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いくら注意しても、ジョーンズはアリッサムを見つめている。アリッサムもジョーンズに視線を向けニコリと笑った。
これは、なんだ。
朝っぱらから、二人が視線を絡ませイチャイチャしている。
ジョーンズの下心は、手に取るようにわかるが、アリッサムの気持ちはどうなんだよ。
まさか……
アリッサムが俺にキスを迫らなくなったのは、ジョーンズと付き合っているから!?
「アリッサム、前髪になにかついてるよ」
ジョーンズがアリッサムの金色の髪に触れた。
上目遣いでジョーンズを見上げたアリッサム。そんな視線をジョーンズに向けるんじゃない。男という生き物は、その目に弱いんだ。
上目遣いで見つめられたら、自分に気があると勘違いする生き物なんだ。
ジンジャーの弟なのに、そんなこともわからないのか。
ああ、イライラする。
他の生徒もいるのに、俺の視界には二人しか映らない。
熱を放つジョーンズの視線に、思わずチョークを持つ手が震えた。
あ、あいつ……
もしもアリッサムに手を出したら許さないからな。
「クリスマスのダンスパーティーの役員を二名決めます。立候補者はいますか? 男子二人でも、女子二人でも構わないよ」
さっきまでざわついていた教室が、水を打ったように静まりかえった。
当然だ。彼らは華やかな表舞台は好むが、裏方は好まない。
その時、ジョーンズがスッと手を上げた。
「ジョンソン先生、俺、やります」
「ジョーンズさんが? そうか、じゃあもう一人誰かいないか?」
「ジョンソン先生、アダムスミスさんを推薦します」
「えっ? アダムスミスさん? 他に立候補はいないのか?」
俺は教室を見渡す。全員下を向き、俺から視線を逸らした。
「ジョンソン先生、アダムスミスさんを推薦します。アリッサム、いいだろう? 一緒にやろうよ」
ジョーンズはアリッサムを見つめて、魅惑的な視線で誘う。アリッサムはその視線に応えるように、手を上げた。
「ジョンソン先生、ボクがやります」
アリッサムと視線が重なり、思わずドキッとした。
もしかしたら、自分が思っているよりも重症なのかもしれない。
クリスマスのダンスパーティーの役員は結構大変らしい。各クラスから二名ずつ選出して執行部を作り、主催も運営も生徒が全て執り行う。
しかも、よりによってジョーンズとアリッサムだなんて。
絶対にありえないよ!
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