断罪<フィオニア視点>

ルシアン様と共に、アレクシア様を迎えにクレッシェン様の屋敷を訪れた。

純白のドレスを纏い、ハーフアップにした髪に百合の生花を挿した彼女は、聖女と見紛う程に美しい。

初めて修道院で見かけた時とは雲泥の差だ。


「姫、大変お美しい。」


アレクシア様は少し恥ずかしそうに微笑まれると、ありがとうございます、と口にした。


クレッシェン様により、アレクシア様は立派なご令嬢へと変身した。

正直、ここまで完成されるとは思っていなかったが、元々の素質なのかも知れない。


彼女の表情から、私への好意が消えたのを感じる。

その事に私は安堵した。

私は彼女の想いには答えられないし、そもそも彼女の私への気持ちは憧れであって、恋ではない。


「よく、お似合いですよ、姫。」


珍しくルシアン様が、笑顔を浮かべて姫を褒めている。

予想外の言葉だったからか、アレクシア様が首まで顔を真っ赤にさせた。

褒められ慣れてない上に、予想外の褒めに戸惑ってらっしゃる。


「参りましょう。式典に。」


アレクシア様のエスコートは、私ではなく、ルシアン様にしていただく。


馬車に乗り、式典が行われる皇城へ。




皇城に着くなり、クレッシェン様の待つ休憩所に向かう。

思っていたのと違う場所に通された事に、アレクシア様は戸惑いを隠せなかったようだが、クレッシェン様の顔を見て安心したようだ。


「アレクシア、こちらにおいで。」


クレッシェン様に呼ばれ、その前までアレクシア様は進んで行った。

扉を開ければ、直ぐに会場に降り立つ事が出来る。

その眺めに、アレクシア様は感嘆の声を上げる。

ここは、皇城の端。

襲撃を想定されて作られた両翼に当たる部分で、式典が行われる皇城正面の広場を抱くように存在する場所だ。

式典での会話もよく聞こえるし、表情すら見える。

本当に、見学には持ってこいの位置だ。


「まぁ…っ。素晴らしい場所ですわ!式典の会場が目の前だなんて。」


「そうだろう?アレクシアの為に、この部屋を用意した。」


アレクシア様は頰を赤らめて、嬉しそうに微笑む。


「ありがとうございます、お父様!」


私とルシアン様は、クレッシェン様とアレクシア様の後ろに立ち、式典の開始を待つ。


マグダレナ教会のカテドラルの鐘が、カラーン、カラーン、カラーン、と三度打ち鳴らされた。

もう少しで式典が開始される。


目の前では、アレクシア様が一生懸命にクレッシェン様に話をしている。

最近学び始めた皇国の歴史について話してらっしゃる。

姫は修道院では勉強をしてこなかったが、勉強する事に抵抗感はないようで、土が水を吸うように色んな事を覚えているとの事だ。

性格も温和で知性もあり、本当に、申し分無い。


ルシアン様が左腕にはめた時計を見、顔を上げた。


「始まる。」


直後、教会の鐘が鳴り、皇城の正面の扉が開き、楽隊が列を成して式典会場へ向かった。

一糸乱れぬ動きで会場の両翼に整列すると、一斉にトランペットを構え、高らかにファンファーレを演奏し、曲が終わると楽器を下に向け、待機する。


続いて皇城の正面玄関から、近衛騎士の一団が二列に隊を組み、剣を己の正面に掲げたまま広場に降り、右翼と左翼の両脇に控え、一度剣を頭上に掲げ、剣先を下に向けて停止した。

