夏祭りに備えて(6)

「ところでミオ。今も、そのショーツを穿いてるの?」


「そだよ。見るー?」


 サラダを食べていたミオが容器にフォークを置くと、何のためらいもなく立ち上がり、ルームウェアのズボンに手をかけた。


「わーっ! 待った待った!」


「え、何ー?」


「分かったから。見せなくてもいいから」


「どして?」


「いや、『どして?』って言われてもさぁ……ミオ、人前で下着を見せようとしてるんだぞ? もうちょっと警戒しないと」


「だってぇ。大好きなお兄ちゃんになら、見られても嫌じゃないんだもん」


 うう、何て嬉しい言葉なんだ。ただの無警戒かと思ったら、相手が俺だからショーツのお披露目をしてくれるだなんて。


 しかし、ここで遠慮なく見せてもらったら、俺はショタコンに加えて、スケベなお兄ちゃんの烙印を押されてしまう。


 ショタコンなのはもう諦めるとして、ミオの事をいやらしい目で見るのだけはご法度だ。


 俺にだけ気を許しているのをいい事に、その特権を利用して我欲を満たすなど言語道断。


 あくまで俺はミオの里親という大切な立場であるのだから、よほどの不可抗力でもない限り、ミオのショーツ姿を直視するのは避けなければならない。


 ……いや待てよ。そういう考え方こそが、ミオの事をやらしい目で見ている証拠なのかも知れないな。


 我が子が下着姿になっているのを見て、興奮する親がどこにいようか。


 世間は広いから、中にはそういう本物の変態もいるのだろうが、あくまで親目線として見れば、何ら意識する事は無いはずだ。


 ただ、だからと言って、この場でモロにズボンを下ろして見せてもらおうというのも、ちょっと違う気がするんだよな。


 何より今は朝飯の最中だし。


「なぁミオ。今日はデパートにお出かけするだろ?」


「うん」


「ショーツはさ、その出かける前の着替えの時に、ほんのちょっと見せてくれるだけでいいから」


「ほんのちょっとって、どれくらい?」


「そうだな。例えば、上のリボンの部分だけとか」


「えー? それだけじゃどんなの穿いてるか分かんないよ。お兄ちゃん」


「うん。まぁ、そうなんだけどさ」


 まいったなぁ、俺なりに精一杯の妥協案を出したつもりだったんだけど、ミオとしては、何としてもショーツの全貌を見せたいらしい。


 何で日曜の朝っぱらから、こうまで情欲をかきたてられそうな話題に発展してしまったのか。


 それもこれも、ミオが性別を超えた魅惑的なショタっ娘であるせいだ。


 これが普通の男の子相手なら、「あぁ、今はボクサーパンツが主流だもんなぁ」くらいの軽い会話で済んだだろうに。

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