第17話 Mediator

成田「これより二回目の注入を行う」


遠藤(元Escape planの一人)

こんなに体調が悪いのにさらに注入したら


俺の体の中は一体どうなるんだ


遠藤「とても無理です


体調が悪くてとても入れられる状態に


ありません


明日、いや2日後にしてほしい」


「それは無理だ


今、徐々に体を


我々の因子に慣れさせていってるところだ


途中で中断すれば


体の中でうまく作用しなくなる」





このまま続行するしかないのか


やめる方法は


確かここは、地下7階


本来、異世界次元ビルに地下は存在しない


地球人が立ち入ることのできない世界に


今、存在している


逃げることは間違いなく不可能


仮に逃げられたとしても


その後の報復が恐ろしい


なんせ、地球を乗っ取ろうとしてるんだ


そんな集団を相手に逃げ切れるわけがない


どうする


このままこの世界に転がり込むのか


どこか俺の中でまだ意思が固まっていない





成田「では、順番に始めていく


各自、横になるように」


どうする


これを入れたら


俺の中の何かがまた変わってしまう


今日を終えたら、もう後戻りはできない


俺の中に眠っていた闇意識が目覚め


俺でありながら別の人格となっていく





ドキン





ドキン





今日の因子の色は


すごいな、青いや


黒を含んだ何とも表現のしづらい色だ





周りを見渡す





やはり俺だけ周りと比べて今回も量が多い





ドキン





ドキン





液体が渦を巻きながら上がってくる





ボトッ





ビリッ

針を外す





成田「どうしたんだ」


遠藤「一つ提案があって」


「提案?」


「中間役が必要ではないでしょうか」


「中間役?何のだ」


「地球とこちらの世界とのです」


「中間に立って一体、何をするんだ」





うまく交わせ





ドキン





ドキン





何て答えれば、納得させられる


頭をフル回転させるんだ





遠藤「全員がHybridとなってしまったら


地球に長く滞在することができなくなります


ですから


一人ぐらい地球とこちらの世界とを


自由に行き来できる人間がいても


良いのではないかと思いまして」


成田「何を企んでるんだ」


「いえ、何も企んでいません


どうでしょう


私は地球に戻り、地球で得た情報を


こちらに伝達するというのは」


「そんなの信用できるか」


「もし、情報の漏えいを心配されているなら


万が一、こちらの情報を一つでも


外部に漏らしたことが判明した暁には


私の命を差し上げます」


咄嗟に言ってしまった


成田「お前の命をか」


遠藤「それだけ私も本気ということです」


成田「どうする、お前はどう思う」


酒井「命と引き換えに地球に戻るなら


悪くはない気もする


地球を乗っ取るには


地球の状態を常に把握しておく必要がある


俺らの体は


もう地球には長くいられない体だ」


成田「それもそうだな」


遠藤「必ずやお役に立てると思います」


成田「よし、お前を開放する」


うまく交わせた


成田「ただし、条件がある


お風呂と就寝時間以外は


常に我々とコンタクトを取れる状態に


しておくように」


「常に?」


「あぁ、こっちだってリスクしょってるんだ


いくら命をかけてると言ったって


一度バラしてしまえば


この世界の存在を知られてしまう


連絡だけでなく


様子をモニターで確認させてもらう」


「モニター」


「そうだ


ただ、プライバシーを配慮して


お風呂と就寝時間は


監視をしないことにする


お前を信用していないわけではない


信用するためにするんだ、条件は以上だ


どうする」





仕方ない、この条件はとりあえずのむか





遠藤「分かりました」


成田「では、チップを腕に埋め込み


準備ができ次第、地上に開放する」





チップ?


