26.もっと仲良くなれるみたいでした

 そのとき、シュルカは少し緊張していた。

 なぜなら、


「それじゃあ、紹介しようか。名前はシュルカ、相棒はなんとフェンリルのフテラだ。シュルカ、ここにいる人たちが今日から君の同僚だよ。」


 と紹介してくれたリード騎士長の横から見た景色、そこには、キラキラと目を輝かすいかつい男の人たちがシュルカに視線を集中させていたからだ。


 わぁ...めっちゃ見てる。


 と思って口の端をひきつらせつつ、挨拶をする。


「シュルカと言います。魔法はアラン師団長に教えて頂いてますが、まだ戦い方とかは全然わからないので教えてくださると嬉しいです。よろしくお願いします!」


『キュ!』


 フテラが私に合わせて挨拶するように鳴くと、目の前の騎士さんたちの顔がふにゃ~とだらしなく綻んだ。


「その純粋さ、尊い。」


 なんて聞こえたのは流石に空耳だと思いたいが、どうやら好意的に受け止めてもらえたようでシュルカはホッとした。

 するとリード騎士長が少し苦笑しつつ、


「それじゃあ、シュルカにはとりあえず教えることが色々あるから俺がつくが、お前達はいつも通りのメニューを...おいお前達、いくらなんでも上司相手にその顔はないと思うぞ。」


 リード騎士長の話を聞いていた騎士さんたちは、その話の途中で一斉に顔をしかめた。


「だって騎士長、癒しを独り占めなんてずるいですよ~俺らにも分けてくださいよっ!」


 1人がそう声を上げると、周りもぶーぶーとブーイングをあげて賛成する。


 ーー癒しってなんのことだ。


 そんなシュルカの困惑には誰も気づかないようで、騎士長はため息をつくと、


「お前たちの中に急に放り込んだりしたら、シュルカもフテラも怪我をするだろう。そんな思いをさせないために、伝えるべきことは初めに伝える義務が俺にはある。大体、シュルカたちに怪我をさせればアラン師団長が黙っていないぞ。」


 と言う。

 それを聞いた騎士さんたちから


「ま、まぁ、確かに怪我はさせたくないもんな。」


 という声が上がる。

 だがその目は泳いでいて、一部始終を見ていたシュルカは騎士さんたちが"アラン師団長"という単語を聞いた瞬間に恐怖の表情を浮かべたことから、


 ーー師団長が1番の理由だな...。


 と察して苦笑する。

 一体何をしたんだあの人は!




 -・*・-

「それじゃあ、始めようか。まずシュルカ、君は魔物駆りにとって1番大事なことはなんだと思う?」


 あのあと騎士さんたちと解散してリード騎士長との個人授業が始まって早々、こう聞かれた。


 うーん、と少し考えて、


「魔物駆りは人間の指示を通して魔物に動いてもらうので、どうしても普通の魔法師より効率が悪いですよね? それを少しでも改善するために...状況を素早く判断する能力とかですか?」


 リィナさんから聞いた魔物駆りの特徴を思い出しつつそう答えると、リード騎士長は少し驚いたような顔をして、


「へぇ! よく学んでいるんだね。確かに魔物駆りの欠点はそこにあるし、それを補うのが1番大切だというのはあっている。でも、方法は違う。」


 と言うと、手を横に出した。


 ーー? 何をするんだろう?


 そう疑問に思った次の瞬間、少し遠くで草を食べていたレオン(リード騎士長の相棒)がピクッと反応して素早く走ってきたかと思うと、リード騎士長の横で止まった。


 ーーええっ? 何も言わずに指示を出したの?


 と困惑しつつも見守ると、騎士長は


「良い子だ、レオン。」


 と言って微笑み、相棒を撫でると、シュルカに視線を戻してこう言った。


「魔物駆りにとって1番大事なのは、相棒との関係を深めることだ。それこそ、言わなくても何をしてほしいかわかるくらいに。そうすれば、相棒に何をしてほしいか伝えるその時間そのものを短縮できる。」


「えっ、いや、それはあの...はい、分かりますけど、今のは一体...レオンはこっち見てはいませんでしたよね?」


 そう、騎士長が手を上げたのを見てレオンが走ってきたのかと思いきや、手を上げたときレオンはこっちを見ていなかった。それでも即座に反応し、駆け寄ってきた。

 一体どういう仕組みでレオンに伝わったのだろう?


 という疑問を察したのか、


「そうだな、それにはまず我々の魔力について説明を加えよう。」


 そういうと騎士長はその場に座り、シュルカにも座るよう促す。

 そしてシュルカが座ると話し始めた。


「魔法には7つの適性がある。そしてそれぞれの魔力は色で表される。曰く、闇は黒、光は白、火は赤、土は茶、水は青、風は紫、そして魔物使いは透明もとい、無色。この透明というのは自分自身では各適性の魔法はほぼ使えないに等しいということを示すと同時に、魔物という絆を通して何色にでも染まれるということでもあるんだ。」


「何色にでも、ですか?」


 そう確認すると、騎士長はニヤッと笑って頷いた。

 その笑顔は爽やかで清々しい。


「ーーそうだ。俺たちが持つ透明の魔力は、魔物と絆を繋ぐためだけのものじゃない。絆を通して相棒に渡し、相棒の適性に染め上げて魔力として使ってもらうことができるんだ。」


「! そんなことが...。」


「そう、つまり魔物駆りは普通の魔導師よりも使える魔力が格段に多いんだよ。そのかわり、自在に操れるようになるにはかなり努力が必要だけどね。そしてそうやって魔力の繋がりが強くなると、互いの感情や考えを感じられるようになる。」


「じゃあさっきのレオンは、騎士長の考えに反応したんですね!」


「そうなるな。」


 つまり、努力次第で私の魔力をフテラに使ってもらえる。そして何より、フテラと感情の行き来ができる。


 そう考えると、嬉しくてたまらない。

 そんな感情が抑えきれてなかったのか、リード騎士長がシュルカを見てくすっと笑うと、


「それじゃあ早速訓練を始めようか! フテラと、きっともっと仲良くなれるよ。」


 と言ってくれる。

 その言葉に


「はいっ!」


 と答え、フテラと感情をやり取りする日々を想像して、


 ーーよし、頑張るぞ!


 と気合を入れた。

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