7.なんだか逞しい方々でした

「えぇと、水は勿忘草わすれなぐさっと。」


「ーーーー潤え。」


 途端、目の前の植木鉢に植えられた花に朝露のように湿気が落ちる。


「よし、これで基本形マスターだ!」


 シュルカが練習していたのは、アラン師団長からの課題である、透明の魔力を除く他の適性の基本魔法。基本とは実際その通りで、魔法とは言っても闇なら小さく影を落とし、風ならろうそくの火を吹き消す程度のレベルだ。ちなみにこの国の魔力持ちの子が通う学校では初等教育課程で学ぶもののようである。


 今日は3回目のアラン師団長の授業。

 先週はそれぞれの適性が持つについて学んだ。

 曰く、闇は静寂・光は癒し・火は温度・土は覚醒・水は清浄・風は繋ぎ、だそうだ。

 これらは初歩の魔法程度ならほぼ関係ないのだが、威力が強くなるに従ってその魔法に大きな効果を与えるらしい。


「今日は何を教えて貰えるのかな?」


 アラン師団長の教え方はとても分かりやすかったし、魔法への興味は高まるばかりだった。


 自分では、魔法を使ったとき自らを取り巻くオーラが見え辛いのは残念だけれど。


 そんな風に考えながらアラン師団長の部屋に向かって歩いているとき、大きな歓声が聞こえてきた。


「何だろう?」


 それは渡り廊下の横にある広場から聞こえてくるようで、少し気になったシュルカは覗いてみることにした。


「アラン師団長?」


 広場より少し離れて立ち、歓声が聞こえてくる元を見ていたのはアラン師団長だった。


「あれ?シュルカ、君に今日はここに来てって言ってあったっけ?」


 もちろんそんな話は一度も聞いてない。


「いえ、たまたま師団長の部屋に行くときに歓声が聞こえたので見に来ただけです。」


「...ちょうど試したい魔法があったんだけどなぁ。」


 つまりそれはあれですか。

 私を嵌めて、その罰になんかの実験体にしようとしてたってことですかね。


 なんて恐ろしい奴だ!


「気づいて良かったです。」


 心からの言葉である。


「ところで、これは何をしているんですか?」


「あぁこれは、騎士団の模擬戦だよ。今日は魔法の勉強じゃなくて、騎士団の方を案内しようかなとね。騎士団は今日の午前中はここで模擬戦のようだけど、午後は休暇だって聞いたからちょうど良いと思って。」


「そういえば、私の所属予定の魔物駆りは魔法師団にも騎士団にも属しているんでしたっけ?」


「そう、第3魔法師団、兼、第8騎士団だよ。あの端にいるのが君の同僚になる人達だね。」


 と指差す方を見てみれば、なんだか筋骨隆々な人々が多い区画だった。


「...た、逞しい方々が多いですね。」


「魔物を従えるっていう特性ゆえなのか、見た目からして強そうな男が多いんだよね、透明の魔力持ちは。」


「あぁでも、第8騎士団の騎士長は細身だよ。ちょうど今団長と闘ってる。」


 そう言われて広場の真ん中を見ると、そこでは、赤髪の、見るからに騎士団全員の中でもトップレベルのマッチョさんと、白髪でしなやかな動きをする騎士が物凄い攻防を繰り広げていた。


「あの白髪の方ですか。」


「そ、相変わらず強いんだねぇ。あの筋肉バカとやりあえるのはあいつくらいだよ。」


 マッチョさんの方は1つひとつが重そうな豪剣だが、それを切り抜け剣を振るう白髪さんの剣は速くて無駄のない綺麗な剣だった。

 思わず見入ってしまった。




 -・*・-

 なんとこの攻防がめちゃくちゃ長かった。いくら見とれてしまったとはいえ、剣の型も何も知らないシュルカにとっては退屈になってしまう。


「...いつ終わるんです?」


「この人達、決着ついたことがないんだよねぇ。多分もう少しで審判が止めて引き分けになるよ。」


 そのとき、


「そこまでっ!この試合、引分けっっ!」


「あ、ちょうど終わったね。」


 騎士団全体からは締まりのない結果にブーイングが飛び交っていた。


「いつものことだよ。さぁ行こうか。」


 なんというか、この集団の中で生きていくと考えると魔法師団とは別の意味で辛いんですけど...。と思い悩みつつ師団長の後をついていくと...。

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