13.訓練をしました

 その後、現実に戻ってきたアラン師団長と色々検証した結果、フテラは純血のフェンリルと同じように光魔法に適性が高いことが分かった。


「とはいえ、フェンリルは上位魔物だから光魔法以外もある程度強い魔法が使える。正直言って、新人が相手出来るような魔物じゃない。そこは君が気をつけるんだよ、シュルカ。」


「はい。気をつけます。」


「それじゃあ、少し借りてもいいかな?」


 にこにこにこにこ。

 そんな副音声が聞こえてくる。


 あぁ、予想はしてたけど、やっぱりそういう対象じっけんたいとして見てるのかこの人は!


「フテラと慣れ親しむために孵化を急いだんです! だからそのお願いは聞けません!」


 フテラも何か不穏な空気を察したのか耳と尻尾が丸まっている。


「それにリード騎士長にも見せなきゃですし! それじゃあ失礼します! ありがとうございました!」


 あの人が何か恐ろしいことを言う前に部屋を出なければ...そう急いで外に飛び出ると、扉が閉まる瞬間、


「...シュルカはどの魔法が良いのかな?」


 という魔王の声が聞こえてきたのだった。


 あぁ、フテラとやっと出会えたのに私の死期近いかもなこれは...。




 -・*・-

 その後、フテラを抱いた私は、リード騎士長のいる第8騎士団の訓練場に来ていた。

 リード騎士長は何かしらの指示を出していたが、私と私の腕に抱かれた魔物に気づくと、ひとりの騎士団員に何かを告げてこちらへ歩いてきた。


 あ、そりゃ、訓練中ですよね...邪魔しちゃったなぁ。


「あの、お忙しければ、今日の訓練が終わった後でも大丈夫なので...。」


「今日はいつもやってる訓練だから、あいつらに任せておけば問題ない。それよりも、君の演習は明日でしょう? 今はそっちの方が大事だ。自分の団の新人さんに怪我をさせるわけには行かないからね。」


 それが当たり前だ、というように言う。


「...ありがとうございます。今日はよろしくお願いします!」


「うん、よろしく。えっとそれでーー、」


 そこまで言って、リード騎士長がフテラを見て目を見開く。


「あの卵からその子が⁈ これは驚いた。フェンリル、で良いのかな?」


「あ、はい。えと...アラン師団長曰く、フェンリルと何かの合いの子、らしいです。でも魔法は光適正なのでフェンリルと見て問題はないと。名前はフテラと言います。」


「そうか。良い名をもらったな、フテラ。」


 フテラはリード騎士長の大きな手に撫でてもらってご機嫌のようだ。


「フェンリルってことは成長すれば乗れるようになるだろうけど、明日には間に合わないし、シュルカもまだ乗れないだろうから、他の戦い方にしよう。」


「まずはーーーー。」





 -・*・-

 そうしてあらかたの戦法を習い終わったときには、もう夕暮れだった。

 途中で飽きたフテラは、ブラックドックの子と一緒に遊んだあとそのまま2匹で仲良く寝てしまっていた。


 夕暮れの風が銀と黒の毛を軽く撫でていき、2匹はとても気持ち良さそうだ。


 私は汗だくになって必死に覚えていたのに。


「心配?」


 私が恨みがましい目でフテラのことを見てたのに気づいたのだろう、リード騎士長がそう尋ねる。


「...はい。練習ではあまり言うことを聞いてくれませんでしたし。」


 フテラは私のことを、親代わりかつ友だちとしか思っていないようだった。

 確かに1から絆を作る必要はなかったけれど、いざ戦うときにこの関係性ではいささか不安が残る。


「そうか。うーん、でもそれはシュルカ、君が変われば自ずとフテラも変わっていくと俺は思うよ。」


「え、私が、ですか...?」


「そう。君は実際に自分の命をかけて何かと戦ったことはないだろう? さっきの君は確かに真剣だったけど、本当に戦うときとはやはりどこか違うんだろう。」


 ふっ、と笑ってリード騎士長が言葉を告げる。


「魔物たちは、俺たち人間よりもずっとその気配や感情に敏感だ。...だから、君が本当にフテラを必要として共に戦おうとしたときは、きっとフテラも力を貸してくれるよ。」


 ね? というように首を傾げる。


 そんな騎士長と、その後ろにいる騎士長の相棒のスレイプニルーーレオンの、お揃いの真っ白な髪と毛が夕焼けのあかを写して、綺麗に輝いていた。


 私も、ううん、私たちも、こんな風になれる日が来るのかな?


 いや、なるんだ、きっと。


「...はい。私もフテラを信じます‼︎ 」


 ーー騎士長がレオンを信じているように。


「うん、応援しているからね。」


「頑張ってきます!」


 その意気だ、と優しく騎士長が笑う。

 その笑顔に、シュルカの不安も何処かに吹き飛んでいた。

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