から愛しているからであると思っています。


 本作品は、感情豊かで天真爛漫な中学生のニコと、表情なく無口なキリという正反対な二人のお話となっています。執筆する上でこの二人には、非常に振り回されました。初めは第三者的視点で書き始めたのですが、感情を外に出さないキリが心を開いてくれずに断念しました。そこで仕方なくニコ目線で書くことにしましたが、今度はニコがいろいろ勝手に決めつけて思い込みをしてしまうため、結局苦戦することとなりました。

 もしかしたらニコはまだ、本人が気づいていない思い込みをしているかもしれません。


 また、作中でキリが罹患しているスキルス性胃がんについて、誤解なきようお話させていただきます。スキルス性胃がんは、決して治らない病ではありません。治療を行えば治る可能性が充分にある病気です。キリが病院に行くのを拒否しているのでご察しのことと思いますが、彼は自らの意志で治療をすることを止めています。その理由は、今後私がこのままずるずると生き残り、キリ目線でのアナザーストーリーを書く気力が出て来た時のために、ここには書かないこととさせてください。キリには「お前は馬鹿か。俺は、やらねえよ」と言われてしまいそうではありますが。


 そして、本作品名の「マイナー・アド・ナインス」ですが、これはギターのコードです。その響きは非常に哀愁深く、この作品にぴったりだと思い命名しました。もし興味がある方がいらっしゃれば、一度聞いてみていただきたいと思います。


 まだ書きたいことは山ほどありますが、本作品を書き終えてこのあとがきを書いている現在、第一話すら公開しておらず、どれだけの方にこの作品を受け入れていただけるのか未知数ですので、この辺にさせていただこうと思います。

 今の私が言えることではないのかもしれませんが、もしこの作品を読んでくださった方の中に死にたい、と思っている方がいらっしゃれば、ぜひ死にたくなくなるまで生きてみて欲しいと心から思っています。


 末筆となりますが、最後に重ねてお礼申し上げます。

 「マイナー・アド・ナインス」をお読みいただき、キリとニコを愛していただき、本当にありがとうございました。

 皆様の心のほんの片隅に、少しだけでも、この作品が残ってくれることを祈っております。



二〇一九年九月十二日

押田グレン

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マイナー・アド・ナインス 押田グレン @glen121

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