夜遊びの約束(6)

「じゃあご両親の事は、レニィ君に任せるよ。俺たちは見晴らしのいい部屋を押さえておくから」


「ありがとうございます。楽しみにしていますね!」


「へへっ。何歌おっかなぁー」


 ユニィ君は上機嫌な様子で、自分が歌いたいのであろう曲を、鼻歌で口ずさんでいる。


「よし! 話もまとまったし、この場はお開きにしよう。みんなもお腹が空いただろうし、しっかり晩ご飯を食べなくちゃね」


「うん。カツオいっぱい食べるのー」


「柚月さん、未央さん、ごちそうさまでした。またお話できて楽しかったです」


「クリームソーダ、最高においしかったッス。じゃ、またカラオケルームで!」


 会計を済ませた俺たちはロビーラウンジの出口で別れ、各々の客室に戻った。


 この後は晩ご飯のディナーバイキングを堪能してから、カラオケルームに直行して如月兄弟を待つ予定なので、いろいろと下準備をする必要がある。


 ディナーの食事券は、ちゃんと二枚あるからOK。


 お次は、カラオケルームの利用料金を支払うためのお金がちゃんとあるか、財布の中身をチェックだ。


 うん。問題なし。


 ちなみに、このホテルのカラオケルームは、部屋ごとに料金が分かれている。


 歌うメンツは俺とミオ、如月兄弟の四人だけなので、一番小さな五人用の部屋を使わせてもらうつもりなのだが、これが二時間・ワンドリンク制で四千円との事。


 リゾートホテルの施設にしては割安だよなぁ、二時間みっちり歌えて、しかも飲み物まで付いてるんだから。


 たぶん、ルームサービスで頼める軽食やアルコール類なんかで利益を得ているんだろうけど、今回は晩ご飯を食べた後だから必要ないな。


 そんな心配より、今やる事でもっとも大切なのが、歌う部屋の確保だ。


 客室にある内線電話を使ってフロントへ繋ぎ、五人用の部屋の予約を取ってもらっておく。


 大きなホテルで宿泊客も多いから、もしかすると満室になっているかも……と心配していたが、今日は割と空きがあるそうなので、外の景色も楽しめるいい部屋を押さえてもらった。


 利用時間は、八時半から十時半までの二時間。


 ミオを始めとする子供たちにとって、夜の十時半までカラオケするのは、ちょっとばかり夜遊びが過ぎるかも知れない。


 ただ、保護者として大人の俺が付いているし、旅先での、あくまで安全な館内施設でのお遊びだから、これくらいはまぁ許容範囲だと思う。


 さすがに日付が変わるまで遊んでいたら、大目玉を食らうだろうけど。


「レニィ君たちが双子だとは思ってなかったから、最初に見た時驚いちゃった」


 うーんと伸びをしながら、ミオが先ほどまで話をしていた、如月兄弟の印象を語る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る