白銀の甲冑に覆われた騎士達が両翼に並ぶ様は圧巻だ。

赤いマントが風にたなびく様は美しい。


再び楽隊がトランペットを構え、先程とは別のファンファーレを鳴らす。

皇城から宰相達、皇国の重臣達が式典用の煌びやかな衣装を纏い、真紅の絨毯を進み、式典会場に下りると右翼側に並んだ。


皇族が登場する際のみに演奏されるファンファーレが始まり、宰相達重臣は一斉に首を垂れる。


バフェット公爵、バフェット公爵夫人、その長男と次男、聖下、本日をもってその立場を失う女帝の一人息子である皇太子が絨毯を歩き、左翼側に並ぶ。

少し空けて、女帝が騎士団長と侍従を付き従えて会場に

入る。


両翼の近衛騎士団は再び剣を胸の前に掲げ、それから高らかに頭上に剣を掲げる。

女帝が会場中央奥に用意された専用の椅子に座り、騎士団は剣を胸の前に掲げ、それから下ろした。


銅羅が二度打ち鳴らされる。それを受け、宰相が会場の中央に立ち、手に持っていた羊皮紙をするすると開くと己の頭上に掲げ、大きく声を張り上げた。


「ただいまより、立太子の儀を行う!」


観衆から大きな歓声が上がる。


横に立つルシアン様を見ると、わずかに目を細めていた。


「あぁ、間に合った。」


背後から声がした。振り向くとリオン様が笑顔で私達の元に来る。

クレッシェン様は立ち上がると、深々とリオン様に頭を下げた。その様子に、アレクシア様も慌てて立ち上がり、リオン様にカーテシーをした。

それをリオン様が手で制する。


「いやいや、そのようにしていただくような者ではございません。お顔を上げて下さい。」


顔を上げたクレッシェン様に倣い、アレクシア様も顔を上げる。

リオン様は手慣れた手付きでアレクシア様の手を取り、手袋の上から口付けをした。慣れていないアレクシア様の顔が赤くなる。


「お初にお目にかかります、アレクシア姫。

私はルシアンの父、リオン・アルトと申します。辺境のしがない一貴族にございます。」


その言葉に、クレッシェン様が苦笑する。


「アルト公爵がしがない一貴族ならば、殆どの貴族は塵芥のようなものですぞ。」


「とんでもない。」


リオン様は用意されていたもう一つの席に腰掛けると、会場を見下ろした。


会場では、宰相が羊皮紙に書かれた皇国憲章を朗々と読み上げていく。


「以上を持ち、ここに、新たな皇太子を立てる物とする!

アダール殿下より、バートルミー殿下へ、世継ぎの皇子の位を継承する!

