38
翌朝、俺はアリッサムと別々に登校する。
俺は徒歩で、アリッサムは公爵家の車で送迎だ。俺達の学校は上流階級の令息や令嬢が通うパブリックスクール。
未成年でも親が決めた婚約者がいるものもいるが、学内の男女交際はそれなりに厳しい。男女が手を繋いで構内を歩くものなら、すぐに保護者共々校長に呼ばれ厳重注意を受ける。
男女共学のため、クラスには勿論女子がいる。アリッサムは美少年のため人気者で、休憩時間になると男子も女子も周辺に群がった。
制服はその日の気分で男子の制服を着たり、女装したりと、自由に振る舞っている。人望からか、クラスメイトは誰一人異を唱える者はいない。
クラスの中心に、いつもアリッサムがいると言っても過言ではない。
アリッサムの隣にはいつもロータス・ジョーンズが居座っている。ジョーンズ公爵家の令息、百八十センチを超す高身長で女子から絶大な人気を誇っている。
ジョーンズは成績優秀で尚且つスポーツも万能だ。公爵家の令息らしく、礼儀作法も立ち振る舞いも完璧。
碧い瞳、栗色の髪。切れ長の目、すっと通った鼻筋、形のいい唇。十八歳とは思えないほど大人びている。
同性の俺が、思わずドキッとしてしまうほどカッコイイ。
二人が急接近をしたのは、席替えの直後から。ジョーンズはアリッサムの隣の席になり、ホームルーム中もアリッサムに視線を向けては優しく微笑む。
誰が見ても、百パーセントアリッサムに『好意』があるとしか思えないほどの熱視線を送り続けている。
公爵家の令息同士、きっと話は合うはずだが恋となれば話は別だ。
「アリッサム、今日はいい天気だよ。校庭で一緒にランチしない? それとも体育館でフェンシングでもする?」
「そうだな。みんなで一緒にランチしよう」
「みんなと? アリッサムらしいね。俺は二人きりがよかったな」
……って、おいっ!
俺の目の前で、アリッサムを堂々とランチに誘うなんて、どういう神経してるんだ。
それは俺に対する挑戦か?
今、朝のホームルーム中なんだよ。
ランチまで何時間あると思ってるんだ。
しかも、アリッサムは同意した。
にこにこ笑って、いつから八方美人になったんだ。いや、八方美男か。
いや、まて。
男同士なんだ。二人は親友に違いない。
でも、アリッサムは男の娘なんだよっ!
ロータスがその気になれば、押し倒すことは可能だ。
俺のレーダーが、危険を察知している。
「ジョーンズさん、ホームルーム中の私語は慎んで。学内で行われるクリスマスのダンスパーティーの話をしているんだよ」
「ジョンソン先生、すみません」
ジョーンズは素直に謝罪し、隣に座っているアリッサムを見つめた。重なる視線に俺はジェラシーを感じている。
カッコイイ……。
ジョーンズは憎らしいくらい、カッコイイ……。
同じ公爵家の令息なのに、ジンジャーとは比べものにならないくらいの貴公子だ。
悔しいが、負けを認めるしかないのかな。
ジョーンズには家柄も人柄も勝てない。
まさかの惨敗だよ。
いや、そうじゃない。
ジョーンズが女子ならば、この恋を応援するが、ジョーンズは男子なんだ。
この恋はなんとしても阻止してやる。
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