クラス1番の美少女に付きまとわれているんだが、これが俗に言う『ヤンデレ』なのだろうか?

リン

カノジョの愛が重過ぎる件について『ヤんでる委員長は人の話を聞かない』

 

『ねぇ!なんで、まだ返信してくれないの!

 私の事が嫌いなの?だから返信してくれないの?

 ねぇ!何か言っててよ!誠人まさと!』



 カバンの中にあるスマホがぶるぶる振動している。


 取り出して見てみると、俺のスマホ画面にはそんな文面が表示されていた。


 知り合いからの通知、それも女子からの通知。


 それもその着信の通知が来たのは今から1分前……、普通の人であれば、その文面に自身の非を感じて、急いで相手に返信を返すことだろう。



 しかもその文面からして、彼女か女友達の通知。


 男の……それも普通の男子高校生であれば、俺がその通知を見るだけでなにもしようとしない事に「なにをやっているんだ!早く返信してあげろ!可哀想だろ!」と、声を荒げてくるかもしれない。



 しかしちょっと待って欲しい……。


 今から1分前のこの通知、これを返そうとしない事は本当に悪い事なのか?


 何かしら忙しくて返せない事もあるだろうし、そこの通信電波の状況によって、そもそもアプリを開かない事もあるかもしれない。


 そんな風に、人によっては今すぐに返信をする事が出来ない、そんな理由の一つや二つがあるんじゃないかと俺は思う。



 そしてそれと同様に、俺にも彼女に返信を返さない理由がちゃんと存在するのだ。


 その理由というのは……



「いくらなんでも通知来過ぎだろう……。

 今日これでもう何通目になる?今日だけでも40か50……いや?もう70通くらいになってるか?」



 と、見返すだけで大量に来ている事が分かる通知の数々を一目見て、俺は溜息交じりにそんな事を呟いてみる。


 俺の通知の大半が先程の連絡を送ってきた『彼女』


 その通知の数は、ここ一週間のうちに爆発的に増えたと言えるだろう。



 俺が彼女と話す様になってから早1週間……。


 彼女からの押し通知はとどまることを知らない。


 ピロン♪


 また、彼女からの通知だ。



「えーっと……、『誠人が返事くれないなら……、もう私グレてやる!誠人に口聞いてあげないし、お弁当だって分けてあげない!それに学級日誌に誠人の悪口もいっぱい書いちゃうから!それでもいいの!?誠人!』……って、なんて平和的な仕返しなんだ……。

 これ以上待たせたら後がややこしいし、ちゃんと返信はしてあげるけど……。

 はぁ、これがもっと危ない内容だったりすれば、それを理由に嫌う事も出来るんだけどなぁ。」



 とまあこんな感じで、彼女に対して迷惑に感じる事も多々あるのだが、どこか憎くむことが出来ない存在……、それが『彼女』なのだ。


 先程の通知からも分かるように、彼女は俺にしつこくつきまとい連絡をアホみたいに入れてくるのだが、基本的に真面目なクラス委員長である所の『彼女』は、俗に言う所の『』?の様な雰囲気を出しながらも、世話焼きなクラス委員長の一面も覗かせる……そんな不思議な女の子なのだ。


 俺はそんな『彼女』を思い浮かべながら、アレコレ考えていたが……、早く返信を返してあげないとまた彼女がうるさいだろう。


 そして俺は彼女の連絡に返信するべく、ぽちぽちと返信の文面をスマホに打ち込んでいると……


 プルルル……プルルル……


 まさかのバイブ音がその場に鳴り響き、直接電話を掛けてくるという強硬手段に、彼女は乗り出してきたのだった。



 俺はそのバイブ音に溜め息1つ吐いて、とりあえずはその電話に出る事にする。



「はい。もしも……『どういうことなの!誠人!なんで私に返事をくれないの!さっき既読がついたのに、それから1分も返信してくれないって……どうして!?何か返信出来ない理由でもあるの?ねぇ、なんで……?何か答えてよ!』

 って、あー。その……委員長さん?俺の話を聞いてーー」



 俺が電話に出た瞬間……彼女は勢いよく喋り出し、俺に話す隙を与えずに一気に捲し立ててくる。


 たった1分の既読無視でも、彼女にとってはとてつもない事なようだ。


 流石に1日70件近くもくる通知に、一々その場で返信する事など出来ないのだが、先程の通知に既読を付けてしまったのは良くなかったのかもしれない。



 それでも俺はなんとか彼女を落ち着けようと、色々と声を掛けてみるのだが……



『なんでそんなに言い訳ばかりするの!?やっぱり私に返信出来ない理由があるのね!そうなのね!?

 あっ!もしかして女!誠人今、他の女と一緒にいるんだ!

