初めての魚釣り(7)
サビキ釣りをする場合、カゴに寄せエサを詰めて、疑似餌付きの針ごと海中に落とし込んで散らすのだが、その寄せエサにはアミエビを使うのが一般的だ。
アミエビというのは俗称で、本来の名称はアキアミというらしい。成体でも体長二、三センチほどの極めて小さなエビなので、寄せエサとして購入する時は大体キロ単位になる。
近年では、手を汚したくない女性でも取り扱いがしやすい、チューブ型のアミエビも置いてある。
俺たちがやって来た海釣り公園では、サビキ釣りの主力として売られていたのは二キログラムのアミエビだった。
解凍したアミエビのブロックを袋に詰め、さらに防臭と、持ち運びをしやすくするために、取っ手のついたプラスチック製のケースに収納しているタイプである。
そのケースには、仕掛けのカゴにアミエビを詰めるためのスプーンも付属しているので、極力手を汚さずに魚釣りが楽しめる。
そういう気配りを利かせてあるから、この海釣り公園はファミリー層やカップルにも人気があるのだろう。
「アジはまだかなー」
仕掛けを海に沈め、竿を上下に動かしながら、ミオがアジの到来を待つ。
「うーん。どうやらアジは、
「潮?」
「そう。海水には満ち引きがあってね、満ちている時は
「それってどう違うの?」
「満潮の時は
「なるほどー、じゃあ満潮になったら今よりも水が増えるんだね」
「そういう事。問題は、この海釣り公園周辺が満潮になるまで、あとどのくらいかかるのかなんだけど……」
そう言って俺は腕時計を見た。現在の時刻は、午前九時四十七分。
事前にネットで調べた潮位データによると、ここが満潮を迎えるのはあと一時間ちょっと先なので、もうしばらくは回遊待ちをする必要がありそうだ。
この際アジでなくてもいいから、今すぐにでも何か釣れてほしい。そうすれば、ミオにも退屈な思いをさせなくて済むのに。
「ねぇお兄ちゃん」
「ん?」
「お兄ちゃんは、ここには何回か来たことあるの?」
「うん、あるよ。と言っても一度っきりだけどね」
「ふーん……」
ミオが竿をブラブラと揺らしながら、ジト目で俺の顔を見つめる。
「な、何だよー」
「じゃあお兄ちゃん、ボク以外の人とデートした事あるんだ?」
「うっ。それは……」
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