第128話 完璧な仕上がり。
フィットをピットロードからコースへと解き放つと、私はゆっくりクルマの感覚をつかみながら、一週目を走り切り、二週目からは一気にペースを上げていった。
「よーし、見せてもらおうか! このフィットの実力とやらを!!」
と、どこぞのアニメの赤い人気者っぽいセリフを口ずさみながら、私はフィットを思い切りよくコースで走らせた。
フィットは思っていたよりもずっと仕上がりがよく、私は楽しくドライビングに集中することができた。 エンジンは軽快に吹き上がり、1トンあるかないかの軽い車体をグイグイと引っ張り、ユリがセッティングした足回りはしっかりと地面を捉えて、進路を綺麗にトレースさせてくれた。 ユリは、あの性格柄、結構ピーキーなセットにまとめ上げてくるだろうという勝手な予想を自分で持っていたのだが、乗ってみると全然そんなことはなく、安定感もしっかりありながら、切れ味よくコーナーを抜けられるものに仕上がっていて、誰が乗ってもしっかりタイムが出せるようなものに仕上がっていた。 これなら、長い間速いペースを保って走る耐久レースでも、心配なく走れる・・・・!!
ユリは運転に関しては相当なセンスがあることは前から感じていたが、まさかこんなに高いセッティング能力を持っているとは思わず、本当に驚いていた。
ユリ・・・・実は結構なんでもできる天才肌の人間なんじゃ・・・・?と思いながら、あっという間に数週を走り切ってしまった。 うん、これなら確かにいける。
私はまたピットへとフィットを戻した。
フィットから降りると、ユリが真剣な顔をしながらこちらに駆け寄ってきた。
「凛子、クルマはどうだった・・・・? しっかり走れた・・・・?」
「うん、大丈夫!! 完ぺきだったよ! これならみんな楽しく速く走れると思う!」
そう言って、私はニコッと笑ってサムズアップをして見せた。 ユリも、そんな私を見て、ほっとしたような優しい笑顔を浮かべてくれた。
「ほんと・・・・? よかったあ・・・・!! 凛子がそう言ってくれたなら、本当に安心だよ。 こんな仕事任されたの今回が初めてだからさ」
「いや、本当によく仕上がってたと思うよ! ユリの運転のセンスの良さは前から知ってたけどさ、こんなにクルマを完ぺきに仕上げられるセンスがあるのは本当すごいよ!」
「へへへ・・・・まあ、アタシは天才だからね・・・・アハハッ」
ちょっと照れたように、ユリはそういった。 高飛車なユリらしいセリフを久々に聞けてちょっと楽しい気分にもなった。
「さあて、クルマに関しては問題ないみたいだし、あとはセリカと莉緒の慣らしね。 二人とも、準備はいい?」
「はい!いつでも!!」
「よし、続けて二人の練習走行も開始!!」
ユリの掛け声と同時に、セリカと莉緒の練習走行に向けての準備をすぐに始めた。
続く。
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