24.お見舞いに行きました

「...っていうことがあったんだよ。」


 シュルカはそう言いながら、カイルと師団長の言い合いを思い出して苦笑した。


 今シュルカがいるのは、魔法師団直轄の医務室の中。

 演習で誘拐されかけた6人は魔法で眠らされていたため、一応ではあるが様子を見るためにそこに数日入院することになっていた。

 入院室は4人ずつの小部屋だったので、第4グループの人たちとは違う部屋だったが。


 そこにシュルカがロウラとラーサのお見舞いに来たところ、あの後結局どうなったのか尋ねられたので今まで説明をしていた。

 ちなみに、カイルが王太子だと分かる部分はもちろん省いて伝えている。そこらへんの詳しいキャラクター設定は、事前にカイルから教えてもらっていた。


「そうだったの。そんな大事になっていたのね。」


「うん、でも城の中ではあまり噂されてないみたい。他の新人の人たちにも、少し問題が発生して、っていうくらいしか伝えられてないみたいだし...。」


 実質、この誘拐未遂事件を知っているのは、演習での第4・7グループのメンバーと教官、あのときあそこに来た兵士さん(その後、この人たちがカイルの近衛騎士だと教えてもらった)、あとは騎士団と魔法師団の上層部のみであった。


「へぇ。まぁ新人演習とはいえ、王都の騎士団と、魔法師団の元でのイベントで、問題があったなんて知れ渡ったら、めんどくさいだろうしなっ。よっ。」


 ロウラが腹筋を鍛えながら途切れ途切れにそう言った。


「...襲われたはずの人は起きてからずっと筋トレしているしね?」


 とついジトッとした目で見てしまった。

 ロウラは演習の翌日の昼起きたと思ったら即ご飯を所望し、そのまま筋トレを始めたのだ。


「フテラとまた一緒に練習すると約束したからな! 俺が怠けるわけにはいかねぇんだ!」


 なんて言いながら。


「おいおいシュルカ、お前なんかラーサと言うことが似てきたぞ? こいつなんか見習っても、男勝りになって怖がられるだけでなんも良いこt...嘘です! マジで! ごめんなさい‼︎ めっちゃ良い淑女になるだろうと思うよ⁈ 思ってるマジで心から‼︎ 」


 呆れた顔でロウラを見ていたラーサは、ロウラの話の途中の言葉にピクッと反応したかと思うと、それはそれは良い笑顔で全力で拳に力を込めて構えた。

 もちろんその拳が目指す先はロウラの顔である。


 次の瞬間バキィッと音が聞こえてーーシュルカは思わず目をつぶってしまったーー恐る恐る見ると、ロウラはベッドから数メートル吹っ飛んでいた。


 ーーラーサ、怒らせちゃダメ、絶対。


 シュルカはそう心に刻むと、ロウラの横に歩いていき、


「...大丈夫?」


 と声をかけた。


 ロウラは、


「くそあの馬鹿力...。カイルならこの気持ちわかってくれるはずなのに...。」


 とかなんとか、涙目でブツブツ呟いていた。


 ーーそれ聞かれたらまた殴られると思うけどなぁ。


 ははは...とシュルカが苦笑すると、


「僕は女の子を怒らせるような真似はしないけど。」


 と後ろから声が聞こえてきた。


 はっ、と振り向くとちょうどカイルが部屋に入ってくるところで、


「「「カイル‼︎ 」」」


 と3人の声が被った。

 カイルはそれににこっと笑って答えると、


「お見舞いが遅れてごめんね。少し実家に帰っていたんだ。」


 と言った。

 まぁそれは嘘ではない。実際、カイルは色々とに報告をしていたのだ。そのとは王家なわけだけど。


 そんなことはもちろん知らないラーサが、


「もう私たちのことなんて忘れちゃったのかと思ったわ! そういえば、魔法も使えたと聞いたけど?」


 と頰を膨らませて尋ねる。


 カイルは闇魔法が使えるということは、先ほどの話の中で伝えてあった。風魔法に関しては、"剣を投げて当てた"ということにして隠したけれど。

 なぜなら、複数の適性を持つ者は本当に珍しく、王家に血筋がない者以外では全くと言っていいほどいないからだ。

 ちなみに、その例外がのひとりアラン師団長なのだ。

シュルカがその設定を頭の中で思い返していると、


「ごめんね。両親がうるさくて、どうしても一度帰る必要があったんだ。魔法に関しても、両親に口止めされていてね...。それでも、君たちとはまだ仲の良い友だちでいられると思いたいんだけど...ダメかな?」


 と寂しそうな顔をしてカイルが答えた。

 するとすかさず、


「んなのわかってるって! 俺はもちろん仲間だと思ってるぞ? 心が狭いラーサさんは知らないけど。」


 とニヤッとしながらロウラが言った。

 なんともわかりやすい意趣返しである。

 だがラーサは焦ったようで、


「ちょっ、違うわ! そういう意味じゃなくて...ちょっと言ってみただけよ。私だってもちろんカイルとは良い友達だと思ってるもの!」


 と叫ぶと、助けを求めるようにちらっとシュルカを見た。

 シュルカはというと、

 ーーやっぱりカイル演技上手いな...

なんてぼけーと思っていたもので、反応が遅れてしまう。


「えっ、あぁ、そうだよ、カイル。私たちみんな一緒に頑張った仲間だと思ってるよ(?)」


 と最後に小さくクエスチョンマークがついてしまったことに、カイル(の中のカーティス殿下)は目ざとく気がついたようだがとりあえずは無視してくれるようで、ほわっと表情を崩した。


「そうか。それは良かった。そう言ってくれてすごく嬉しい。これからもよろしくね!」


 そう言って笑う見た目はまるで天使のようだ。

 見た目だけだけど。


 そうして無事...ととりあえず言っておくが、和解したあとは、ときどきみんなでロウラを弄りつつも4人で時間を忘れて楽しく話したのだった。

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