両殿下、陛下の御前へ!」


アダール殿下とバートルミー殿下が同時に立ち上がる。

美しい見た目だが、覇気の無い顔つきのアダール殿下と、得意げな顔のバートルミー殿下が並んで女帝の前に立ち、最上級の礼をする。


女帝が立ち上がると、女帝の侍従が横に跪いた。

手には皇太子である証の勲章を一時受け取る為の、真紅の布が張られた盆を持っている。


アダール殿下は御自身の胸元に刺してあった皇太子の勲章を外すと、侍従の持つ盆の上に乗せ、一歩後ろに下がり、跪いた。

続いて、バートルミー殿下が一歩前に進み、跪いた。


女帝は盆の上の勲章に、直ぐには手を伸ばさなかった。


愛する息子から、皇太子の位を奪う甥を睥睨するが、しばらくした後、諦めたのか、盆の上の勲章に手を伸ばした。

その瞬間、声が上がった。


「待たれよ!!」


立太子の式典が途中で遮られるような前例はない。

あまりの暴挙に、戸惑いを隠せない者達が、周囲の様子を、目で伺う。


「神聖なる式典を邪魔されるはどなたか!!」


宰相の問いに、一人の貴族が広場中央に躍り出た。

一斉にその人物に視線が集中する。


シミオン・レミ・オットー公爵。

ゼファス様の兄で、現オットー家当主だ。


直系皇族による妨害に、さすがの宰相も戸惑いを隠せないようだ。


「オットー公爵…いくら貴方様でも、かような暴挙は許されますまいぞ。」


シミオン様は頷く。


「神聖なるディンブーラ皇国の世継ぎの御子を決める場を乱すような真似が許されない事は、よく分かっている。

だが、バートルミー殿下は皇太子として相応しからず!」


「無礼な!」


バートルミー殿下の母であり、女帝の妹であるバフェット公爵夫人は声を荒げた。それを、夫である公爵が止めると、自身も列から出て、シミオン様に対峙する。


「何をもって、我が息子が皇太子に相応しくないと称されるのか、是非お聞かせいただきたい。」


バフェット公爵が怒りを必死に抑えているのが分かる。


アレクシア様は、式典が突然荒れ始めた事に驚き、クレッシェン様の腕を掴んだ。その手をクレッシェン様が優しく撫でる。


バートルミー殿下は怒りで顔を真っ赤にしている。

シミオン様はバートルミー殿下を一瞥する。


「バートルミー殿下、ヴァレリー・アルマニャック伯爵令嬢をご存知ですね?」


予想もしなかった名前が出たのだろう、赤かったバートルミー殿下の顔がさっと白くなる。


「まさかご存知ないとはおっしゃいませんでしょうな?

ご自身の種を孕んだ令嬢を?」


衝撃的な内容に、辺りがざわつき始める。


「心優しきヴァレリー嬢の心と身体を弄び、ご自身が皇太子となる可能性が上がった途端にお見捨てになられ、あろうことかウィルニア教団の教皇に下げ渡された事、お忘れになった訳ではありますまい?」


「なっ!そのような事はしていない!アルマニャック伯爵に話はしたものの、教団に下げ渡すなど!」


語るに落ちるとはまさにこの事で、言った直後、バートルミー殿下は青い顔をして首を横に振ったが、口から出た声は言葉にならなかった。


バフェット公爵が己の息子を射殺さん勢いで睨んでいる。

父親の視線を受け、バートルミー殿下はその場にへなへなと座り込んだ。


「神聖なる皇位に、このような非道な事を平気でなさる方が相応しい筈はない!

バフェット公爵家はマグダレナ教会を庇護なさりながら、裏ではウィルニア教団と繋がってらっしゃったのか?!」


「否!」


バフェット公爵がすかさず否定する。


「かような事実はない!」


「であるならば、これから私が申し上げる質問にお答え下さるな?!」


場の空気がおかしいことに、バフェット公爵は既に気が付いているだろう。ただ、この糾弾劇を仕切っているのが、真にシミオン様なのかどうか、測りかねているに違いない。

即答しない。いや、出来ない。


シミオン様は答えを待たず、質問を始めた。


「シンシア皇女殿下付きの侍従は、バフェット公爵家にかつて仕えていた者だそうですね。

皇女殿下が教団の聖女となられたのは、そうなるように皇女を説得するよう、バフェット公が侍従にご命令されたからではありませんか?」


そう言ってシミオン様が取り出した紙を見て、バフェット公爵は僅かに身じろぎした。


「この手紙に書かれた筆跡を、バフェット公が議会でお出しになられた書類と筆跡鑑定をすれば、侍従の真の主人が誰だか分かろうというもの!」


本来であれば読んですぐに処分すべき手紙を、皇女の侍従は処分せずに取っておいた。

それにいつもなら用心する公爵は、自筆で侍従への命令を書いたりはしない。

それが、あの時は己で書き、侍従に送ったのだ。


「筆跡など、真似ようと思えば出来るもの!それだけの事で私をお疑いになるのは、早計というものです。」


認めないバフェット公爵を、シミオン様は睥睨する。


「なるほど。

では、バフェット公爵家が懇意にしている商会が、カーライル王国で屋敷を購入し、そこに教団を住まわせていた事、そこにヴァレリー嬢が監禁されていた事はどう説明されますか?」


「そのような事知らぬ!」


「知らぬ?たかが一商会が、何の得にもならぬのに、皇都より離れたカーライル王国で屋敷に教団を匿う必要が何処にあるのですか?しかも監禁されていたのは、バートルミー殿下のお子を孕んだ令嬢ですよ?

