第130話 アレサとリトルモンスター

アレサのチームのピットに入るや否や、これまたスペシャルなマシンがそこに佇んでおり、私は度肝を抜かれた。


「アレサ・・・・また凄いクルマ持ち込んだねえ・・・・ こんなド派手なMINI初めて見たよ」


「フッフッフ・・・・ 最高にアタシらしいクルマでしょ・・・・うちの至宝、MINI-JCW チャレンジカー!!」


そう、アレサが持ち込んでいたのは、イギリスの名車MINIを用いてワンメイクレースを行う、MINIチャレンジで用いられるワンメイクレースカー、「MINI-JCW チャレンジカー」だったのだ。


見た目こそ、市販のMINIジョンクーパーワークスとさほど変わらない見た目に思えるが、中身はレーシングマシンとして戦えるようにすべくモディファイが施され、エアロパーツの追加、カーボン製の内装部品や、一部内装部品のオミットによる軽量化、ロールケージ&フルバケシートの搭載による安全確保、シーケンシャルミッションの搭載など、中身は純然たるレーシングカーとして仕立てられている。1080キロの車体に220馬力の2リッターターボエンジンの組み合わせ・・・・ 戦闘力的にも不足のない、MINIらしいリトルモンスターなのだ。


ユリはこれを、わざわざ新車でイギリスから取り寄せ、イギリスのナショナルカラーであるブリティッシュグリーンに塗って、自らのショップのステッカーを貼りカラーリングを決めてバッチリ乗り込んできていたのだった。


なお、アレサ曰く、レギュレーションに合わせるためにタイヤはきちんと市販品のスポーツタイヤに履き替え、内装部品を取り付けたり、バラストを乗せて重量を重くし、ヘッドライトの装着を行ったうえで今回の参戦に臨んだそうな。


午後ティーを飲みながら、私はマジマジとマシンに見入る。


「いやあ、ほんと流石だねアレサ。 こんないいクルマをレースに持ち込むなんて」


「ん~ まあ、ぶっちゃけるとこのクルマは半ばお店に展示するために買ったんだけどさ、やっぱ走らせないともったいないじゃん? それに、今回これでいい感触が掴めれば、MINIチャレンジに今後エントリーも考えようかなあ・・・・と思って。 今回は楽しく走れればいいかなってさ」


アレサは涼しい笑顔を浮かべてそう言った。 けれど、彼女も元々は私と同じ走り屋。


きっと熱い走りをしてくるはずだ。


「ところで、ユリは何のチームで出てるの? もしかしてこの間、榛名で遊んだ子たちと?」


「流石アレサ鋭いねえ。 そうだよ、この間一緒にいた子たちがチーム立ち上げててさ。 そのお手伝いみたいなもんよ。 クルマはホンダのフィットなんだけど」


「フィットかあ、いいじゃない! Joy耐の総合優勝争いの常連マシンらしいじゃんね。 このレース、給油量も決まってるし、燃費も重要な要素になってくるしねえ・・・・ うちはクルマ燃費悪いし、どうこなそうか・・・・ ま、お互い頑張ろ」


「うん、そうね。 お互い楽しんでこ!」


私とアレサはそう言って握手を交わした。 もう暫く話し込んだ後、私は自分のとこのピットへと戻った。


続く。

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