第1131話 ソフィー達との再会



「チチ、チチチー!」

「うん、ありがとうフレイちゃん。絶対また呼ぶからね」

「チー!」


 お別れの挨拶をして、フレイちゃんも他のスピリット達と同じように、空気中に溶け込むようにして消えていく。

 フレイちゃん達を呼ぶような状況って、早々ないとは思うけど……絶対にそのうちまた呼ぶ必要が出て来ると思うからね。

 まぁ、フレイちゃん自身は、何か用がなくても呼び出したら喜んでくれそうではあるけど。


「はぁ……とりあえずは、魔物達の殲滅は完了だ」

「中々面白い物が見られたのだわー」

「……」

「アマリーラ様?」

「ん、アマリーラさん、どうかしましたか?」


 スピリット達が全員いなくなって、眼下では魔物達の姿がほとんどない……まぁまだ、アーちゃんの作った舞台の外にいたのが、いくつか残っているようだけど、すぐに討伐されるだろう。

 広い範囲で点々といるくらいだから。

 ホッと一息ついてエルサと共に呟いていると、アマリーラさんが真剣な表情で何かを考えている様子。

 リネルトさんが気付いて声を掛け、それを聞いて俺も気付いた。


「……リク様!」

「は、はい!?」


 突然、キッと鋭い眼光を俺に向け、名前を呼ぶアマリーラさん。

 急にどうしたんだろう?


「リク様、一度我らが獣人の国に行きましょう! 獣王様と会うべきです!」

「え、えぇ!? 獣人の国って言われても……」

「精霊様を召喚。しかも伝え聞く精霊様全てを召喚できるリク様は、獣神様とは言わずとも、近い存在と感じました。是非一度、獣王様とお目通りを! 我ら獣人、リク様を全力で歓迎いたします!」

「リク様が私達の国に来たら大騒ぎですねぇ。精霊様を召喚できるとなると、国賓級……それ以上?」

「いやいやいや、歓迎してくれるのは嬉しいですし、機会があれば行ってみたいとは思いますけど……」


 今すぐ行きましょう! というわけじゃないんだろうけど、帝国との問題がある以上しばらくは獣人の国に行けそうにはない。

 獣神様とか、獣王様とかにも興味はあるけどね。

 とりあえず、諸々の問題が片付いたらとか、いつか機会があれば……なんて玉虫色の返答で誤魔化して、なんとかアマリーラさんの誘いを断っておいた。

 途中、心惹かれる提案もあったんだけど、さすがにそれに乗ったら色んな所からの追及が激しそうだったし……。


「あ、リクー! リクなのー!」

「久しぶり、とでも言えばいいのかな?」

「リク様、御無事で何よりです」

「ユノ、ソフィー、フィネさん」


 アマリーラさんからの誘いを断り、まだ状況が詳しく把握できていないと思われる、南門付近の人達に説明するため、門の内側に降りる。

 詳細に関しては、俺の近くで見ていたアマリーラさんとリネルトさんにお任せだけど。

 エルサから降りて、離れていくアマリーラさん達を見送っていたら、懐かしくも頼もしい声が聞こえた。

 声の聞こえた方では、ユノとソフィー、フィネさんが揃ってこちらに手を振っていた。


「リク、リク、リクなのー! リクが無事なの!」

「うぉっとと……ユノ、心配かけたね」

「ううん、全部あいつが悪いの。あいつがリクを攫ったの……」

「ユノはさすがにわかっているか……まぁ、時間稼ぎされちゃったよ。けど、なんとか抜け出してきたよ。……少し遅れちゃったけど」


 ユノはさすがに、俺が破壊神と直接拘わった事がわかっているんだろう。

 エルサから降りた俺に飛びつくユノを受け止め、それでも戻って来た事を伝えるように頭を撫でる。

 ……なんだか、さっきまでいたフレイちゃんとそう変わらない対応になったね。


「いいの、リクはちゃんと間に合うように帰って来たの! あいつから、何か聞いたの? ここよりあっちの方が余裕はないはずなのに、こっちに来ているの」

「リク、ユノが言うあいつというのは? 私達には、きっとリクはすぐ戻って来るからと言って、教えてくれないんだ」

「ソフィー達には、また後で皆が揃った時にでも教えるよ。モニカさん達にも話さないといけないからね。――ユノ、あいつが言うには、この南側は魔力溜まりを発生させるのが狙いらしいんだ。だから、戦闘を長引かせず、先に魔物を殲滅して阻止しようと思ったんだよ」


 ユノの言う通り、状況的に不味いのは東門の方だった。

 それもこちらに来たのは、破壊神に教えられた魔力溜まり発生の狙いを阻止するため……フィリーナもその可能性を言っていたから、間違いない。

 ソフィー達へ、俺が破壊神に隔離されてだのなんだのは、後でまとめて説明する事にして、とりあえずシュットラウルさん達との相談内容を伝える。

 クォンツァイタの利用法なども含めて、簡単にだ。


「成る程な……魔法具がほぼ使い放題という訳か。それなら、東門もまだまだ耐えられるだろう」

「魔法具の数や性能次第では、押し返す事も考えられますね」

「リクが、ここに来る前に一撫でしてきたから、今頃押しているのだわ?」

「一撫でって……まぁ、勢いをそいである程度の被害を出すようにはしたけど。それにしても、ソフィー達は外壁の上で見かけなかったけど、どこにいたの?」


 エルサの言い方はさておき、俺がぶっ放した後に魔法具使い放題になれば、フィネさんの言う通り押し返す事もできるかもしれない。

 ……それだけの体力が、東門に集まっている兵士さん達に残っていればだけど。

 それはともかく、アマリーラさん達と再会する前に外壁の上で、アンリさんや元ギルドマスターと話した時はユノ達の姿を見なかった。

 投擲の練習をしていたし、フィネさんなら外壁上から魔物を狙う事もできたと思うけど……。


「私達は、門に詰め寄る魔物を迎え撃つ役目だったからな。門のすぐそばにいた」

「最前線で頑張っていたの!」

「撤退する者達を援護し、魔物を門の内側に入れないよう、ユノちゃんが頑張っていました」

「そうだったんだ。そりゃ、空を飛んでいたら見えないか」


 門の付近は多くの人や魔物が入り乱れていたし、門や外壁の影になって空から見えなくてもおかしくない。

 そうか、ユノもそうだけどソフィー達も頑張ってくれていたんだね。


「ユノやソフィー達とも話せたし……そろそろ俺は行くよ」

「どこに行くんだ、リク?」

「サマナースケルトンは、さっき召喚したアーちゃん……あ、アーススピリットって精霊で、他にも……」


 まだやる事が残っているため、ある程度ソフィー達と話して改めてエルサの背中に乗る。

 サマナースケルトンは倒しても、まだ取り除かなければいけない魔物いる……ワイバーンだ。

 どれだけの数がいるのかはわからないけど、なんとかして他から魔物を運ばれても面倒だし、ワイバーンが直接攻めて来ても面倒だから、今のうちに対処しておきたい。

 特に、空を飛んでいるワイバーンに対して、センテは無防備だ。


 まぁ、近付いてくれば魔法で撃ち落としたりできるだろうけど、魔物の運搬を諦めて大量に向かってきたらその限りじゃない。

 通常よりも、再生能力の高いワイバーンは魔法が使えず、戦闘能力そのものは低いみたいだけど、それでも十分強力な魔物だからね――。


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