第138話 渾身のアタックタイム
ストレートをアクセル全開で駆け抜け、一気に1コーナーへと差し掛かる。
おーっし!! いったるでえ!!!・・・・と車内で叫びつつも、身体はしっかりとクレバーな走りをするように、ステアリングやアクセル、ブレーキ操作をするように動かした。
回り込むような1~2コーナーにアプローチするために、1コーナーを少し安全目にターンインし、しっかりとクリップを取りながら、2コーナーのクリップに付けるように微調整を繰り返し、クリップに付ける向きになってから一気にアクセルを全開にし、立ち上がる。
そして少し長い直線を過ぎて、次の3~4コーナーも同じようにクリアしていく。
ユリと基本的には同じように、速度を殺さないように、コーナーからの脱出スピードを上げて、なるべく車速をしっかり保つようなドライビングをしつつも、私は自分の持ち味であるスムーズさをそこで心がけた。
ユリは同じような走り方をしていても、どちらかと言えば一つ一つの動きが切れのいい、シャープに向きを変える乗り方をしていたのだが、私の場合はステアリング動作などを極力ゆっくりとして、線形にしていくような乗り方をしていた。
ここに関しては単に走り方の個性が出ている・・・・くらいの違いの範疇ではあると思うけれど、ジワジワ線形で動かしている私の方が少しでもタイムが出せるかも・・・・?という希望的観測もあった。
5コーナーではインに長くつくように、ブレーキを詰めつつもしっかりと突っ込んでいき、次の高速コーナー群でも綺麗に抜けられるように駆け抜けた。
そして、私が一番に楽しみにしていたS字コーナー群がやってきた。
「ユリはココをいい感じに抜けてたものね・・・・ 私だってやってみせる!!」
車速コントロールを万全にしながら、アウト側から一気にイン側に付くようにアプローチし、一気に二個目のクリップ目がけて向きを変える。 そこでも操作をジワっとさせながらもなるべく素早く向きを変えられるようにし、クルマの鼻先をスッとインに付けた。
車速もバッチリ。 めっちゃくちゃ決まった。
「いよおっし! やりいい」
思わずガッツポーズを決めそうになるほど、ここのセクションは完璧にこなせた。
後は後半セクションだな・・・・ 深めのコーナーが多いから気をつけなきゃ・・・・!!
心の中で言い聞かせ、V字コーナーをインベタで抜けると、バックストレート前のヘアピンコーナーに差し掛かる。 ここでも早めにブレーキングをしっかりしてから、脱出で一気にスピードを乗せていく。 ここを抜けるとダウンヒルストレートになる。 下り勾配で非力なフィットでもドンドンと車速が伸びてきてスリル感が出てくる。
続いて90度コーナー。 下りながらのブレーキになるのでちょっとだけヒヤヒヤしたけども、フィットは車体が軽いこともあって、しっかりと減速しながらのアプローチができた。
・・・・っとここで一瞬左側に車体が滑り、私は咄嗟に軽めのカウンターを当ててしまった。
「おおおお・・・・あぶねええ・・・・」
なんとかロスが大きくならないように留めると、最後のビクトリーコーナーに向けての組み立てを始めた。
ここでも、視線をホームストレート立ち上がりにおいて、堅実にアプローチすることを心掛けた。 チームのみんなをびっくりさせられるようなタイムを・・・・絶対に出してみせる・・・・!! そんな思いをのせ、スムーズに抜けるとあっという間にホームストレートがきた。
「戻ってきた・・・・後は、タイム・・・・!!!」
ゴールラインまで私は、床を突き抜くくらいの気持ちでアクセルを踏み続けた。
あともう少し・・・・!
続く
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