第969話 広大な領地を持つ貴族
センテに行く事が決まり、大まかに予定を決める。
準備で足りない物があってもセンテに行ってから買えばいいから、細かく決める必要はないからね。
ちなみに、今回の旅で準備その他で使った費用、宿代や食費も含めて、全部出してくれると姉さんから言われた。
お金に余裕はあり過ぎるくらいだし、俺は別に自費でいいと思ったんだけど、国側から頼んで行ってもらううえ、国策の一つとしてなんだから出汁て当然と言われた。
あと、報酬とかも出るそうだ。
貯金が増えて行くなぁ……エルサやユノのお小遣いを増やすかな? そのあたりは、追々考えて行こう。
クランを作ったら、何かと物入りかもしれないから資金を多く持っておくのも悪くないかもしれないけど。
「りっくん、センテに行ったらルーゼンライハに会うといいわ。りっくん達が向こうに行くのに合わせて……いえ、行くまでにセンテに来るように言っておいたから」
明日からの話をしている中で、姉さんから名前を出して会う事を勧められる。
「ルーゼンライハ……って?」
「シュットラウル・ルーゼンライハ侯爵。ヘルサル、センテ……エルフの村もそうね。王国の東側で広大な領地を治める貴族よ。領地の大きさ、人口の多いヘルサルを持っているのもあって、東の要(かなめ)と言われているわ」
「そういえば、あちらの貴族とは会った事がなかったっけ」
「この機会に、話しておくといいわ。国のためと言って、行き過ぎる事はあるけど……悪い人物じゃないはずだから。当然ながら、バルテルにも加担していなかったからね」
ヘルサルやセンテだけでなく、エルフの村も領地としている貴族かぁ。
エルフの村は、ヘルサルからかなり南に行かないといけないくらい、距離が離れているのに……それらを全部納めているなら、確かに広大な領地なんだろう。
エルサで移動する関係上、ちょっと他の人達とは距離感が違ってきているけども。
シュットラウル・ルーゼンライハ侯爵……名前を忘れないようにしないと。
「そういえば、クレメン子爵以外は勲章授与式に集まっていたんだっけ。その時に見かけたのかも?」
「授与式には出ていたわ。でもりっくん、あの時並んでいた貴族の顔を覚える余裕はなかったわよね? バルテルが私を人質にした時もいたけど、それどころじゃなかったでしょ」
「まぁ……初めてこの国の女王様に会うって、緊張していたからね。それに、その後の事もあったし……」
あの時は初めての事尽くしで、緊張していたからなぁ……特に話していない人の顔を覚える余裕なんてなかった。
そもそも授与式自体、姉さんの事がわかって気を失っちゃったし、姉さんが人質に取られた時は助け出す事に集中していたからね。
バルテルを倒した後も、ワイバーンや魔物が王城に押し寄せて来たのもあって、話しをする事もなかった。
「まぁ、いい機会だから話していらっしゃい。というより、センテ周辺でハウス栽培をするのだから、挨拶くらいはね。こちらでも話を通しているから」
「うん、わかった。でも、色んな騒動があった後にも、話す機会がなかったなぁ……フランクさんとか、他の貴族とは話せたけど」
「騒動が収まった後、すぐに領地に引きこもったからね」
姉さん……女王陛下が決めた政策とは言え、さすがに領地を治めている貴族に何も話さず、というわけにはいかないだろうからね。
どういう人かはわからないけど、バルテルに協力したわけではないみたいだし、悪い人ではないんだろう、多分。
引きこもったと姉さんが言うのはともかく、騒動の後すぐに王都を離れたのなら、俺と話す機会がなかったのも頷ける。
「……はぁ」
「……侯爵……様か。まぁ、今は陛下とも話しているから、問題はないだろうが……」
「ん、モニカさん、ソフィーも? どうしたの?」
ルーゼンライハ侯爵の話をしていたら、モニカさんとソフィーの表情が曇った。
二人共、ヘルサルやセンテで暮らしていたから、会った事はなくても侯爵の事を知っていておかしくはないけど……何か思う事があるのだろうか?
「二人共、ルーゼンライハに何かあるの?」
「いえその……私達が何かあるとか、そういうわけではないのです。貴族としての評判も悪くないですし……」
「ヘルサル防衛戦の時も、領主軍を編成して派遣してくれましたし……リクの活躍で、到着する頃には終わっていましたが。私達というより、どちらかと言うとリクの方がちょっと……」
「え、俺? でも、王城に集まった時も、特に何もなかったんだけど……」
モニカさんとソフィーが、侯爵に対して何かあるわけじゃないらしいけど、俺と関係する事を考えているらしい。
でもそれなら騒動が収まった後、フランクさんのように俺に接触があってもおかしくない気がするんだけど……。
「あ……そういう事ね。確か、ルーゼンライハはりっくんと会えないと言って、領地に戻って行ったわ。まぁ、今回は国策にも拘わるから、私からの命令としてセンテでりっくんに会うよう伝えてあるから、逃げないだろうけど」
「そうなの? というか、俺と合わせる顔がないとか、そもそも逃げるって……」
「りっくんに、失礼な事をしたって言っていたわね。まぁ、直接ってわけじゃないみたいだけど」
「侯爵様は、ヘルサル防衛戦が終わった後、領主軍を率いてヘルサルに来たんですけど……」
姉さんは、俺との関係との事でなんとなく事情を察したらしい。
侯爵が言っていた事を話す姉さんの話を継いで、モニカさんが説明してくれる。
それによると、ヘルサル防衛戦後の俺が意識を失っている間に、侯爵がヘルサルに来ていたらしい。
まぁ、ヘルサルだけでなく周辺の街や村に大きな被害が出そうな事態だったから、それそのものは悪くないし貴族として陣頭指揮を執るのは悪くないらしいんだけどね。
……危険だから、もう少し様子を見てからでもと姉さんは言っていたけど、それはともかく。
ヘルサルに来た侯爵は、俺がゴブリンの大群を殲滅した事を知り、国の軍や自領の軍にという誘いをかけようとしたらしい。
だけど、マックスさんやヤンさんが、冒険者である事を理由に誘いを断ったのだとか……強硬な手段に出るわけじゃなかったらしいし、すぐに引き下がったので問題という問題と言えるかどうかは微妙。
そういえば、気が付いてからマックスさん達と話した時、取り調べだの軍への誘いだのがあったみたいな事を聞いたっけ……既に冒険者になっているから、強制されなかったとも言っていた。
「大丈夫だとは思うんですけど、直接会ったらリクさんがまた誘われるんじゃないかと……それに、あの時断ったので、気分を害していたりしたら……」
「うーん、大丈夫だと思うわよ? モニカちゃん。本人はその時の事は、りっくんに対して失礼な誘いをしたとか、英雄とまで言われるりっくんが、嫌がって他国に行くかもしれない、なんて心配をしていたわね。まぁ、バルテルの言っていたりっくんがいれば、国の戦力増強というのには賛同していたけど。ただ、利用するとかには反対していたわ」
「陛下の話の通りなら、大丈夫なのでしょう」
「無理に誘われるとか、直接話した事もないから……失礼だとか嫌がる事はないんだけど……姉さんの言う通りなら、大丈夫そうだね」
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