さらば、リゾートホテル(4)

「それじゃ帰るか。レニィ君たちの部屋は何階なの? そこまで送るよ」


「あの、四階なんですけど……そこまでしていただいたら申し訳ないです!」


「えー? いいじゃん。ボクたちのすぐ下の階だから、そんなに大変じゃないよ」


 そう、俺たちの泊まっている客室は真上の五階にあるし、三つもあるエレベーターのどれかに乗れれば移動もすぐなので、全く面倒ではない。


「レニィ、せっかくだから送ってもらおうよ。それなら、部屋に帰るまでにもっとお話できるでしょ?」


 弟のユニィ君にも説得され、少し考えた後、レニィ君は顔を上げて答えた。


「うん、そうだね。それじゃ、お言葉に甘えます。柚月さん、未央さん、僕たちを送ってください!」


「了解。最後までエスコートするよ」


 元来、この〝エスコート〟という言葉は、もっぱら男性が女性を送り届ける時に使うんだけど、まぁ相手がショタっ娘のレニィ君たちなら、まんざら間違った使い方でもないだろう。


 俺たちはサービスで提供してもらった麦茶のグラスを返却し、エレベーターへと向かった。


 このホテルの三つあるエレベーターは、いずれかの呼び出しボタンを押すと、三つのうち、最も近く、現在稼働していないエレベーターが到着するシステムになっている。


 便利で親切な機能だよなぁ、しかも昇降速度も早いから、地階から最上階まであっという間らしいし。


「レニィ君たちのお父さんたちは、今もお仕事してるの?」


 ミオがエレベーター待ちの間、如月兄弟の両親について尋ねる。


 それは俺も気になってたんだよな。


 いかにご両親が考古学者で、ホテルに仕事を持ち込むほどお忙しいご身分だとは言っても、さすがにこの時間まで根を詰めて働いているとは考えにくい。


「えっと。たぶん今頃は、パパもママも、お部屋でゆっくり休んでいると思います」


「そうなんだ。じゃ、お仕事は終わったのかな」


「それが、ぼくたちがカラオケに連れて行ってもらう事が決まってから、パパがちょっとしょんぼりしちゃってね」


「え。しょんぼり?」


「そう。ママが言うには、パパは忙しさにかまけて、ぼくたちの事をほったらかしにし過ぎたから反省してるらしいよ。だから、もうホテルでお仕事はしないと決めたんだって」


「ふーん。でも、こんな時間だから、今日はもうどこにも遊びに連れて行ってもらえないよねー」


 若干トゲのある言い方のように聞こえるかも知れないが、ミオの言っている事は何ら間違ってはいない。


 只今の時刻は夜の十時四十五分、ちょい過ぎ。


 今から家族の時間を取り戻そうにも、こんな遅くではホテル内外の施設はことごとく閉まっているし、それ以前にまず、そろそろこの子たちがになる頃でもあるだろうから。

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