 誰よ!誰なのよ!その女は!隣にいるならソイツに代わってよ!誠人!一度ソイツには私から説教してやるわ!他にもいい男なんて一杯いるって事を教えてあげるの!』



 と、何やら存在もしない『隣にいる女』とやらを出せと騒ぎ出し、俺の説得など聞く耳を持たない。


 たしかに、女性の返信をすぐ返せない理由に、別の女性の存在を挙げることは仕方ないのかもしれないが……


 普通これが問題となるのは、付き合っている男女の間であって、俺たち2人の間にはあり得ないのだ。


 しかし、それを当たり前のように主張してくる彼女と言ったら……



 ていうか、『他にもいい男なんて一杯いる』という言葉をそっくりそのまま返してやりたい。


 彼女ほどの美少女であれば、男なんて選びたい放題だろうに、なぜそこまで俺に執着し続けるのか……?



「なぁ、委員長さん?改めて聞くけど……なんで俺なんだ?

 さっき自分で言ってたように、他の男なんていっぱいいるだろ?それなのに、なんで他ではなく俺に付きまとう?」



 俺は単純に疑問だった。なぜここまで彼女が俺に執着し、普通では考えられないような行動に出るのか?


 クラスが一緒になったのは今年が初だし(高校1年だから当たり前なのだが)、そもそも話し始めたのはつい最近のことなのだ。


 それなのに、ここまでしつこいというのは……



 すると、それまでヤイヤイ言っていた彼女の声がぴたっと止んで



『私が誠人を愛する理由?そんなの……前世から私たちは愛し合って……「あっ、もう切りますね?」

 ちょっと待って!今の嘘!あるから!ちゃんと理由はあるから、切らないで!』


「委員長、次変なこと言えば切るからな?」


『わ、分かった!うーんと……。私が誠人を好きな理由、それは……誠人がって所かな。

 どんな人間でも自分を良く見せるため平気で嘘を付くし、他人を蹴落とそうとする。でもそういうことを誠人はしない。だからこそ、私はキミが好きなんだよ。』



 と、少しだけ真剣な声色でそう彼女は述べる。


 前世がどうのこうのという話は冗談であって欲しいが、後半の話はいつものお茶目な彼女とは違う……真に迫った声であった為、本当にその理由で俺のことを好きと言っているのだとは思うが……



「まあ、うん……。委員長が俺を好きだと言う、その理由は一応分かった。ふざけてる訳でもなし、冗談言ってる感じではない。そこは認めよう。『えっ?ホント!?じゃあ私と付き合って……』でもそれは!委員長が俺を好きな理由で合って、それが俺に付きまとう理由ではないだろ?

 俺のことが好きだって言うのに、なんでその好きな人が嫌がるようなことを自ら進んでやるんだ?」



 と、ふと冷静になって考えた俺はそんな当たり前の疑問を、彼女の声を遮って尋ねる。


 最初はなぜ他の男ではなく俺に付きまとうのか?と尋ねたはずが、いつの間にかなぜ俺が好きなのか?に置き換わっていたのだ。


 確かに、その理由についても詳しく聴いてみたくはあったのだが、今は違う。


 俺が聞きたいのは、なぜ嫌がるようなことをするのか?ということだ。



 すると、俺の言葉を聞いた彼女は『ほぇ?』っと気の抜けた声を漏らして



『えぇ!?誠人って私に構われるの好きじゃないの!?

 私はてっきり、冗談で嫌がるフリをしてるのかと思ってたのに……。』



 と、まさかの『冗談だと思った』との驚きの発言が彼女の口から飛び出した。


 しかも続けて『嫌よ嫌よも好きのうちなんでしょ?』と言って、開き直る始末だ。



 俺はそれに対し、嘘偽りなく迷惑だとその旨を彼女に伝えたところ



『でも、そうなったら……どうやって誠人に私の愛を伝えればいいの?

 メールいっぱい送ってもダメ、いっぱい構ってもダメ、家に押しかけてもダメって……、誠人ワガママ言い過ぎだよ!』



 と、なぜか彼女は逆ギレして俺への説教を始め、終いには自身の愛の大きさについてクドクドと語り出す。


 俺はその長い話に少々げんなりして、「あー、はいはい。」と、軽く彼女の話を受け流していたところ……



『えっ!?やったぁ!じゃあよろしくね!誠人!

 この後、明日の準備のため忙しくなるから……今日はもう切るね!じゃあね!ばいば〜い!」



 と、突然上機嫌になった彼女はそう述べると、あろうことか自分から電話を切ろうとする。


 俺は流石になんか変だと思い「ちょっと待て!」と言ってみたのだが……


 プープープー……


 時すでに遅く、彼女はもうすでに通話を終了してしまっていた。


 色んな意味で不安になるが……先程の様子だと、折り返しをしてもおそらく彼女が出ることはないだろう。



「はぁ……。明日の準備って……なにをするつもりなんだ?」



 俺は彼女の引き起こすであろう色んな意味で不安な明日を想像して、ため息一つ吐きだし、明日に備えて早めに眠りに着くのだった。

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