10.彼女の我儘(閑話)

「何よ、あんな親しげに笑っちゃって...。あの方を最初に見つけたのはわたくしなのに!」


 ボスボスッと思うままに枕を殴る。


「あの女、どんな色目を使ったのかしら? あぁ、あのお方もなんであんなのに惑わされて...。」


 思い出すたびにムカついてくる。

 あのお方が私以外の前で声を出して笑うなんて許せないわ。


 ボスボスボスッ。


 ...ふと手を止めて思う。


「私も、あんな風にお話ししてみたいわ...。」


 あのお方だからこそ、身分に気を使ってしないだろうけれど。そんなところも好きなのだけど、でも、やっぱり、


「...寂しいわね。」


 少し鼻の奥がツンとする。


 淑女たるもの、人の前では常に完璧な笑顔を作り、隙は見せないようにしていた。

 でも、こんなに満月が綺麗な夜、ひとりでベッドの上にいるときくらい許されても良いんじゃないだろうか。


 ぽた、ぽた。


 あぁ嫌だ、泣いてしまう。


 そんな甘えはだいぶ前に捨てたはずなのに。


 目の下を腫らして朝食に行けば、父上も兄上もみんな心配する。


 心配かけたいわけじゃないのに。


「こんなの、私らしくないわ。」


 そう、私は常に努力して欲しいものは掴み取ってきた。今回もそうするだけだ。


「まずは、あの女について知ることからね。侍女は知っているかしら?」


 そうと決まればやる気になった。


 私の、愛しいあの方と、少しでも近くにいるために。


 これは、ひとりのお姫様の、少しの我儘のお話。

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