ショタっ娘のお祭りデビュー(4)

「はい、いらっしゃい! どれでも一枚二百円だよっ」


「え。こんなに大きくて二百円なんですか!?」


「そうだよお嬢ちゃん。好きなソースを使って、絵を描いて楽しんでいかないかい?」


「お嬢……」


 せっかく男ものの浴衣を着てやって来たのに、それでも尚、女の子と間違えられたミオは、思わず言葉を失ってしまった。


「ミ、ミオ。せっかくだからお絵描きしていこう! 二種類のソースが選べるよ!」


「……え? 二種類?」


「そう。普通の甘辛いソースと、チョコソースから好きな方を使って、せんべいに絵を描けるんだ」


「あ! だから〝お絵描き〟せんべいなんだね」


 しばらく放心状態だったミオは、俺の言葉が耳に届いた途端、瞬時にお絵描きせんべいの意味を理解したようである。


 その様子から察するに、さっきのおじさんによる説明は、どうやら、「お嬢ちゃん」の一言で全て右から左へと流れてしまったらしい。


「いい機会だから実際にやってみよう。すみません、二枚くださーい」


「はいよ、毎度あり!」


 俺たちは屋台のおじさんから、それぞれ透明なビニール袋に入ったせんべいを受け取り、ソースのボトルが置かれたテーブルへと向かう。


 そこではすでに、先客の子供たちが思い思いの絵を描き、お互いに見せ合いっこしていた。


「よーし。俺は普通のソースでやるかなぁ」


「じゃあボクは、チョコソースでお絵描きするー」


 ちなみにお絵描きのキャンバスとなるせんべいは、厚みこそ一円玉くらいしか無いものの、とにかく大判で、ほぼ円形を保っている。


 この上に、好きなソースを好きなだけかけていいというのだから、なかなか太っ腹だと思う。


 果たしてこのお店は利益が出ているのか? という心配が一瞬よぎりはしたが、これは余分な心配だな。そもそも商売として出店しているのだから、少なくとも、赤字になるような商売はしないだろう。


「さて、何を描こうかな?」


「ボクはお兄ちゃんを描くよー」


「お、いいね。それじゃあお互いの似顔絵を描いてみよっか」


「うん! 楽しみにしててね」

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