23.演習が終わりました

 そのあと、リィナさんたちと一緒に帰りながら色々と話した。


 ちなみに、眠っている6人は兵士さんたちが背負ってくれ、気を失わせた敵は、騎士団の応援が来るまで拘束した状態で数人の兵士さんが見張ることになった。


 話を聞くと、リィナさんは、全グループ送り出したあと本当は本部待機でグループの帰りを待つはずだったらしい。そして、各グループからの救助要請に沿ってリィナさん以外に教官として来ていた騎士らに指示を出す立場だったようだ。


 それが、今回の演習では全く救助要請が入らなかった。いつもなら、開始冒頭から数グループの救助をすることもあるのに。


 魔法具が壊れている可能性を危惧したリィナさんは、騎士に見回りをするよう指示を出した。

 見回りに当たった騎士たちが見たのは、ゴブリンやキラービー(大型の蜂の魔物)の、この森ではほぼ見られないくらい大きな群れに襲われている複数のグループ。

 しかもかなり苦戦していたところ、既に救助要請を出したところもあったようで、怪我人も多数出ていた。


 こういった大きな群れが全くないという訳ではもちろんないのだが、全グループ同じような襲撃を受けているのは流石に変だ。そして、そういうときに限って調子の悪い魔法具。


 ーー何かがおかしい。


 そう気を揉みつつも、とりあえずは当初通りリィナさんは本部でグループの帰りを待っていたらしい。

 そうして、救助したグループの手当をしたり、なんとか演習を終えて帰ってきたグループを迎えたりしていたのだが。


 順番的にはある程度早く帰ってくるはずの第4グループが帰ってこない。

 そして第7グループも。

 加えて、慌ただしく走ってきた兵たちによれば、カーティス殿下がこの演習に参加しているかもしれないとのこと。


 その間にも増えるけが人。


 そうした事態から、"新人演習で人為的に起こされた何かがあり、それにカーティス殿下が巻き込まれている恐れがある"、そう判断したリィナさんは騎士団と魔法師団に報告をあげ、自ら殿下を探すために森に入ったそうだ。

 そして森で捜索をしているとき、いきなり強い光が見えたのでそこに向かって走って行ったらーー、ということだったらしい。


「本当焦ったよ...まさか誘拐未遂なんて。」


 リィナさんはそう言ってはぁ、と大きなため息をつく。


「私も驚きました。カイルーーカーティス殿下は何か気づいていらっしゃったみたいですけど。」


ーーうーん、カイルに対して敬語を使うの慣れないなぁ。


 という心のうちを読み取ったのかどうなのか、


「公式の場でなければカイルで構わない。私もその方が楽だ。」


 とカイルが言ってくれ、その言葉にほっとする。


 ーーほっとしたのだが。


「ちょっと待って! カイル、カイルが王太子ってことはこの瑠璃は...⁈」


 そう言って、魔法を使うために預かっていたカイルの瑠璃の首飾りを取り出すと、


「ッ。」


 とリィナさんが声にならない悲鳴をあげた。

 兵たちも"ピシャーン"なんて効果音が聞こえそうな顔で固まっていた。


 ーーあ、やっぱりこれ相当なものだよね。やばいよね。


 焦りつつ恐る恐る差し出すとカイルは、あぁ忘れてた、なんて顔をしてから


「これは王太子が代々受け継ぐものだ。とはいえ私は水の適性はないから形だけだが。」


 と言って受け取った。


 そんなもの人に簡単に渡さないでよ...。

 そう思ってシュルカやリィナさん、兵士らはため息をついた。




 -・*・-

 そんなやりとりがありながらもしばらく歩くと、森の外れが見えてきた。

 と、そこに人が立っているのが見えた。


 ーーリィナさんによると他の新人の人たちは帰されたみたいだし...取り調べの騎士さんたちとかかな?


 そう思って歩いていくと。


「ふ、シュルカ!」


 そう声を上げて師団長が駆け寄ってくる。


「アラン師団長⁈ どうしてこちらに?」


 それを見てリィナさんが驚きの声を上げた。


 どうやら、この人はまた執務を投げ出して勝手な行動をしていたらしい。

 しかも先ほどの発言ーー本人は隠したつもりだろうがーーそれを思うにその理由とは、フテラが心配で、ということのようだ。


 ーー相変わらずだなぁ。


 いつもなら呆れるところだが、今はそんな"いつも通り"が懐かしく感じる。


「フテラは魔力切れか。...シュルカ、よく頑張ったね。」


 しかも優しいバージョンときた。

 あ、待って、また泣きそう。


 涙をなんとか堪えて、


「...はい。」


 と声を出す。

 が、その声は震えてしまった。

 すると、その様子を見ていたカイルが


「へぇ? アラン魔法師団長が優しい言葉をかけることもあるのですね。」


 そう言って私の横に立った。


 アラン師団長はカイル、もといカーティス殿下を見ると、目を瞬き、なぜか一瞬盛大に眉をひそめた後とても綺麗な笑顔を作るとこう言った。


「カーティス殿下、いらっしゃったのですね。これは失礼を。...それにしても、先に何かあると分かっていらっしゃったのなら、その情報は誰かに伝えるべきだったのでは? そうすればここまで大事にならずとも済んだでしょう。」


「ちょ、アラン師団長!」


 ーー流石にそれは言い過ぎでしょう!


 そうシュルカは思ったのだが、


「そうですねぇ。騎士団の方にでも話を上げておくべきでしたね。」


 と、カイルは全く師団長の物言いに意に介さない様子で答えた。


 めっちゃ笑顔で。


「フテラの様子を見るに、今回は魔法が役に立ったようですが?」


 師団長も即座に言い返す。


「あぁそうですね、シュルカは凄かったですよ。これからも友達として仲良くしていきたいです。」


「私の部下に貴方のお友達なんて重い役はやらせませんよ。」


「彼女自身は楽しそうでしたよ?」


「貴方に気を使ってでしょうね。」


 ......


 そんな応酬が始まってしまい、完全に入る隙をなくしたシュルカの肩を引っ張り、リィナさんがこそっと耳打ちしてくれる。


「あの方々は、少し性格が似ているからね。顔を合わせれば必ずこうだ。無視して良いよ。」


 ーーなるほど、これはまた厄介な友だち関係を作っちゃったなぁ...。


 そう思いつつも、綺麗な笑顔で言い合いを続ける彼らを見守るしかなかった。

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