第1018話 エルサも別行動に
「もしもの時は、逃げる事だってできるだろう……相手を見定めて、敵うかどうかの判断くらいはできるつもりだしな。それに、フィリーナがいる」
「リク程じゃなくても、見晴らしのいい場所なら私の目で、強力な魔物が近付いて来ているかどうか、ある程度わかるわ。それに、ルジナウムとかとは違って、大量の魔物がってわけでもないし、他にも冒険者は近くにいるんだから、そこまで心配する必要ないわよ?」
「……うん、そうだね。ちょっと心配し過ぎかな? 皆の事をもっと信頼するように気を付けるよ」
「まぁ、心配されて悪い気はしないのだけど……」
心配だと言っても、報告されたように今のところ弱い魔物としか遭遇していない。
ある程度強い魔物がいたとしても、エアラハールさんから教えを受けて、次善の一手も使えるようになっているモニカさん達なら、なんとかなるはずだ。
フィリーナがいれば、探知魔法程じゃなくても通常より広い警戒範囲にできるわけだし……やっぱり、心配し過ぎだったみたいだ。
もっと皆を信頼して、任せる事も覚えなきゃなぁ……クランを作ったら、全員を心配して回るわけにもいかないんだからね。
フラグ……って言うんだったっけ、こういう時心配をし過ぎたり話題を続ければ続ける程、大変な事が起きてしまったりするような気がするし、この話はここまでにしよう。
……変な事、起きないよね?
「多少どころか、どんな魔物が来ても大丈夫なのだわー。私がいるのだわ」
「え、エルサ……モニカさん達と一緒に行くの?」
心の中で反省していたら、モキュモキュとキューを齧っているエルサが声を上げた。
おかずにしていた料理を食べる手を止めて、今はキューを食べる事に集中しているみたいだけど……話を聞いていたのか。
「どうせ空を飛んで移動する事もないのだわ? それにリクに付いて行っても、訓練なのだから特に面白い事がないのだわ。それに、モニカ達とならおやつにキューをねだり放題なのだわー。リクはケチだから、あんまりもらえないのだわ」
「……結構、俺もキューを上げているはずだけど。というか、お小遣いあげているんだから、自分が食べるおやつくらいは自分で買おうよ」
「自分で買うキューと、もらえるキューは違うのだわ。これがきっと本当の別腹なのだわー」
いや、違うと思うけど……。
確かに、エルサが言うように訓練に付いて来てもやる事がなくて、退屈なのは間違いないだろうけどね。
多分だけど、エルサが俺と来たとしても頭にくっ付いたまま、ただ寝ているだけとかになりそうだ。
農地からの帰りに、訓練は街の外で行うと聞いたからエルサに飛んでもらう必要がないから、モニカさん達の方に行っても問題はない。
「むぅ……」
「まぁまぁリク、エルサがいてくれれば私達も安心できるし、リクが心配するような事も起こらないだろう?」
エルサが離れると考えて、不満が顔に出てしまう俺。
それを宥めるように、ソフィーが声をかけてくる。
ソフィーは、エルサのモフモフと一緒になるから歓迎だろうけど……いつもくっ付いている頭に、エルサのお腹のモフモフがなくなるのは寂しい。
ブハギムノングの鉱山内でも、同じく離れた事があったから、あれと同じではあるんだけど……。
「まぁ、そうなんだけどね……はぁ、仕方ない。それじゃエルサ、明日はモニカさん達の事を頼んだよ」
「頼まれたのだわー」
「……モニカさん、エルサが要求するままにキューを上げたりしなくてもいいからね?」
「ふふふ、私だってエルサちゃんとの付き合いは、リクさんとあまり変わらないのよ? わかっているわ」
「はっ! そういえばリクと会って間もない頃、食事を管理していたのはモニカなのだわ!」
今更と言えば今更、エルサが俺以上にそういった管理に厳しいのがモニカさんだと気付く。
エルサと契約して、まだ獅子亭にいた頃にキューだけでなく食事に関しては、モニカさんやマリーさんの権限が強かったのだ……作っているのはマックスさんなんだけどね。
権限が強いと言っても、食べさせない取り上げるなんて事をするわけじゃなく、いつ食べてどれだけの量をエルサにあげるかを決めていたってくらい。
エルサ、あげればそれこそ無限にキューを食べ続けるから……満腹になっても少し休憩しただけでまた食べ始めるとか、最終手段として体の大きさを調節して、多くのキューを食べられるようにしたりとかね。
今は、モニカさん達の管理や俺から散々注意したのもあって、小さいからだの状態で入る限界で止めるようにしているみたいだけど。
というか、おやつで満腹になるまで食べ続けるってのも、どうかと思う……。
放っておいたら、増産したキューをエルサが全部食べてしまうんじゃないかって心配もあったり……これはさすがに、勝手な妄想だけども。
「話は決まったな。では、明日私はリク殿を迎えに来よう。リク殿は朝食後、準備をしてこの宿で待っていてくれ」
「え、俺がシュットラウルさんの所に行きますよ? それか、兵士さんと訓練する場所に一人でもいけますし……」
「リク殿は賓客だからな。私と別々に行って、兵士達が迎えるのに疲れてしまうだろうし、これくらいは当然の事だ。それに、私が泊まっている宿はすぐ隣だ。手間でもないさ」
わざわざシュットラウルさんが迎えにと思ったけど、よく考えれば建物が繋がっているくらい近い、隣なので時間を取るような事でもなかったね。
「わかりました。それでは明日、朝食後は宿で待っています」
「うむ。まぁこれからやる事もあるのでな……あまり遅くならないうちに来るつもりだが」
「ははは、大変ですね……」
シュットラウルさんは、今日農地に俺達と一緒に行ったのもあって、滞っている仕事などがあるらしい。
庁舎じゃなくて宿でやるんだ……と思った俺に、早く目を通さなくてはいけない報告などなどは、場所を選んでいられないのだとか。
なので、遅くまで仕事をしているうえに、明日は明日でまた新たな仕事がある可能性もあり、俺がシュットラウルさんの所へ行くよりも、待っている方が都合がいいとの事だ。
俺が行った時に、まだ準備ができていないとか、食事中だったり寝ていたり……という事を避けるためでもあるか。
「それじゃ、私はお風呂に入ってさっさと寝るわね。はぁ~、それなりに集中したし、歩き回ったから少し疲れたわ」
「うん。フィリーナが出たら、俺もエルサとお風呂に入るよ。――モニカさん達は?」
「私達は、先に入ったわ」
フィリーナがお風呂に入るため、食堂を退室するのを見送り、俺も部屋で待つ事にする。
モニカさん達は、先に入ったらしいのでフィリーナを待つだけでいいみたいだ。
シュットラウルさんにも挨拶して、食事会というか報告会も解散し、それぞれが部屋に戻って行った。
ユノは食べ過ぎたのか、すぐに動けなさそうだったのでモニカさん達に運ばれて行ったけど……エルサも同じく、俺が抱いている。
「たまには、こうやって運ぶのも悪くないかな」
「満腹の私を捕まえて、変なところを触らないように気を付けるのだわ~」
「人聞きの悪い。俺はただ、エルサの毛を撫でているだけだよ」
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