第1126話 四大元素のスピリット召喚
「初めまして、召喚主様。こうして、全てのスピリットを召喚されるのは初めてですね」
「ようご主人! すげぇな、美味い魔力なだけでなく量も大盤振る舞いだ! しかも、俺達スピリットを全て呼び出すたぁな!」
「えーと、そっちがウォータースピリットで、こっちがウィンドスピリット……だよね? フレイちゃんと違って、喋れるんだ……」
緑色の青年の形になり、恭しく頭を下げているのが多分ウィンドスピリット。
風を纏っているのが目で見えるのが、少し不思議だけど多分そうだ。
青い妙齢の美女の形になったのが、ウォータースピリットかな……きわどい部分が周囲に漂わせている水で隠しているから。
……ウィンドスピリットは礼儀正しい執事みたいな雰囲気で、ウォータースピリットは一人称が俺の男気溢れる姉御的な話し方。
正直なところ、俺のイメージでは風は悪戯っぽい少年で、水は柔らかな女性的な感じだと思っていた。
まぁ日本のアニメとかの影響だろうけど。
でも、フレイちゃんは言葉を話さないのに、他は喋れるんだね。
「フレイムスピリットは、その性質から燃える体です。水や風、土を震わせて話せる私達とは少し違います」
「そ、そうなんだ」
「チチッ!」
よくわからないけど、火は振動させて話ができる程の細かい音を出せないって事で納得しておこう。
何故か得意気なフレイちゃんは、自分だけ特別! と言っているようだ、ちょっとかわいい。
「って、あれ? ウィンドスピリットとウォータースピリットは確認したけど、アーススピリットは? 失敗?」
「あぁ、アースのやつも特殊だからな! もうちょっとしたら、話しができるくらいになると思うぜ! あそこを見てみな!」
「ウォーター、召喚された我らが主様に失礼ですよ。もう少し丁寧な言葉遣いをしろと、いつも言っているではないですか」
「ははは……まぁ言葉遣いは話しやすいのでいいんだけど。成る程、確かにまだ形が作られている途中なんだ」
ちゃんとした形になって、話しかけてきたのはフレイちゃんの他に、水と風のスピリットだけ。
アーススピリットの方は失敗で、さすがに四つ全ての元素の精霊を呼び出すのは無茶だったかな……と思ったら、そうでもないみたい。
ウィンドさんに注意されているウォーターさんの示す方向を見てみると、茶色に変換された魔力がまだ完全な形になっておらず、少しずつ人っぽくなっている途中だった。
「あれ、でも魔力そのものの量は変わらないはずなのに、なんだか大きい……? どころじゃなく、巨大?」
「チチ、チチチチ!」
使った魔力量は、それぞれのスピリットごとに大きな差はない。
なのに、茶色の魔力は広く大きくなって人の形を……まるで、今から巨人を形作るのではないかと思えた。
フレイちゃんが、教えてくれるように鳴く……俺にだけは、頭に響くように言っている内容がわかるんだけど……成る程、そういう事なんだ。
「アーススピリットは、あのでかい図体が難点だなぁ。形を作るのがどうしても遅くなる」
「ですが、それによる利点もありますからね」
「大きな利点? ウォーターさん、ウィンドさん、それは一体?」
「ウォーターさんだなんて、背中がむず痒くなっちまうよ! 俺の事はウォーさんで十分だ!」
「私の事は、ウィンとお呼びください、召喚主様」
「は、はぁ……」
割と適当なあだ名なんだな……まぁ、いちいちウォータースピリットさんとか、ウィンドスピリットさんって呼ぶのよりは楽だからいいけど。
フレイちゃんに、ウォーさんに、ウィンさんね……アーススピリットは、アーさんとかアースさんかな?
ともあれ、呼び名が決まってすぐウォーさん達が教えてくれた。
アーススピリットは、巨大な体と大地を操る事で地上に立つ者を翻弄するのだとか……具体的には、巨体と地面の挟み撃ち。
絶対的な質量で敵対する物を圧し潰すわけだ。
あくまでも敵対する者に対してで、土を操る能力によって実り豊かな大地を育む事もできるらしい。
ちなみに、実り豊かという事に関しては、風も水も、そして火もという四大元素全てのバランスが必要で、アーススピリットだけでは完全ではないとか、ウォーさんが力説していた。
まぁ、どれだけ土を良くしても、水も風もない場所だと結局不毛な大地になっちゃうよね……火がどんな作用をするのかは俺にはわからないけど。
「あはぁ……久しぶりの上等な魔力。滾るわねぇ!」
「……え?」
「はぁ……相変わらずですね」
少しだけ、アーススピリットが完全に形作られるまで待っていると、唐突にアンバランスな声が聞こえて、思わずキョトンとしてしまう。
近くで、ウィンさんが溜め息を吐くのが聞こえた。
いや、近くで空を飛んでいるエルサと同じくらいの高さになった、巨人……大体十メートル近いと思われるので、キュクロプスより大きい。
それはともかく、アーススピリットはヴェンツェルさんとかマックスさん、元ギルドマスターのような筋骨隆々とした男性の体の形になった。
……のはいいんだけど、体付きから想像されるイメージ通りの野太い声、だけど喋り方が女性っぽい。
なんか最近、近い雰囲気というか似たような衝撃を受けた人物と話したような……?
あぁ、鞄屋のゲオルグさん……もとい、ララさんか。
「おぉ、アース。今日もゴツゴツとしたいい体してんじゃねぇか!」
「あらやだわ、私以外にも皆揃っているのね。お待たせしたかしら? あとウォーター、それは誉め言葉にならねぇわよ?」
「おおう、すまねぇ」
「えっと……?」
カッカッカ、と笑いながらアーススピリットのゴツイ体を褒めるウォーさん。
俺達やウォーさん達を見ながら、頬に土の手を当ててしなを作る姿はなんというか……いや、深くは考えまい。
そこを突っ込んだら、戻れなくなりそうだ。
ともかく、ウォーさんの褒め方お気に召さなかったのか、言葉で威嚇するアースさんは喋り方はともかく、見た目そのままに男らしい。
「あら、どうしたのかしら? 主様の目が点になっていらっしゃるわね?」
「アースさんを始めて見たら、誰だってそうなりますよ」
「チチ、チチチ!」
俺を見て首を傾げるアースさん。
ジト目を向けるウィンさんに、抗議するように鳴くフレイちゃん。
いけないいけない、ララさんの時以上の衝撃で思わず思考が停止していた……ちなみに、アマリーラさんやリネルトさんも、目が点になって固まっている。
「あ、えっと。アーススピリットのアースさん……でいいかな?」
「あらあら、可愛らしい主様。私の事はアーちゃんと呼んでね」
「っ!」
「チ、チチ!」
「あらぁ、私だって女の子なんだから、可愛く呼ばれたいじゃない? フレイムだけ特別な呼び方なんてズルいわぁ」
「チチ……」
とりあえず何か言おうと思ってアースさんに話し掛けると、可愛いと言いながらこちらにウィンク……人の形だけど目とかはなく、完全に土でできた土蔵みたいな見た目なんだけど、意外と細かい動きをする。
いやいや、そんな事はどうでもよくて、ウィンクと可愛いと言われて、ララさん以上の悪寒のようなものが全身を襲った……おぉ、鳥肌が凄い。
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