これでも無関係とおっしゃるのですか?」


「ありえん。」


首を横に振り、シミオン様は大袈裟にため息を吐く。


「お認めにならないのであれば、証人を呼びましょう。」


シミオン様は手を上げる。

広場と皇都を繋ぐ道を、二人の騎士と、騎士に引きずられた男、それから少年がやって来る。


「これなるは教団の教皇、ベンフラッド・バークレー。

それから、アルマニャック伯爵家令息です。」


ベンフラッドは肥えた身体をぶるぶると震わせると、バフェット公爵に向かって叫んだ。


「公爵!話が違うではないか!貴方の言う通りに私は行動した!それなのに!!」


「何を言っている?!私とそなたは初対面だ!」


…バフェット公爵とベンフラッドは初対面なのだ。

だが、ベンフラッドの頭の中には、バフェット公爵との会談の記憶がある。


私はベンフラッドに暗示をかけた。これから私が話す事は、全て現実の事なのだと信じ込むように。

ロイエ特製の、目の前の相手を心から信用する、甘い甘いキャラメルをベンフラッドに食べさせ、レクンハイマーとの事を全て話させた。

その上で、ルシアン様に報告し、どの記憶とバフェット公爵を結び付けていくのが、一番整合性が取れるのかを話し合い決めた。

皇国の貴族年鑑に映るバフェット公爵の絵姿をベンフラッドの視界に常に入るようにし、キャラメルを食べさせ、私の力で暗示をかけ、ベンフラッドの記憶にバフェット公爵を入れ込んでいく。


ベンフラッドにとっては、全て真実だ。

彼は何度もバフェット公爵に会っているし、バフェット公爵の指示で教団の教皇としてやって来た。

誰が見ても、ベンフラッドは正気に見える。必死に訴える様に、ありえない事を言い続けるベンフラッドに動揺するバフェット公爵の姿は、誰がどう見ても、傀儡にされた男と、それを否定する公爵にしか見えないだろう。


「教団を指揮していたのは私ではない!レクンハイマーという男だ!私に無実の罪を着せる前に、真の支配者を探す事をお勧めする!」


シミオン様は首を横に振る。


「そのような人間はこの世に存在しない。」


「調査が足りないのだ!間違いなく、レクンハイマーは存在する!」


「では逆にお尋ねするが、何故そこまでご存知であるなら、レクンハイマーを捕まえようとはなさらなかった?

皇女殿下を、ひいては陛下を誑かそうとする、悪の集団である教団を放置なさっていた理由は?」


ぐっ、とバフェット公爵は言葉に詰まる。


「貴方が教団を指揮していらしたからこそ、教団と皇女殿下をお引き合わせになった。違いますか?」


「否!」


シミオン様は証人として連れて来た少年に目を向ける。少年と視線が合い、シミオン様は頷いた。

少年は一歩前へ出ると、バートルミー殿下を憎しみに満ちた目で睨んだ。ミチル様を誘拐し、教団の隠れ家に連れ去った、あの少年だ。

彼は、姉を助けてくれるならと、ルシアン様と契約を交わし、ルシアン様の配下になりたいと言った。

アルマニャック伯爵家が今後皇国でまともな立場を維持出来るとも思えないし、この式典で姉の事は否が応でも知られる事になる。

カーライル王国でならば、姉を薬物からも、醜聞からも守れるとの判断だった。


「バートルミー殿下、お久しぶりにございます。」


怒気を孕んだ声で、少年はバートルミー殿下に礼をする。


「わ…ワイアット……違う…違うのだ…私はヴァレリーの事を弄んだのではない…!」


悲鳴のようにバートルミー殿下が叫ぶ。


「我が姉を弄んだのではないのなら何故、カーライル王国へ追いやるような真似をなされたのですか?秘密裏に姉の腹にいる殿下の御子を処分なさるおつもりだったのでは?

