協力者ゲット☆<イツラコリウキ視点>
「イツラコリウキ、あちらの様子はどうなのかしら?」
オメテオトルが聞いてきた。
笑っちゃウ。だって、オメテオトルは全部知ってるのに。わざわざ聞いてくる必要なんてナイ。
「何の為に聞くノ? オメテオトルだって目の前で見てたデショ?」
見えていたわ、とオメテオトルは認める。
じゃあ何デ。
「私が知りたいのは、イツラコリウキ、貴女がどう考えたのか、なのよ」
オメテオトル──ショロトルの中に生まれた人格の中で唯一全てを認識して、コントロールする人格。生まれたのは、ケツァの次。
ケツァは一番最初に生まれたショロトルの別人格。良いコであろうとするショロトルの破壊衝動と言うか、反動により出来たのだろうとオメテオトルが言ってタ。
私はイツラコリウキ。最後に生まれた。もう表層意識に出ようともせず、奥底で眠ってばかりいるショロトルの代わりを務めている。オメテオトルがやれば良いのに、やらない。ワガママだと思ウ。でも、オメテオトルはママみたいなものだから、仕方ないカナ。
「王も他の六人も、イイ感じにその気になって、準備に勤しんでるヨー」
「六人? 七人ではなくて?」
ショロトル以外の王位継承権を持つヤツは、七人。
オメテオトルは王に開戦を決意させ、他の継承者を全部、戦争に駆り出せと私に言った。
「チャルチウィトリクエは絶賛王を誘惑中だからネ」
チャルチウィトリクエは女子だからそもそも王位継承権があっても除外されちゃう。だからマグダレナ侵攻に付いて行っても無駄だと思ったんだろうナー。
ある意味間違えてないよネ。
「……いくら他の継承者に相手にされないからと言って、溺れる船に乗ろうだなんて、愚かな子……」
「んー、でもサァ、王はまだ若いから、直ぐには退位しないと見るのがフツーなんじゃないノ? 私タチがやろうとしてるコト、アイツらじゃ分かんないデショ」
それもそうね、とオメテオトルは肯定する。
「このまま他の継承者に相手にされずに貴族の元に降嫁する事を考えたらサァ、王の愛人になって子供でも出来ちゃえば、次の王位継承者の母になれるヨ? あのコにしては考えてる方じゃないカナー」
オメテオトルは目を閉じ、ため息を吐いた。
「そう言った事には知恵が回るのね、彼女……」
死活問題って奴だネ。
「ねー、オメテオトル」
「なぁに?」
「ウチとマグダレナだと技術の差があるって聞いてるケド、ダイジョーブなの?」
噂のミチルちゃんに会う前にマグダレナが滅んじゃったら、傷心のお姫サマは言う事聞いてくれない可能性大だよネー。
「毒があるって話だったけど、それでアイツらをやっつけよーなんて思ってないデショ?」
深謀遠慮なオメテオトルが考えてないワケないんだけど、いちおーね、いちおー。
「毒で彼らを何とか出来るとは思っていないわ。当然、戦争ですもの。武力でもって壊滅に持っていってもらう必要があるわ……」
「どうやって?」
「協力者を得たのよ」
協力者? あの人の良さそうな坊っちゃんのコト?
「イツラコリウキが思っている人物で間違い無いわ。彼に研究員が近付いているのよ。ホルヘとアドリアナがね」
「へぇーっ」
ホルヘとアドリアナは、優秀な者ばかり集めた研究施設の筆頭研究員。その二人が坊っちゃんに接近中? その坊っちゃんがオメテオトルの協力者になった?
「あの二人は何の為に坊っちゃんに近付いたんだと思ウ?」
「……二人は、レジスタンスのリーダーだと言う噂があるのよ。尻尾は掴めないけれどね」
ぅわぉ、
ちょっとドキドキしちゃうカモ。
「でもサァ、それで何で坊っちゃんに近付くの? 燕国の文明がウチより上なら分かるけど、あの二人はこの国の技術の粋を集めた場所にいるんだよ?」
だからでしょう、とオメテオトルは言ウ。
んんー? どゆコトー?
「いくら彼らが優秀で、最高水準の施設にいるからと言って、全ての研究員が彼らに与する訳ではないわ。もし計画が漏れたり失敗に終わった場合、燕国への亡命を考えているのではないかしら。それに見合うだけの技術力と知識が彼らにはあるんだもの」
「デモ、毒あるよ?」
「……それもそうね。まさかマグダレナの毒を何とかする技術の開発に成功なんてしてないでしょうし」
あー、何か複雑になってきたネ。
嫌いじゃないケド。って言うか、むしろスキ。
フフ、ゴミを潰せるもんネ。
「それデ、坊っちゃんを経由して筆頭研究員と繋がりたいってコトで、合ってル?」
オメテオトルはにっこり微笑んで私を撫でた。
「当たりよ、イツラコリウキ。イリダの王族とそれに群がる貴族達、オーリーの上位貴族達を戦地へ送り出すのが私達の役目。
研究施設が今回の戦争に使われる戦艦に関わっている事は分かっているのよ。そこにホルヘとアドリアナが介入してくれれば、計画の半分は成功したと言っていいわ」
自国の戦艦を無力化させようってコトー?
オメテオトルってば悪いヒトだなぁ。
「でも、そんなに上手く行くカナァ?」
「違うわ。上手くいかせるのよ」
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