もう何でもいい


とりあえず、地球に戻れるなら





成田「では、引き続き二回目の注入を行う」





コソコソ


加山

地球に戻るのか


遠藤

あぁ


加山

今更、戻ってどうするんだよ


遠藤

これからのことはまた考える


加山

お前、まさか逃げるつもりなのか


遠藤

逃げられねぇよ


相手は、闇世界の人間だぞ


地獄の果てまで追ってくる


俺の命がかかってる


地球とこの世界の中間役になるつもりだ


加山

中間役


お前らしい選択だな





遠藤

何だよ、中途半端だって言いたいのか


分かってる


ただ、今は完全に闇側の人間となる


決心がどうしてもできない


猶予期間だと思ってる


結局、俺は中途半端なのか





ガチャ

扉が開く


酒井「予定通り、チップを埋め込む」


遠藤「チップは何の為に入れるんですか」


「このチップを入れることで


居場所を常に把握することができる」


俺はまだ信用されていないのか


「また、こちらのモニターから


様子を確認することができる」


遠藤「監視するのは


お風呂と就寝時間以外でしたね」


酒井「あぁ、そうだ」


「どうやって判断をするんです?」


「お風呂かどうかは


腕に水が1分以上かかると


自動的に風呂と判断し


モニターはシャットダウンする


就寝時間は、睡眠状態の脳波となれば


就寝時間と自動的に判断する」


「なるほど」





腕に水が一分


腕に水が一分


風呂、風呂


脳波、脳波、睡眠、睡眠




酒井「では、いいか」


えっ


遠藤「い、いやちょっと待ってください」


「何だ」


「そのままいくんですか?」


「......」


「麻酔してからとか」


「麻酔?そんなものはない」


さすがだ


やはり、闇の世界


痛み止めなどという概念は存在しないのか


一瞬だ、一瞬


「分かりました」





スパッ

ナイフを取り出す





キキーッ

ナイフを横に滑らせる


うっ

痛みをこらえる


酒井「チップを埋め込むぞ」


遠藤「あぁ、はい」





ズキンッ





ズキンッ





「よし、入った縫うぞ」


もちろんだけど、そのまま縫うんだよな





グサッ


針が刺さる





痛いが


さっきので少し痛みに慣れたのか


耐えられなくはない





酒井「よし、終わりだ、最後に止血する」


ギュッ

布のようなもので縛られる


酒井「ついてくるんだ」





ズキッ





ズキッ





カツカツカツ

エレベータへと向かう





扉が開く





ピピピピピッ


Rise to earth

地上地球へ上昇いたします


Rise to earth

地上地球へ上昇いたします


Are you sure

宜しいですか


ピピピピピッ

yes


Then it will rise

それでは、上昇いたします


If a danger is detected on the way, it will be temporarily stopped.

途中、危険を察知した場合

一旦、停止いたします





ウィーン

上昇する





酒井「またこちらから連絡をする


それから、週に一度必ず報告を挙げに


この場所に戻るように」


遠藤「分かりました」


「毎週、月曜日朝の7時エレベーター前」


「分かりました」


チャリン

鍵を手渡される


「これが新居だ」


用意されてるのか


「いいんですか」


「一度は地球を離れたんだ


それに今後は、極力地球人との接触は


避けるように」


「分かりました」


「親族や親戚、それから友人全てだ


今日から葛城shinjiとして生きていくんだ


それからこれが仕事先のリストだ


この中から選んで、連絡をするように」


葛城(遠藤)「分かりました」


必要最低限は揃っているということか





チーン

地上に着く





酒井「では、一週間後に」





ガシャン

扉が閉まる




チラッ

外の世界を見る


うわっ、眩しい


大して時間は経っていないのに


随分と久しぶりな感じがする


これからのことは追々考えるか


今は、規則通りに行動するしかない


相手は、闇世界


どうしたって叶わない


別にあの世界を否定している訳ではない


ただ、どこか馴染めない自分がいる


魂があの世界を拒否している


周りは、俺のような違和感もなく


すんなりと馴染んでいる感じだった


規則通りにさえ行動していれば


地球にいられるんだ





ガチャ

扉が開く


成田「これで二回目の注入を終了する


食事をしたいものはしてもらって構わない」































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