教団はさまざまな薬物に長けていると聞いておりますから、それで姉を亡き者になさろうとしたのではありませんか?」


「違う…!」


両耳を両手で塞ぎ、その場に丸まって震えるバートルミー殿下を、ワイアットは身体を震わせながら睨み続ける。


「教団により薬物を摂取させられた姉は、マグダレナ教会に助けていただきました。

カーライル王国のアレクサンドリア領に自生する薬草が、薬物に蝕まれた姉を助けて下さったのです!」


ワイアットの言葉に観衆が激しく騒つく。

教団が用いる薬物を中和する術を、誰も知りえなかった為、各国の対応は後手に回っていたのだ。


「カーライル王国アルト伯爵の妻であり、自身も爵位を持つミチル・レイ・アレクサンドリア・アルト伯爵夫人は前世の記憶を持つ転生者であり、教団の毒を抜く技をご存知だった。

その技を、この度マグダレナ教会の教皇となった我が弟、ゼファス・フラウ・オットーにご教授下さり、教団による蛮行に心を痛めていた弟は、人々を救いたいと各国への巡礼を始めたのだ!」


シミオン様はゼファス様に顔を向ける。

ゼファス様は天使のように柔らかく美しい笑顔のまま、中央に立つと、周囲に向けて声を張り上げた。


「私はミチル・レイ・アレクサンドリア・アルト伯爵夫人の協力を得て、教団の薬物による洗脳を解く術を手にしました!

これにより、己の意思に反して、教団に信仰を捧げさせられていた哀れな子羊達を救う事が可能になったのです!

我々マグダレナ教会は、これからも、マグダレナ女神の愛する民を、救い続ける事を、ここに宣誓します!!」


天使のような笑顔、天上の楽器のような美しい声でゼファス様が高らかに宣言すると、観衆から一際大きな歓声が上がった。それは、もう教団に怯えなくていい、という事に他ならなかった。


ゼファス様は胸に手を当てると、再び列の中に紛れた。

それを見てシミオン様は頷くと、視線をバフェット公爵に向ける。


「薬物と言えば公爵、教団が信者を増やす為に使用する薬物は、公が治めるバフェット領で自生する物だそうですね?」


そのような事実を知らず、呆然とするバフェット公爵に、シミオン様がとどめを刺す為に言った。


「ご自身が治めてらっしゃる領地に自生しているのですから、いくらでも薬物を量産出来たでしょう?」


「そのような事、知らぬ!」


「ご自身の領地に自生する物すら、ご存知ないとおっしゃる?まさか、あり得ないでしょう?バフェット公爵は博識で、薬草に関する意見書を皇室にご提出いただいた事もおありなのに?」


バフェット公爵は実際知らなかっただろうが、教団が作成する信者を作る為の薬物は、間違いなくバフェット公爵領に自生する薬草から作られる。

その薬草と、あと2つの別の薬草とを特定の方法で調合する事により、洗脳する為の薬物は生成されるのだ。


「もう良い!」


ヒステリックな女の声が上がった。

声の主は、女帝だった。


存在を忘れていただろう者達は、一斉にその場に跪いた。


「オットー公爵、そなたの発言は間違いないのだな?」


「御意。」


「ならば、バートルミーは皇太子の座に相応しからず!

皇位継承権の剥奪もあり得ると思うが良い!」


バフェット公爵の顔から完全に色が消えた。公爵夫人はあまりの衝撃に耐えられず、目眩を起こしたようで、周囲の人間が慌てて支えていた。


これで、バフェット公爵の息子が皇位を継ぐ事は、不可能となった。

皇国圏内に害をまき散らした教団の支配者であると認定されてしまったからだ。

バートルミー殿下のやった事など、瑣末な事ではあるが、こと、教団が絡んだ結果、それは若気の至りでは済まされなくなる。


呆然自失になったバフェット公爵は、その場に膝をついた。


リオン様を見ると、にっこり微笑んでらっしゃった。


「これは、大変な事になりましたね、クレッシェン公爵」と、隣に座るクレッシェン様に話しかける。


頷くクレッシェン様を、アレクシア様が不安そうな目で見上げる。


クレッシェン様は、アレクシア様の髪を優しく撫でた。


「大丈夫だ、私が付いているよ、アレクシア。」

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